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傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第三章

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ハイブリッドの世界へようこそ!

 

 いつの間にか寮までの道はオレンジ色ではなく、ほんのり紫色がかっていた。


 ふと、リオンの顔を見ると、普段の陽気さが嘘のように消え、真剣な、どこか怯えたような表情をしていることに気づく。


 それほど重大な話なのかと、わずかに身構えながらミラは尋ねた。



「えっと。それで……思い出したことってなに?」



 リオンが掴まる腕にぎゅうと力を入れた。



「あのね……今日の優勝者のウォール先輩のことで……」


「見た目ヒグマな、あの先輩のこと?」


「ん? ……うん。あの人はBLゲームのモブキャラだったの。今日みたいにエルンストに勝って優勝するさ……」


「え?」


 ノアとミラは大きく目を見開く。


 BLゲームのモブキャラだったことより、リオンがなぜそうまで気がかりなのか。


「……だから、今日の剣術大会は『BLゲームのイベント』のシナリオ通りに起きたの。本来の乙女ゲームの方だとエルンストは優勝して、婚約申し込みするんだけど、今日は負けたよね?」


「……はい」


「でもね、BLゲームのイベントは違うの。まだ1年生で体ができていないから優勝逃がしてさ。落ち込んだエルンストを主人公(・・・)が励まして、親密度をあげるためのイベント」


「まさか……?」



 心当たりがありすぎる。先程エルンストと会話した内容そのものだった。半分以上アルヴィン殿下のやらかしのフォローだったが。


 それの意味することは。


 知らずにミラは息を詰める。


 ノアはリオンの声を一言一句聞き漏らさないというように、一歩近づいた。



「だからさ、ここは乙女ゲームとBLゲームが混ざった世界なんだと思う。これから来るイベントが、どっちの攻略対象個別イベントかわからなくなったの。2つのゲームの攻略対象が被っているからさ」



 リオンが2人からすっと視線をそらし、言い終わる。最後は消え入りそうな声だった。



 ミラは血の気が一気に引いた。


 ノアは考えるように、顎に手をあて、まつげを伏せた。



「おい。そもそもお前はなにを根拠にココが乙女ゲームの世界だと思っていた? 俺はBLゲームしか知らないが、学院を見たときに思いだしたぞ」


「えっと……それは……ノアが短く髪切って光堕ち(・・・)してたからだよ。短い髪はミラに攻略された証で、BLゲームではありえない。乙女ゲームにしか無い、悪役令息ノア救済エンドの証なの」


 思いがけない言葉ばかりがリオンから飛び出し、ミラはぎょっとする。


 ノアが髪を短くしただけで、変な誤解をされている。



(ノアさまが私に(攻略)されているなんて……)



 そう考えつくと、冷たくなった身体に一瞬で熱が登る。


「髪の長さ?」


「ほらノアって、髪色が母親と一緒だからって小さい頃から長く伸ばしてさ。父親と不仲なのもあって、マザコン拗らせて闇堕ちしたじゃん」



 ミラは熱くなった頬をノアに見られないように両手で隠す。



 たしかに、ノアは屋敷に飾られたラスフィ公爵夫人の姿絵とそっくりな髪色とお顔立ちだ。


 そして、以前のノアは胸まで髪を伸ばしており、メイドとして念入りに手入れした記憶がある。


 だが、前世を思い出したノアは速攻で短くしていた。

 その時ノアとの間で、なにか会話をしたような気がしたが。


(うーん。思い出せない。短髪が好きか嫌いかの話だった……ような? )


「でも、ミラと結ばれたラストではね。髪を切り、あれだけ固執した王位継承権放棄してまで、ミラと生きる覚悟を示したの」


()はマザコンじゃないが……あながち間違ってはいないな……」



 うんうんと眉間にシワを寄せたミラが両頬を包みながら考えていると。


 じっとノアとリオンが見つめていた。


 2人がかりの強い視線が集まる。



「えへへ……今のノア様の髪型も素敵ですよ」



 話を聞いていなかったやましさに、へらっと愛想笑いを返す。



「ぐっ……」


 ノアがぐっと心臓の辺りを押さえ、ふらりと半歩後退した。



 久しぶりのノアの奇行に慌てたミラは「大丈夫ですか?!」とノアの背中をさする。


 堪えきれないと言わんばかりの軽やかな笑い声が、耳に飛び込む。


 声の主は、先程まで沈んだ表情を浮かべていたリオンだ。



「あはは……あーミラちゃんなら大丈夫かも?」


「私なら?」


「うん! ゲームが混ざった世界の『強制力』が働いても、無自覚ヒロインは絶対にハピエンだよね!」


「いや……それは買いかぶり過ぎなのでは?」



 大変物騒で、重いものを知らずに期待された。



「ほら!『ハイブリッドヒロインムーブ』って響きが必殺技みたいで強そうだしさ!」


「ええ……」


 リオンはピッと人差し指を立て、晴れやかに笑う。


 理由は意味不明過ぎだが、彼の不安の芽は摘み取れたみたいだ。


 ノアがそっと肩を抱き寄せる。



「俺もミラなら大丈夫だと思うよ」



 当然のように向けられたご主人様からの信頼が嬉しい。



 ミラは隣に立つ主人の横顔を、そっと見上げた。


 耳元にかかるプラチナブロンドは、夕暮れの風に軽やかに靡いている。


 ノアは『強制力』の影響を受けず、自分の意思でこの姿を選んだ。


 何気ないその態度と美しい主人の姿に、ミラは勇気をもらう。


 そうだ。今さらBLゲームと言われたところで、元々はそのつもりだったのだ。

 ノアを攻略対象から守る。そして……


 ⸺ノアのお尻を守ること!


 自分がヒロインであろうがなかろうが、ノアのそばで心を尽くして仕えるのだ。



(楽しむどころじゃなさそうだが、今までと変わらない……はず)



「BLゲームの……ヒロインもがんばりますよ!」



 半ばやけになったミラはぐっと拳を握る。



「っさすがミラちゃん! あのアルヴィン殿下が攻略対象でも大丈夫だね!」



 突然落とされたリオンの爆弾に、ミラとノアは時を止めた。



「さすがにそれは想定外」

「アルヴィンは無い!」

「今後どうなるの?!」


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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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