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傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第三章

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悪役令嬢は無理



「エリカ・グラジールは悪役令嬢……くらいかな」


「それは無理。エリカ様にいじめられたり、嫌われるのイヤ」



 ミラはもう聞きたくないと両耳を手で塞いだ。


 悪役令嬢のエリカ様を見てみたいが、それとこれとは別だ。

 やっと見つけた理想のお嬢様なのだ。


 生徒を引き連れて去っていくエリカ様の堂々とした背中に、思わず目を奪われた。

 動揺しているはずなのに、人を率いる姿が自然で美しい。


 あの方に仕えたい、と思わざるをえないお嬢様だ。


 リオンがミラの腕を掴み、体を揺さぶる。さらに顔を寄せ、周囲に聞こえないギリギリの大きさで言い立てる。



「ミラちゃんの悪役令嬢へのなつき度なに?! あのエリカ・グラジールだよ?!」


「エリカ様ってお呼びすべきですよ! リオンくん!」



 ムキになって小声で言い返すミラへ、リオンはじとりと視線を返す。


 我がお嬢様に不敬は許さん。


 二人して至近距離で睨み合うが、突然リオンの顔が大きな手に鷲掴まれた。

 長い指のその手は、リオンの顔をミラの顔から遠ざける。



「り、リオンくん?!」


「ノアくんやめて!」



 大きな手の主はノアで、未だにリオンの顔を力ずくで押さえつけている。



「ミラはこんなところでどうしたの?」



 腰をかがめてノアがのぞきこむ。


 だが、ノアの手を両手で必死に顔から剥がそうとしているリオンが気になって仕方がない。



「リオンくんを……離していただけると助かります」



 ノアは、ミラに合わせた視線をリオンに向けると、ややあって彼を解放した。



「ひどいよ! ノアくん!」


「全くひどくない。それで用はなんだ?」



 リオンはチラとミラを見やると、ニヤっと口角を上げた。



「あのねー、舞踏会のことでミラちゃんがノアくんに聞きたいことがあるんだってー」



 ミラとノアはぽかんとした顔をし、固まった。



(リオンくんが聞きたがってたよね?! )



 なぜかミラだけがノアの舞踏会のパートナーを知りたがっているような言い草だ。



 ミラだって確かに知りたい。


 けれど、ノアの口からパートナー、いや女性の名前が出るのを想像しただけで。


 ずん、と鉛を呑み込んだように喉も胸も重くなった。


 なんと言えばいいのか思いつかない。自分の気持ちもわからないのに。



「えっと、ミラ……舞踏会のことってなに?」



 床に落ちてしまった視線をミラは上げた。

 途端、顔を真っ赤に染め、わずかに口元を緩めるノアを捉えてしまう。



「……っ」



 思わず目を背けると、リオンのなにやら含みのある瞳とかち合った。

 横に立つノアからも催促するような視線を感じる。


 ここで舞踏会の話をしないと変に思われるだろう。


 ノアに今の自分の気持ちを悟られたくない。



(知られたら、もうお側に置いてもらえない。……きっと)



 どうにか、ミラは声を絞り出した。



「り、リオンくんがダンス踊れなくて……」



 頭がうまく回らず、苦し紛れに先程会話したダンス練習を持ち出した。



「……ダンス? なんでこいつのこと?」


「じゅ、授業があって!」


「舞踏会直前に練習があるから……」


「そうなんです! 私リオンくんの人生応援隊として、その! 2人で練習することになったんです! だからその……」



 うまく話題が逸れたことでミラはほっとし、やっとノアの顔を見れる。


 だがノアは、眉間にシワを寄せていた。



(もしかして、ご主人様を差し置き、別の人と約束したのが「専属メイド」として失格とか? )



 一瞬で頭が真っ白になり、ミラは言葉を止めた。


 すると、ノアはリオンを睨みつけながらこう言った。



「俺も一緒に練習する」


「へ?」



 間の抜けた声を漏らすミラに、ノアが一気に距離を詰めた。



「それで……リオンと二人きりが良かったの?」



 いつもよりほんの少しだけノアの低い声。

 さらに不機嫌になった主人に、じり、と数歩後ずさると背中が壁にあたった。

 壁に手をついたノアは、ミラを上から覗き込む。



「答えてよ?」



 壁際で見下ろすノア様の顔が近い。


 アメジストの瞳は妖しく翳っているよう。


 息が触れそうな距離なのに、どこか切なげな表情に逃げられない。


 心臓が暴れて、頭が回らない。



(んん? 話がすり替わっているような? でも……結局ノア様も参加するからよいの? )



「違います……もちろんノア様にも協力していただきたくて……えっと」



 ノアがリオンにダンスを教えてくれたら大変助かる。


 公爵家にいた頃は、毎日くらいに2人でダンス練習をしたが、ノアはとても上手だった。


 それにノアとのダンスはとっても楽しい。



「……ありがとうございます。またノア様と、ダンス練習できるの嬉しいです!」


 

 ミラは思いつくままに言葉を並べ、笑いかけた。

 するとノアは目を見張ると、くすぐったそうに笑う。



「うん。俺もミラと踊るの好きだよ」



 微笑むノアはもう機嫌が回復したようだ。


 至近距離から笑みを浴びたミラは、心臓の鼓動がさらに乱れてしまう。


「好き」とかいう単語や、甘やかな眼差しもよろしくない。



「ひ、久しぶりなのでがんばりますね!」


「ミラになら踏まれてもいいよ」


「しませんよっ。ノア様を傷つけることなんて、私にはできませんよ」


「そうかな?」



 きょとんと首を傾げるノアを思わずじとっと見上げる。


 専属メイドの忠義にかけて譲れない。


 ノアはぷっと噴き出すと、ミラの髪を1房掬う。



「じゃあ、俺がいるときしかリオンとダンス練習しないでね? ……わかった?」



 ノアは低く囁く。



「……はい」



 やっぱりどこか寂しげで翳った瞳が射抜く。

 ミラはご主人様をまっすぐ見つめ返し、しっかりと頷く。



「ありがとう……」



 嬉しそうなのに、泣きそうに笑ったノアはやっと体を離してくれた。

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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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