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【完結】傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第三章

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逃げグセは遺伝らしい


 前公爵が告げる前に、母が口を挟んだ。


「先王弟ヴァレリー様と恋人関係にあった親友を、私の育ての母であるラグナス伯爵夫人が保護したそうです。ですが、彼女は私を身ごもっており、出産で命を落としてしまった。そこで、子を授からなかったラグナス伯爵家が私を引き取り、密かに育てたと……母からの手紙にそう記されています」



 どこか他人事な口調は、突然突きつけられた真実に、母も動揺しているのだろう。


 こころなしか母の顔色が青い気がする。

 父なんて「俺は本当のお母様だと今でも思っている」と当事者ではないのに泣いている。


 それにしても、真実が明かされるごとに、疑問が増えていく。

 生涯独身で、病によりすでに故人である先王弟が実祖父。


 王族の婚姻には厳格なしきたりがあり、実祖母と添い遂げることは無理だ。

 建国以来守られていた『尊き色』を見つけ出すためだけのあの仕組み。


 おそらく実祖母は知っていたのだろう。

 だからこそ実祖母は彼の前から逃げ、母をひとりで産んだ。

 彼の大切な身分や環境、なんの痂皮もない穏やかな未来を守るために。



(自分の逃げグセ遺伝なの? )



 そんなこと重要じゃないと思うが、なぞったように同じ行動をしている。

 気持ちがわかり過ぎて、彼女を責める気にすらなれない。


 自分が白銀髪とアメトリンの瞳を持って生まれさえなければ、発覚することもなかっただろうに。


 ずきずきとこめかみが痛む。

 考えをまとめようにも、難しい。



「では、私とミラの婚姻は問題ないですね!」



 よかったとのんびりとしたノアの声が静まり返った部屋に響く。


 前公爵と先代辺境伯、泣きぬれた父すらノアへ厳しい視線をよこす。

 気にした様子もなく、ノアはゆったりと微笑んだ。



「さすがに血縁が近すぎると、婚姻するのも倫理的に気がとがめますからー」



 ご機嫌なノアの声にノックの音が重なった。

 従者が陛下夫妻の来訪を告げ、心の準備をする間もなく扉が開かれた。



「ああ! ここに!」



 感極まった声に、ノアはじめ皆が立ち上がり、膝をつく。ミラも遅れて続く。



「あ、さあ! 楽にしてくれ!」



 どこか浮つく命令に、顔を上げる。

 陛下が身をかがめ、ミラの顔を覗き込んでいた。

 アルヴィンと全く同じ蒼い瞳が至近距離にある。

 恍惚としたその表情も全く同じ。


 ミラは「ひい」と漏れそうになる悲鳴を、拳を握って必死に飲み込んだ。



「まさに『尊き色』!!」



 ずいっとさらに顔を近づけられそうになると、肩に腕が回され、後ろに身体が引かれた。

 ノアが体ごと引き寄せてくれたようだ。

 逞しい腕で体を難なく支えられてしまい、その力強さと優しさにときめいてしまった。



(不意打ち救助でもかっこいいの?!)



 頬の熱さに気を取られていた間に、空気が張り詰める。

 温度のない声が降ってきたからだ。



「叔父上。アルヴィンの二の舞いになりたいですか?」


「ノア?」



 たじろぐように、目を泳がせた陛下はゆっくりと身を起こし、体を離す。

 もうこの頃には頬の熱は霧散した。

 すると、父が陛下との間に体を無理矢理滑り込ませてきた。



「フィリップ。君は私の娘になにをする気かい?」



 立ちはだかるようにしたこともだが、陛下相手にだす声音ではない。

 敬意なんてものは微塵もない。呼び捨てはよろしくない。

 今度は違う意味で胸が騒がしい。



 いきなり首を刎ねられかねない、とミラがゴクリと喉を鳴らす。



「す、すまない! カイル君、どうか許してくれ!」



 焦ったような媚を含んだ態度で陛下は言い募る。

 それには先代辺境伯さえ、目を丸くしている。

 けれど、両親と前公爵、あまつさえ王妃殿下は当然という表情だ。


 この場に集まった方々が学院の同級生というのは既知だが、関係性が特殊すぎないだろうか。


 不満げに大きなため息を吐いた父が言った。



「……金輪際、ミラの半径三メートルには近づかないように」


「カイル君の言いつけ通りにします!」



 なにやら母親から許してもらえた子供のように、心からはしゃぐ陛下だ。

 むしろ主従関係にもみえてしまう。


 このやりとりをノアはどう思っているのか。目だけ動かすと、彼も驚いた顔をしていた。



「なあ、終わったか? 子供たちが戸惑っているから、一応は普通に会話してくれよ……」



 とりなすように前公爵が声をかけると、渋々といった体で頷く2人だ。

 それでも3人ともが口元に笑みを浮かべている。



「俺はさっさと辺境に帰りたいからな……」


「せっかく久しぶりにカイル君とレイナちゃんに会えたのに?!」


「座れ。とにかく座れ!」



 前公爵が言い合う2人の背中を部屋の奥へとぐいぐい押していく。



「うふふ! レイナちゃんは私のとなりに座ってね!」


「……いいけど」



 王妃が母の腕に腕を絡めて、きゃっきゃっはしゃいでいる。無表情の母を初めて見た。



「ミラの隣は婚約者の俺だよね?」


「え? あ、はい……」


「……ひいおじいさまも隣にいるぞ」



 呆然とするミラをノアが手を引き座らせたところで、メイドたちがお茶を淹れた。

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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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