不沈鋼の咆哮
★ 戦闘再燃/固定下観測フェーズ
うっわ……モニタの中で猫に一斉射撃! 向こうの方、戦闘機も飛んでる。船の振動が一段とひどくなったし……
……とはいっても、体が固定されてしまえば、映画見てる気分だな。
空母が沈んだら、ベルトを切れるように鞘付きナイフを『アイテムボックス』から取り出して、ケツの下に突っ込んでおく。
『総員、衝撃に備えよ! クジラが退避しても魚雷を打ち込め! ……うぉっ!』
今、大佐のスピーカー音の前に女性の声が聞こえたぞ!
「船尾、巨大マッコウクジラが着弾します!」って!
マッコウクジラが着弾?!!!
「おっさん、ベッドのフレームにしがみつけ! でかいの来るぞ!」
「うおおおおおっっっ!」
おっさんの声が普段ならうるさいんだろうけど、振動の緊迫感で消える。俺の心臓の音のほうがうるさい。
『総員! 衝撃に備えよ!』
ザンッ…………と、船が傾いた。俺の右耳が下。おそらく太平洋側に傾いたんだ。ほぼ90度じゃないか? さっきの、足で突っ張ってるだけなら落ちたな。やばかった! ベルトの中で体が右側にぞりっとズレた。ベルトとベッドの間が狭いから、挟まれてイてぇ!
……またっ! 巨大地震の縦揺れみたいに揺れた。
猫に引っかかれて傾いて、クジラにぶつかられて突き上げられた感じだろうか?
★ 生理反応/呼吸再開
「はぁ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……はっ…………はっ……」
上のおっさんの悲鳴なのか深呼吸なのか喘ぎ声なのか…………聞いてようやく、俺が呼吸してないことに気づいた。噎せそうになるのを抑えて深呼吸!
……揺れが、小さくなっていく?
★ 修復宣言/技術公開
『総員に告ぐ! スキル『監視カメラ』の01と02のモニタにおいて、修復過程を撮影しておる! 暇つぶしに見ておけ。絶縁体から出るなよ! 感電死するぞ!』
なんの修復過程?? 大佐、なんか台詞が抜けてますよ! 攻撃終了したってことでいいんですか?!
「絶縁体って、ベッドフレーム、鉄だぞ! 若造! 大丈夫なのか?!」
「室内は絶縁体だって説明うけただろおっさん!」
室内モニタの画像が船体に変わってた。
うっわ……
「うっわ、おっさん! 入口のモニタ見てみろ! 今、攻撃されて船がズタボロになってる!」
やっぱり、猫に引っかかれたんだ! 船体左側が三条の縦傷。船体右側がゼリーに指突っ込んだみたいに丸く凹んでる!
それらが、バチバチと火花を上げながら、癒着して…………え?
「まじで?」
穴がふさがった!
船尾も、へこみが、反動をつけるかのようにボコン、と元に戻る。
『修復完了! 通電停止。排水再開! 10秒後に、絶縁体から離脱可能!
修復は完了した!
これが、私の開発した、『AS-μ(エーエス・ミュー) 『Alexander Strauss - Micro-Unified alloy』……通称 AS-μ(エーエス・ミュー)』、形状記憶合金 だ。ミュー(μ)は「微細」にして「未知」! この船は沈みようがない! 安心しろ!』
★ 感情噴出/確信
「うおおおおおっっっっっっ!」
おっさんと同時に俺も叫んでた。
なにこれ、なにこれ! なにこれすごい!
大佐がすごい金属作ったってのは聞いてたけど、金属の形状記憶復元! そんなものがすでに空母に使われてたの? すげぇ! まじで最先端だ!
頼むから大佐、ノーベル賞10個ぐらいもらってくれよ!
★ 静寂/余韻定着
船は、また静かに進み出したらしい。
船室に残ったのは、
血の匂いと、
まだ跳ねている心臓の音だけだった。
◆――AI副官ログ(AI LOG)――
【AI副官デリミタ子】
──複合衝撃イベント終了を確認。
──《AS-μ》の自己修復挙動、全乗員に可視化。
──船体喪失リスク、理論上ゼロへ遷移。
──次フェーズ:長距離航行下での心理反動と信頼再構築。




