ログインは現実逃避か生存戦略か
★ 人物想起/文脈接続
今回のシルヴェスター・ランシング大統領は、大佐の幼馴染だ。
プロポーズのときも、大統領就任パレード中に拡声器で祝ったって有名な話がある。
……いや、本当に有名なのは、
その就任パレードでテロに遭い、
サラ・ファーストが被災して死にかけ、
大佐が実行犯を捕まえて五階から落ちて死にかけ、
大統領自身も頭を縦断する銃創をかすって死にかけた――
あの一件だ。
あれで、彼女は余計にアメリカで売れた。
俺も、あの時に彼女を知った。
出版社が「重篤特需」を狙って総集編を出しまくって……
俺も、買いました。
全部、読みました。
サラが入院している病院に寄付もした。
だって、ファンクラブ入ったし。
なんかさ……
彼女、アレルギーが山ほどあって、
注射針を固定するテープを剥がすたびに皮膚が剥けるとか……
キャーッ!
俺も獣アレルギー持ちだから、
アレルギーで困ってる人って、他人事じゃない。
生きてICUを出た、って会報で知ったとき、
本気で神様拝んだわ。
合掌。
★ 情報過多/第一クランの異質さ
ともかく、第一クランオーナーが小説家。
だからかすごい量のテキストを生み出している。
まだ『この事態」になって数時間なのに、この事態を説明するメールがじゃんじゃんくるし、サイトを作ってスキルとか事態とか、説明してるし、ライブ動画が途切れなく続いてる。カメラをトラックのフロントガラスの内側に設置してるらしくて、ずっと夜の道路が映ってるだけだけど。たまにサラさんの声が聞こえる。
「ああそうか、サイトとか、ライブ動画とか、視聴者の数で広告収入みたいに『経験値』が入るのか? 経験値は溜めておいたほうがいいよな。カメラがあれば俺もライブ実況するのに」
★ スキル確認/実装テスト
この部屋の中をか? カメラスキルはあるな。これ、目にセットしたら、俺の視線カメラになるんか? 便利! ほうほう……こんな感じかな?
カメラをスタートさせたら、右上に72インチワイドのモニタが浮かんだ。俺の視線の先と同じ映像が映ってる! すげーっ! 全然ヘッドカメラの重さがなくて、ガジェットフリーみたい!
モニタだけ消すこともできるのか。ふーん……
俺は動画実況で稼いでるのもあって、ライブ撮影系スキルが軒並み1ポイントで取得できる。「執筆」とかのスキルは100ポイントだな。したことあることが安くポイント購入できるのか。何だそのシステム怖い!
★ 推論/地球サーバー仮説
どんなサーバーがあれば、こんなことが可能なんだ?
エンジニアとしては、めちゃくちゃ気になる。
でも、途方もないんだろうな。
暫定で――
「地球サーバー」と呼んでおこう。
さっき、女性軍人に説明するときに
咄嗟に作った言葉だけど、
意外と、適切な気がする。
★ 油断/危険な余暇
ポテチ食いながらホログラムをタップしながら動画を見ながら、メールを見るぐらい、安全で暇だった。
なので、つい、やっちまったんだ。
★ 逸脱/ログイン
スキルで俺の契約していたサーバーログイン画面とVRセットが出せたから。
それでうっかり、マイピを……
気づいたら、ログインしてた。しかも──ベッドに入ってこっそりと。
ストップモード起動中。つまり、現実の俺は無動作状態。ベッドマットも介護用に変えたからそう簡単に褥瘡はできないはず!
……いやこれ、『バーチャル現実逃避』の完成形じゃないか。
◆――AI副官ログ(AI LOG)――
【AI副官デリミタ子】
──王、外界安定をトリガーに認知逸脱を開始。
──スキル取得コスト差より「経験依存割引構造」を推定。
──仮説《地球サーバー》を命名、世界理解フェーズ前進。
──現実身体停止/仮想活動活性という危険な最適解に到達。
──次フェーズ:ログイン状態の維持可否と外的介入リスク評価。




