まさかの知り合いらしい
本日は2回目のダンス練習日。
初めての練習から1週間経ったが、リオンはステップの自主練に励んだようだ。
見違えるほど軽やかなステップを披露してくれた。
「今日はミラの足を3回しか踏まなかったな!」
「踏んだ回数カウントする鬼とミラちゃんに悪いから頑張ったよ!!」
「リオンくん。ありがとう」
「ミラが教えたなら当然だ。褒美にケーキでも食べてろ」
頑張ったリオンへノアからご褒美が準備されていた。
いつのまにかテーブルが運びこまれ、その上には王都で人気なパティスリーのケーキが並んでいる。
飲み物も紅茶だけでなく、柑橘類の果実水まで用意されていた。
「うわあー! さすが公爵家のお坊ちゃん!! ありがとう!!」
飛びつくような勢いでリオンが椅子に座る。
着席した途端にゴクゴクと果実水を一気に飲み干した。
従者にケーキを取り分けられられると、大きな口でケーキを頬張り始める。
「おいしいっ! 糖分の優しみが深いぃ……」
じーんとフォークを持ったまま目を閉じるリオンにノアは苦く笑い、ミラに向き直る。
それから、うやうやしく右手を差し出した。
「ミラ。これから俺と踊ってください」
「はい!」
ミラもノアの手に手のひらを重ねた。
リオンよりも大きく、懐かしい手のぬくもりに頬が緩む。
「やっと踊れる!」
「頑張りますね」
弾けるような笑みを浮かべるご主人様がそっと腰に手を添える。
その合図でシャンっと背筋を伸ばしながらステップを踏み出そうとした矢先。
コンコン
サロン側の扉をノックする音が聞こえた。
「ミラ様? こちらでダンスの練習なさっているとお聞きしたのですが?!」
扉の外から届く声は凛としたお嬢様の声。
「……エリカ様?」
そっと扉が開き、優雅に歩み入るのは我が来世のお嬢様エリカ様。
そしてその後ろには、なぜかロイドが並んでいた。彼はにこにこ愉快そうに笑っている。
「本当にノアもご一緒だったのですね……?」
エリカが一瞬だけノアを睨むように見た。
「は? エリカ。なんでここに? ロイドお前か?」
ノアにぎらりと睨みつけられたロイドが肯定するように笑みを深くし、ひらっと手を振る。
「ミラ様の御友人である、この私が来ては悪いですの?」
ふふん、と腕を組んだエリカはノアを明らかに睥睨する。
「……お前がミラの友人なんて俺は認めない!」
ノアがミラの手を離し、エリカに詰め寄っていく。
ミラはやけに親しげな二人の距離感に目を丸くしながらノアの後を追う。
(知り合い、どころじゃない……これ、かなり近しいのでは……?)
「あなたなんかに認められずとも、私はもうすでにミラ様から過分な情けをいただきましたのよ」
エリカは頬に手をあて、悩ましげな吐息を漏らす。
その姿はエリカ豊かな胸とあいまりとても色っぽい。
(よくわからないけど。言い方に語弊が……)
「は? お前……ミラに変なことしてないだろうな」
「なんですの? 変なことって?」
「それは……だな」
ずっと2人だけで言い合いしていたノアがちらっとミラの顔を見た。
それから、ミラから目を逸らすと、エリカに顔をぐっと近づける。
ノアが一言二言囁くと、エリカの顔色が真っ赤に染まる。
「?!」
ミラは衝撃で思わず顔を背けてしまう。
そこには椅子に座り、頬杖ついたロイドの瞳が静かにこちらを向いていた。
ミラの混乱を見透かしたように、ロイドがへらりと笑んだ。
「ノアとエリカ嬢って、婚約者候補なんだよね」




