解除カウントダウン
★ 覚醒/異物認知フェーズ
久々にしんみりと落ち込んでたら、爆睡してたっぽい。 そしてナンカ……圧迫感!
毛布から顔を出したら世界が真っ白だった!
なにこれ。『マイピ』の『KIWAMI』の霧?
手を出してみたら、かさっと、ざりっ、とふんわりと暖かくなっていく。
「発泡スチロール???」
なぜ? ……と思った瞬間、ごろん、と転がされた感じがした。めっっちゃ空母が傾いただろ、今!
ああ、「衝撃にそなえよ!」って言うのがめんどうになったとか、聞かないやつが多すぎたから、発泡スチロール充填で、強制固定したのか! 先にしてくれたらこの部屋の住人は死ななくて済んだのに。いや、他の部屋でも死人がでたからこうなったんだろうな。つまりはすごい人数がさっきの攻撃で死んだんだろう。
せっかく助かったのに。
あの巨大動物地獄から、やっと抜けたのに。
★ 回想侵入/精神リスク
俺のマンションの前。
赤いバスが走り去った、その隙間に飛んできた巨大サバ。
「ぐしゃっ」。
押し潰された人たちの音が、
頭の中で何度も反響する。
その後ろで、玄関から出ようとしたやつが立ち止まって後ろから押されて、押し出されて、跳ねるサバに延々と潰されてた。工場のベルトコンベアみたいに、死地へと押し出され行った、同じマンションの住人たち。
……この思考は駄目だ。落ち込む。上げてないとすぐに精神が駄目になる。
玄関からでないことを選択した俺を褒めよう。
そうだ。切り替えろ。
★ 注意転換/知識へ退避
もっと、明るい話題…………そうだ。
すごいな、スキル!
あ、また大佐が喋るのかな? スピーカーからカチッ、ていう、マイクをオンにする音が聞こえた。
★ 艦長放送/安全宣言
『総員に告ぐ! 君の周りにある白いものは発泡スチロールである。転覆でアンテナなどが壊れることを避けるために咄嗟に設置したものであり、危険はない。
もう一度言う。
それは発泡スチロールだ。危険はない。そもそも、君たちの落下を防ぐためのものである。暴れず、瞑想でもしていてくれ。外を確認次第、解除する。その時に、床に触れていないと落下するので、床に近い方へ移動するか、ナニカにつかまるかの努力はしておいてくれ。以上』
大佐は相変わらず元気だな。疲れないのかな? 夏休みのラジオ体操に毎日出てくる脳筋の元気さだよな。あんな頭いい人なのに武闘派っておかしい。
「ナニカに掴まれって、手が出ない状態にしておいて言う?」
★ 揺動収束/判断保留
さっき傾いたのからなんか起き上がりこぼしが戻るみたいにごろん、ごろん……何度も揺れて、ようやく重心が戻った……、かな?
まだ攻撃されてたのか。茂さん大丈夫かな? 廊下を歩いてたと思うけど。俺も外に出たいけど、意味なく外歩いて、揺れで死にたくないしなぁ……パルクールできるとか、全然間に合わないから、あんな揺れ! 運動神経って地面に足ついてるから言えること。揺れて中空に浮かばされたら、宇宙飛行士の訓練でもしてない限り身動きできない。飛行機のエアポケットで打撲で住むのは、天井が柔らかいから。空母の中、全部鉄骨。コケただけで流血。無理無理無理! 移動できるのは軍人だけだって聞いたし、入隊してない俺は今のところここで大人しくしてるしかない。誰に命令聞いていいかわからないからな…………暗いよ怖いよ……………………しまった……ナニカ考えてないと…………閉所嫌悪症でパニックを起こしそうだ……
★ 解除カウント/現実復帰
『艦長より、全員に告ぐ。
艦外の安全を確認した。
今より、この発泡スチロールを除去する。足が床についていない者はその周りの発泡スチロールを残して、他を除去する。足が床についていなくても焦らなくて良いが、どちらかに倒れるので歯を食いしばって踏ん張れ。
これより、10秒あとに、発泡スチロールを除去する。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、クリア!』
眼の前が白くなくなった。
それと同時に船室の血まみれと血のニオイと死臭で顔を殴られた感じ。噎せた。
この部屋にいないといけないんでしょうか? 死体が10個流血してすごいくさいんですけど!
ナニカ、ナニカ考えないと…………毛布の暗闇でパニックを起こしてしまう…………
★ 興味への退避/次の焦点
「あ、第一クランのオーナー、アメリカで有名な小説家『サラ・ファースト』だ!」
大佐の婚約者だって言うから、一冊読んだらファンになったので俺のリビングに全巻揃えた。
よし! 上手く話題を見つけた!(握りこぶし)
◆――AI副官ログ(AI LOG)――
【AI副官デリミタ子】
──強制固定フェーズ終了を確認。
──物理的安全確保後、精神負荷が急上昇。
──主人公は「思考対象の探索」によりパニック回避を実行。
──次フェーズ:外部情報(第一クラン/作家)への関心集中による安定化。




