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【完結】傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第一章

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沈めた傷の破片が軋む



 「ミラは……俺のせいで傷を負いました」


 底が見えないほど深い静寂の中、落とされた言葉。


 ミラはのろのろと顔を上げる。



(エル兄は一体なんのことをいっているの? )



 漆黒の瞳が、当時の憤りや無力感を燃え上がらせていた。


 エルンストが本気でそう思っていると頭のどこかで理解した。


 ノアもロイドも、微動だにしない。



「ミラはラスフィ公子の言う通り、小さい頃から優秀で、とびきり良い容姿で、目立って仕方がなかった。また、彼女の両親が『傾国のオーキッド』だということも拍車をかけて、辺境の貴族たちの注目を浴びることになりました」


「えっ?! 本当にミラちゃんってレイナ・ラグナスとカイル・オーキッドとの娘なの?! 学院の伝説の?!」



 ロイドがわざわざ上半身を起こし、エルンストに体ごと向けた。



「はい。未だに王家から、辺境に引きこもったオーキッド家を社交界に戻すよう求める書簡が、我が家に届きます」


「はぁーあの噂は真実だったんだー」



 両親がそんなに有名だとは初耳だ。


 だが、エルンストの言葉が、頭をぐるぐる回って仕方がない。



(この傷はエル兄のせいなんかじゃない……私がダメだったから……)



 先程からじりじり熱を持ったように痛みが増す右眉と右手の傷。


 ミラは傷を重ねるように、右手で眉を押さえる。


 その時、焦れたように冷淡な声が飛ぶ。



「アルドワ令息。早く本題を」



 ノアの声に、エルンストは一瞬だけ目を眇め、記憶を手繰り寄せるように、言葉を選んだ。



「ミラが私の婚約者候補となることで、その注目がさらに激化しました。自分でいうのもおこがましいのですが、辺境伯家の伴侶といえば……」


「地位も名誉も最高の結婚相手だよね。しかもその相手は男爵家の令嬢で、玉の輿だ」



 言いにくそうなエルンストの言葉を、ロイドが補足する。



「……はい。表立っての反感は無かったのですが、ミラに対しての風当たりは強かった。その中でも、フール伯爵夫人がとある事情もあり、ミラだけにあからさまに攻撃をするようになりました」


「フール伯爵夫人?」



 ノアが訝しげに繰り返した。



 瞬間、心臓を鷲掴みにされたような痛みがミラの胸に走る。



『フール伯爵夫人』



 ミラの意識が過去の事件へ、ずるずると崩れ落ちていく。



 エルンストは白くなるほど拳を握りしめ、絞り出すように言葉を紡ぐ。



「彼女はかつてミラの父に想いを寄せており、その未練からミラの母に強い敵意を抱いていました。自尊心を満たすため、ミラの母に対抗しようと、娘を私の婚約者にしようとしたのです。しかしミラが選ばれたことで、フール伯爵夫人はついに矛先をミラに向けました」



 エルンストの声が耳をすり抜けていく。



『子供を拾ってきてまで、辺境伯家に取り入る売女がっ! 顔だけレイナのくせに!』



 あの日、剥き出しに投げつけられた悪意を、言葉にとして現実にかたちづくられる。



 冷たい汗が、どっと吹き出る。



(もう知ってる! わかっているから! )



 乱暴に掴まれた髪が引きちぎられる痛み。


 金属の擦れる鈍い音。風に舞い散上がる白髪が。


 かつて心を蹂躙した記憶が、怒涛のごとく押し寄せる。



 知らずに呼吸も浅く荒くなる。


 手や足から血の気が失せ、感覚があいまいだ。



「ミラが6歳の誕生日の日、フール伯爵夫人は彼女の髪を無理やり切り落とし、目を潰そうとまでしました。ミラはとっさに手でかばって目は守ったものの……結局、右手と顔には、今も消えない傷が残されました」



 エルンストはついに力なく俯き、小さな声で会話を結ぶ。



「ですので、ミラが傷を負ったのは……事情を知っていたくせに……守りきれ無かった……俺のせいなんです」


 

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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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