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サバイバルゲームで一括破壊したら惑星がひれ伏しました。  作者: 設楽七央


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SAN値48、最適化が止まらない夜

★ **待機フェーズ/医療導線**


 おっと。  「マシな部屋」っていうのは、どうやら「ふかふかのベッド」じゃなくて、「地獄の運用保守デバッグルーム」のことだったらしい。ここでもブラック かよ って思ったけど、俺よりも本当の肉体派の軍人さんの方が絶対ブラックだよな。寝る暇とかないだろ。もうこんな時代になったら。その健康を守るための保守点検なら、まだ、広告いれるかどうかの保守点検よりやりがいがある。


 まあいい。ポテチの食い過ぎで胃はボロボロだが、キーボード(あるいはそれに代わるホログラム)を叩く指だけは、まだプロ級だ。

「ベッドで転がっているよりは、AIと喧嘩してる方がマシだろうな」

 とか思ったけど、心はウキウキしている。米軍のAIはシュトラウス大佐が作ったものだ。もちろんこの空母だってそうだろう。そのアルゴリズムを覗ける! ラッキー極まれり!

 女性軍人に部屋とベッドを教わり、部屋の人たちに平和的な挨拶をしたら、女性軍人が後ろで嘲笑めいたため息を付いた。あんな乱闘しやがったのに猫かぶってやがるって感じか。

「帰る道だ、医療室に案内してやる」

 優しい。いや、この狂犬を一人でうろつかせて、またどこかで誰かの指がボキッといくのを防ぎたいだけだろうな。俺は「ありがとうございます」と殊勝な顔をして、彼女の頼もしい背中について行った。場所はもう知ってるけど

 

 医療室の受付まで来ると、彼女は忙しそうに走り回っている看護兵を捕まえ、俺の背中をポンと無造作に押した。


「おい、こいつを見てやってくれ。――中身アタマがイカれてる。SAN値のスキャンと、あと拳の手当だ。大佐の『お気に入り』らしいから、壊さないようにな」


 言いかた!

 彼女は俺に一度だけ皮肉な笑みを向けると、返事も待たずに軍靴の音を響かせて去って行った。残された看護兵が、怯えたような、あるいは同情するような目で俺を見てくる。

「……ええと、あっちのユニットへ。精神鑑定は自動ですから」


◆ **医療システム/精神鑑定ユニット**


 電話ボックスのようなスキャンユニット。

 ポテチのカスを服から払い、中に入って数秒。網膜をなぞるレーザーと、脳を優しく撫で回されるような磁気リゾナンス。

 結果は、俺がユニットを出る前に隣のモニターに表示された。


--- HUD 開始 ------

**【精神状態診断結果:山崎悟】** **SAN値:48 / 100(警戒域)** **ステータス:『高解像度・離隔モード(High-Res Dissociation)』** **解析:対象は現実を「極めて解像度の高いシミュレーション」として認識中。悲嘆、恐怖、絶望などの感情は「システム負荷」としてバックグラウンドへ追いやられており、論理演算能力が異常にブーストされています。**

**注記:本人は「ウキウキ」していると自認していますが、これは一種の脳内麻薬によるバグ(防衛機制)です。**

--- HUD 終了 ------


「……バグって言うなよ。効率化って言ってくれ。というかこれ、本人にも通知するのかよ」

 呟きながらユニットを出る。看護兵がモニターを見て、さっと顔を逸らした。

「あの……拳の擦り傷、消毒しておきますね。そのあとは、案内された部屋で待機してください。身元照会には時間がかかりますから」


 処置を終え……といっても、拳を赤くなっていただけ。そりゃ、あんなバカを殴って怪我するようなヘタはウチませんよ。

 教えられた新しい部屋に戻る。ここも12人部屋だったがさっきの「グズの部屋」に比べれば天国だ。

 同居人は、軍服を着ていないがガタイのいい男が二人と、眼鏡をかけた初老の男。もう一度「平和的な挨拶(猫かぶりモード)」を済ませると、彼らは俺の顔……というより、耳タブの「黄色いテープ」と、「硝煙臭い軍用手袋」を見て、無言で頷き、自分の領域に戻っていった。よし、不可侵条約締結。


 3段ベッドの中段に潜り込み、ようやく一息ついた。

 身元認証が済むまで一時間か、二時間か。

 暗いベッドの中で、自分にしか見えない『ステイタスボード』を呼び出した。ほかのベッドでも、みんなその体制だ。背中が痛くて上向けないのがツライ。いつもの生活なら、痛み止め入軟膏を塗ってもらえるから痛みなんて無いのに……右を下にして横向きで、『ステイタスボード』を眺める。

 青白い光が、網膜を優しく刺した。

「さて……。大佐のネットワークを覗く前に、まずは自分のスペックをデバッグしておかないとな」

 ボードの深い階層へ。


◆ **ステイタスボード/スキル構造**


 『ステイタスボード』にはジョブとスキルがあり、経験値でポイントをためてジョブとスキルを割り振る、まさにゲームみたいなシステムが地球上の人類に使えるようになったらしい。

 リアルVRだ。


 ポテチ自体は、実は、俺の『ステイタスボード』からも出せる。なぜなら「ポテトチップス」というスキルを俺が持っていたからだ! 思わず取得してしまった。1ポイントだったし。そしたら、「うすしお、コンソメ……」とか、フレイバーがスキルで生えた! 

 うおあああっっっ!

 『マイピ』の技術ツリーみたいに、スキルを取得しないと見えないサブスキル! こんなんでポイントを使ってはいかん! そう思ったけど、「ゆずこしょう味」!

 ふおおおぉぉぉぉぉぉっっっっっ! 

 九州限定で、日本でも滅多に買えないフレイバー! 九州の社員が土産に買ってきたので惚れたのに、その後二度と食べられていない……思わずポチしてしまった。

 食べ物の嗜好品だけで200ポイントもないポイントを2ポイントも使ってしまった…………

 さすがに『アイテムボックス』にもまだ入ってないんだよ。思わずスキルで出してしまった。

 毎日スキルで1個のポテチが無料で出せるらしい。なにそれ優遇! そうか、スキル関連アイテムが、フリーなタイプか!

 ポテチ食べると20分後に口内炎が出るんだよ。つまりは胃が荒れてるんだ。俺の胃はこういう油を受け付けないらしい。これは子供の頃からそうだった。おかげで、健康食品しか口にしないようにはなったな。駄菓子って毒物だぞ、って、俺の体が言ってるんだからどうしようもない。でも、味が好きで、月に一度だけ、食べるんだ。

 でも、食べるために呟くんだよ。

「コレは思考OSをアップデートする一口か?」

 そして俺は答えるんだ。

「脳にも体にも悪いが、俺の心の栄養分だ!」

 まぁ……うん………………たまに、「これはアップデートしないから、食べない」と思える月もある。ものすごく仕事が快調な時だな。おそらく、達成が報酬になってるから、食べ物で報酬を欲しがらないんだろう。 

 それをもう、この船に乗ってから5袋目。もう口内炎はでてるし、胃がむかむかしてる。でも止まらない……悪いとわかっているのに食べているのが延々と自己嫌悪になって、一口ごとに「今度はやめろ」「もうやめろ」と呟くのに、延々と食べてしまっていて、「死ぬなら死ねよ!」と思ってしまっている。

 こういうときこそ節制しないといけないんだよ。なぜなら「逃げる」なら体力が必要だから。「胃が荒れる」ってのは、十分「体が壊れてる」んだよな。

 胃を壊したら走るのが遅くなる。動くたびに胃が痛いからな。

 逃げる時に走れないってのは、死ぬってことだ。だから、ポテチは“死ぬための飯”なんだよ

 だから、こんな事態で胃を悪くするとわかっていてポテチを食い続けてるって遠回りな自殺でもある。

 わかってるんだけど、もうとまらん。

 

「ステイタスボードに『胃:満タン』って出てくれたらなぁ……あと『後悔:極大』……食べるの止められる気がする」

 自分で止めろや!

 心の声に蓋をしてパリパリ……バリ……

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