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【完結】傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第三章

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追いかける



 翌朝。ノア・ラスフィは浮かれていた。

 それはもう、誰が見てもわかるように。


「世界が俺を祝福している!!」



 起き抜けにそう叫んだだけでない。

 鼻歌を歌いながら、朝一番に庭先で花を9本も摘み取ってきたからだ。


 あいにくの雨で足元が濡れようが、そんなこと彼には些細なこと。


 庭師と相談して選んだ白バラの花束を抱え、婚約者の部屋へ向かう。


(ミラも婚約に頷いてくれたから……もしかして俺のこと……)


 へへっとだらしなく頬が緩んだ。だが、背後からかけられた声に笑顔が消える。


「ノア様?! まだミラお嬢様を起こすには早いですよ!」


 ミラの専属侍従のマインだ。ワゴンに洗面器や水差しを載せて運んでいる。

 折良く、ミラの起床の世話をしにいくところだろう。


「……婚約者(・・・)の俺がミラを起こしにいこう。代われ」


 マインからワゴンを奪いさるノア。

 背後から「ええ……」とマインの引き攣った声は聞こえない。

 晴れて昨日、ミラ公認の婚約者になったのだ。拗らせた年月が、ノアの行動力に拍車をかける。


 鼻歌まじりに花束を抱えながら、ワゴンを押し進めると、ミラの部屋に着いた。


 この中に、暫定睡眠中のミラがいる。

 ぶわわとノアの頭の中にあらゆるミラの寝姿の想像が駆けめぐる。


(寝顔なんてみたことない! )


 それもそのはずだ。ノアを起こすのは専属メイドであるミラの仕事だ。

 専属メイドの立場なら、絶対に見られない。けれど、婚約者なら⸺


 いくらでもみられる。

 むしろ、将来なんて同じベッドで寝ることになる。


「……ぐっ」


 ノアは興奮で鼻がムズムズするのを、大きく深呼吸をしてやりすごす。

 未だに異常に体が火照っているのは健全な男子の証拠だ。


 脳内で言い訳をしていると、背後でマインが大きく咳払いをする。急かすように。


 ノアはマインを軽く睨んでから、おずおずと扉をノックした。


「……ミラ? おはよー」


 返答がない。

 未だに寝ているのか。寝顔拝見のチャンス到来だ。

 寝坊しているなんて、朝から可愛いがすぎる。

 窓を開け放ち、婚約者の可愛さを叫びたい衝動を押さえ込み、仕切り直すように咳払いをする。


「仕方がないから……俺が起こそう!」


 逸る心臓の音を聞きながら、ドアノブに手を掛け、開ける。

 室内はしんと静まり返り、寝息すら聞こえない。

 人の気配すらない。


「っは?」


 シワ1つなく整えられたベッドに違和感を覚え、ノアは喉を鳴らす。

 遅れて扉をくぐったマインも、忙しなくクローゼットを開けたり、カーテンを開けたり閉じたりしている。ソファーの下も覗き込んでいる。


 くまなく目を走らせたノアは、机においてある封筒に気がついた。


 中身を見るのが恐ろしい。

 だが、今はこの封筒しか手がかりがない。


 ふらふらと封筒を手に取れば、宛名はノアになっている。


「……まさか?」


 急いで封筒を開けようとしたが、指先が震えて力が入らない。

 だが、ノアは気合を入れるようにぎゅっと強く目を瞑る。

 肺から息を吐ききると、なんとか封筒を開けた。


「『ありがとう』とか……くそっ!」


 数秒後、手紙を読み終えたノアは、そう吐き捨てる。

 手紙を無造作にスラックスのポケットへ突っ込む。


 なんで…………俺にミラがいなくても良いと思えるのか。


 素早く身を翻そうとするが、机の角へ足をぶつけてしまう。


 せっかく詰んだ白バラの花束が、机から滑り落ちる。

 バサリと音を立てて床に散らばる9本分の花弁を一瞥もせず、足の痛みすら煩わしいといわんばかりに、ノアは駆け出した。



「ミラがー!! ついに逃げ出しましたー!!」



 

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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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