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【完結】傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第一章

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攻略対象『M』と奇跡の邂逅

祖母の遺言は絶対なので!

 

「……迷った。あれ?」


 オリエンテーションを終えたミラは、早速アルパカ男子捜索をしようと、学院の広大な敷地内で迷子になっていた。


 草食のアルパカなら、緑の多い場所に出現するだろうと真っ直ぐ向かって歩いたからだ。



(アルパカさんもいないし、ここはどこなんだろう? )



 ミラの目の前には、似たような外観の石造りの建物が立っていた。


 制服のポケットから、学院の見取り図を取り出し、にらめっこをする。



「うーんと、あのキラキラした校舎が特別棟だから……」



 王立学院は主に3つのエリアからなっている。


 ミラが通う普通学舎、王族たちが通う特別棟、そして、入学式を行った講堂や食堂などがあるエリアだ。


 各エリアは回廊で繋がっており、基本的に行き来自由。


 だが、特別棟の入り口には、騎士が必ず立ち、普通学舎の生徒が気軽に足を踏み入れることはない。


 ミラは立派な中庭を目指して歩いたはずだった。



「う……この辺りはどこかな?」



 辺りを見回すミラの目の前に、緑豊かな立派な木々が出現してきた。



(こんなところに来ちゃったのか……とりあえず、戻らないと)



 来た道もわからない。


 唯一遠くに見える、白亜の城に金色の装飾が輝く特別棟を目指すことにした。



「あそこが特別棟の近くなら、第一図書館が見えてくるはずなんだけど……」



 上を向き、白亜の尖塔を目指し、ひたすら歩いていた。


 その時、ミラは何かを踏んだ。



「っあん!」



 ぐにゅっとした柔らかいものを足裏に感じ、引き上げると、紫髪の男子生徒の背中を思い切り踏みつけていた。



「え? な、な、大丈夫ですか?!」



 ミラは慌てて地べたに寝そべる生徒へ手を差し伸べた。



(なんでこんなところに寝てるの?! )



 眼鏡をかけた男子生徒は顔を上げると、顔を無言でじっと見つめて来た。


 熱っぽく、うっとりとしたような熱視線に、思わずそっと視線を逸してしまう。


 心なしか頬が上気しており、興奮しているようだ。



「あの、その、踏んでしまってすみません」


「……いや。素晴らしかったですよ」



 ミラは一瞬固まった。



「え?」


「転んだのは最悪だったが、まさかこんな奇跡が起きるのか……」


「はい?」



 男子生徒が夢心地に答えたおかしなセリフに、ミラは質問を繰り返した。


 すると、男子生徒は咳払いする。



「あ、ああ。その、もう1回その踏まれたいとかではない!」



 靴を物ほしそうに見ており、説得力がない。



「……とりあえず、起き上がってください」


「容赦なく無視されるのも……イイ」



 吐息混じりに漏らした彼は、やっと立ち上がる。


 背中の足跡をそっと、撫でた。



「あの、痛かったですか? すみません」


「いや、大丈夫。ありがとうございます。君のおかげで新しい自分を発見できました」



 凛々しい表情をした彼は、眼鏡をくいっと引き上げた。


 真面目にしていれば、この生徒は美青年だった。



(この人おかしなこと言ってるけど、イケメンさん? )



 肩まである真っ直ぐな紫髪で、シルバーフレームの眼鏡の奥の瞳は藍色。


 背が高く細身の体にぴったりと制服を着こなした姿は、神経質で洗練された美しさを漂わせていた。


 もしや、踏んだ衝撃で混乱し、変なことを口走ったのかもしれないな。


 決して、自分が踏んだせいではない。



(……新しい自分って何?)



「あ、ヨカッタデスネ」


「ああ! 良かったら……その……」



 青年は、何やら頬を染めながら、ミラの靴を凝視する。



「えっと靴が?」


「いや! とても踏まれ、仕立てが良い靴だなと思いまして……」


「学校指定の靴ですよ。何百人もの女生徒が同じ靴を履いています」


「なるほど。大変参考になりました。では、君の靴のサイズはいくつですか?」



 きらんとメガネを光らせ、重大な質問のように靴のサイズを問いかけられた。


 このまま靴のサイズを教えても良いのだろうか。


 いや、このひとに、個人情報を何一つ知られたくない。



「すみません。祖母の遺言で、教えてはいけないんです」



 もっともらしい断り文句が口をついた。


 今世の祖母は、父方母方ふたりともピンピンしているが。



「そ、そうか。ならば、君の体重はいくつですか? それだけでも教えてくれませんか?」



 あからさまに気落ちした彼に大変申し訳無いが、祖母の遺言は絶対だ。



「初対面の女性に体重を聞くやつは無視しろ、という祖母の遺言があるので、失礼します!」



 ミラはカッと靴音を鳴らし、踵を返す。


 しかし、後ろから腕を掴まれ、ミラは驚きで飛び上がった。


 まずい、と目を向けると、そこには頬を紅潮させた彼がいた。



「大変素晴らしいお祖母様をお持ちだと思います! だが、君の名前ぐらいは教えてくれませんかっ!」



 眼鏡の奥の瞳を泣きそうに歪めたメガネイケメン。



(絶対に教えたくないよ! )



「ゆ、遺言で! 知らない()の人間には名前を教えてはいけないんです! ではっ!」


「君はすでに私の名前を知っていてくれた?!」


「へ?」



 思い切り断ったはずだ。むしろ逃げ出そうとさえしている。


 だが、メガネイケメンが、ぱあと明るい笑顔になった。ついでに手首に力を込めた。



「私の名前は『マーカス・マクロライド』です!」



 まさかの性癖のほうじゃない、そちらの『M』。


 奇跡的ともいえる『M』の一致。



 さらに、マクロライド侯爵家は代々宰相を務め、王族が降嫁する古くから名門の家柄だ。



(なんでそんな凄い侯爵家の令息が地べたに転んでたの?!)



「もうこれで名実ともに、知り合いですね。名前を教えてくれませんか?」



 青年はそう言って、優雅に微笑む。


 つまり、知り合いのMだから、遺言は関係なくなる。観念して名前を吐けということだ。



「よ、喜んで……?」



 心の底から走って逃げ出したいが、手首をしっかりと握られている。もう逃げられない。


 冷や汗が止まらないミラ。


 だが、侯爵令息からの申し出を断れるはずもなく。



「ミラ・オーキッドと申します」



 マーカスの期待に満ちた眼差しに、嫌な予感をひしひしと感じながら自己紹介した。




 


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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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