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サバイバルゲームで一括破壊したら惑星がひれ伏しました。  作者: 設楽七央


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《狂犬モード実証実験》

★ システム検証フェーズ/UI理解


 アイテムボックス。

 やっぱり、世界がゲームになったらあるんだな。でも、誰でも無料で取り出せるって斬新! 中はショッピングサイトのカテゴリ分けみたいなツリー表示になってて便利。一度出した物は、お気に入り扱いになるのか、上の方にアイコンで表示される。UIは今ひとつ雑だけど、競合が居ないんだから、使用に問題なければ十分十分。

 俺のコートを『アイテムボックス』に入れて取り出したら汚れたとこが分離されててめっちゃ便利! しかも、衣類とかだと『装着』というボタンがある! それを押すと手のひらにポンと出てくるんじゃなく、体に装着される! 凄い! ズボンを履いたまま下着の着脱ができる! 何それ凄い! これ、逆に言うと 他人のパンツを抜けるのではないのか? それはやばいな。女性などの被害がでませんように!


「……はっ……あ?」


★ インシデント発生/身体的露出


 俺が全裸になってた!

 咄嗟に周囲を見回したら左隣のベッドのやつがニヤニヤしてる。

「熟女かと思ったら男かよ!」

 『アイテムボックス』で俺の服を装着! 引き出される前で良かった! 右手袋の上に、汗臭い手袋で覆うように握りしめて立ち上がる。

「なんだよ!」

「何だよ、じゃねーだろ!」


★ 暴力行使フェーズ/威嚇確定


 怒鳴りながら隣のベッドの前に立って胸ぐらを掴んでベッドから引きずり出し、膝蹴りで腹腹に一発。次に金的。最後にアッパーかましてベッドに叩きつけた。

「支柱に押し付けて蹴らなかっただけありがたがれ!」

「やっ……やめっ……」

 左手の薬指を手の甲側にボキッ!

「ギャアアアァァァァッッ!」

「やめろっ、もういいだろ!」

 鼻面に一発パンチを見舞う体勢に振り上げたら、誰かが俺を羽交い締めした。よし、ここで止めてくれてOK! 頭蓋骨なんて殴りたくないからな! だが、まだ盛った振りで後ろに勢いはあるけど軽い肘鉄!

 手袋を二重にガードしたから俺の拳は無事! 痛みもない。よし! だが狂犬の振りは続ける。

「フザケンナ! 今の見てたのか! 俺の服を全部奪って素っ裸にしたんだぞ! この事態に軽い気持ちで赤の他人にいたずらして許されると思うな! こちとら女顔で滑られきった人生だから、柔道二段、空手二段、ボクシングもプロ級なんだよ! もういたずらできないように右手の薬指もいっとくかっ! 親指じゃないだけ感謝しろ!」

 狭い部屋にベッドが12。こんな男ばかりの閉鎖空間で、舐められて放置したら延々と的にされる! あの医者に言われなくてもそんな覚悟、ずっとあるんだよ! 危ないヤツだと思われたほうがマシ! 話に聞くだけでも知人や知人の知人の女性がここ数年で五人以上、レイプ被害で人生挫折してんだよ! そんな目にあってたまるか! これ以上、俺の人生を他人の思い通りになんてさせるか! しかも、たかが、いっときのそんなバカバカしい男の発作のために! ふざけんなよ!

 俺は狂犬なんだよ! 向かってくんな! 腕噛みちぎるぞ! ってのを、実際に見せないといけない。特に アメリカでは。 みんな日本みたいな「空気読め」なんて絶対に言わないんだからな。

 力こそ正義。

 その上に知性。

 だが最終的にまた力に戻る。


 拳、思考、核爆弾。順番はこれだ。


★ 鎮静フェーズ/自己制御


 眼の前が赤い……

「はぁ……はぁ……はぁ………………」

 イライラが止まらない。

 本気で殺したくなる。


 狂気は武器として使え。

 身を任せるな。包丁を向けていいのは防寒に対してだけで、己の腹に向けてはいけない。

「はーーーーーーーー……………………」

 三回右足を踏み鳴らして、羽交い締めの男を振り払った。

 疲労で真っ先になくなるのが冷静さだ。俺は今、疲れすぎている。だから、冷静になることにこんなにコストがかかる。

 うざい! 今、核爆弾のボタンがあったら押せる!

「フーーーーー…………」

 よし、鎮火完了。

 誰もこいつの具合を見に来るやつはいないけど、全員が注目している。

 これで、部屋移動申請は通るだろう。

「あ、そうだ、こいつの服はいでやろう」

 どうするんだ?

 男を見る………………

「『アイテムボックス』に収納……うぉっ! 本当に消えた!」

 こ汚い男の全裸なんて見るもんじゃねーよな、ホント。


★ 軍警介入フェーズ/公式裁定


 あ、廊下を走ってくる音。

「何してる!」

 俺はすぐに両手をあげて、一歩下がる。敬礼はしない。俺は軍人ではない、との意思表明だ。

 本当ならベッドのこいつも両手をあげないといけないんだけど、服を『アイテムボックス』から取り出して装着してた。お前……運が悪かったら射殺されるぞ。

 女性軍人がドア口でマシンガンを腰だめに持ってる。こんな狭い船室なのにハンドガンじゃないのねー……左腕にMPの腕章。軍警察か。……日本で言う憲兵ポジション。

 もちろん銃口の先には俺。しかも、部屋に入って来ない。

 さすがにマシンガンはキュッとなるな。

 カメラでは、俺が全裸にされたことは映ってないだろうから俺が突然隣に殴り込みをかけたと思われているはず。

 加害者が俺。少しでも変な素振りを見せたら射殺される。それがアメリカのルール。でも手をあげていたら射殺判断は先送りされる。

「何があった?」

 彼女はボロボロの男をチラ見して俺から銃口を逸らさない。そのまま俺が殴り倒されなくて良かった。彼女は凄く冷静だ。ムーブ的には俺が悪役なのに。

 ふー……息を整える。少し笑顔を表現。

「発言よろしいですか?」

 挙手して彼女を見る。

「OK」

「こいつが突然俺の服を『アイテムボックス』に収納して全裸にしたので、」

「は?」

 マシンガンの先がベッドの男に向いた。ふー……やっぱ銃口怖い。一気に気楽になった。

「服を回収したあと、けじめをつけていただけです。この顔のせいでレイプ未遂にあったことが何度もあるので、腕力があることを見せつけて周囲への威圧として使いました。知人にもレイプ被害で退職下女性がいたので、こんな男ばっかりのところで舐められたら、終わりだと考えました。派手な軍医さんにも、襲われたら過剰防衛 していい、とにかく生き残れって言われました。それを実行しました」

 女性軍人は改めて俺の顔を見上げた。俺に対する避難の色はない。よし、俺の主張が通りそう。

「「アイテムボックス」を悪用した強盗はもちろん、平常でも軍事上でも違法に間違いはない。今の空母は避難民を収容したばかりで、性犯罪やリンチの火種に敏感だ。

 お前は正当防衛の範疇を少し越えているが、今は不問とする。他のヤツ、異論は?」

 彼女が部屋全体に銃口を向けた。全員首を横に振る。

 これ、俺がたんにキ○ガイで隣のやつを殴っても同じ結果になるのでは?

「シュトラウス大佐の手筈で、『スキル』の監視カメラが全ベッドにある。お前が全裸になったのは見えていた。主張と一致する」

 大佐ー!!! 

 全ベッドに監視カメラ! 

「数万カメラの監視は逆に大変なのでは?」

「異常があったカメラが最前面に出てきた。それがお前の全裸で、監視室が仰天した」

「…………それって俺、泣いていい案件?」

「だから、助けに来た」

「サンキューサー」

 昔は女性軍人はマムと呼んでたけど今は「上司(目上)がサー」で統一された。区別がなくなってマジ楽!

 こんな事件がやたら発生してるんだろうな。いや、俺が一件目か! うがー! みんなイライラしてるから喧嘩なんてそこらじゅうでするだろうし。このスピードで駆けつけてくれただけありがたい。

 彼女はヘッドセットを叩いて通信した。

「衣服窃盗加害者を隔離房へ移送する。兵士をここへ」

 あいつがここから居なくなってくれるならありがたい。このあとずっと恨まれると、トイレで溺死させたくなるからな。

 ……うん。ゲームとリアルが見分けつかなくなってるな、俺。殺人できるゲームはなるべくやらないようにしてたんだけどな。

「『アイテムボックス』、他人の服をハゲるってやばくないですか?」

「そんな報告は今初めて聞いた。この通信もオンラインだ。確認はするが、もう大佐に届いているだろう」

 ふーん……ボロボロの男を見て、『アイテムボックス』につっこんだけど【他人の持ち物はあなたが左右できません】って出た! はっや! はっやい! 大佐、早すぎ! えっ? 『アイテムボックス』って人類が左右できるの! どうやって! 俺も『アイテムボックス』いじりたい!

「……今確認するお前も大概早い」

 あれ? 声に出てた? はぁ……って、彼女が俺の眼の前でため息をついた。

「言っておくが、今のソレは窃盗未遂、現行犯だ」

「あっ!」

 彼女が笑いを噛み殺している。悪いようにとは取られてなくて良かったけど……冷静さを欠いているぞ俺! 注意しろ!

「異論は?」

「…………ノーサー」

 彼女が手を振り上げたので殴られるかと思ったら、右頬をかすった。

 スマホを鏡にしてそこを見ると、右耳のタブに黄色いタグがは貼られている……

 彼女は、ボロボロの男のベッドに踏み込んで、その男の右耳たぶに赤いタグをつけた。

 左耳がトリアージで右耳がレッドカードか!

 俺イエローカード!

 もう一枚、右につけられた! イヤーカフみたいに青いのと黒いの。

「青は知的犯罪者予備軍だ。軍人はアホが多いからな。青タグを見ると上司を呼んでくるから話が長引くが、突然殴られはしないだろう。黒タグは『すぐ殴る』だ。青だけだといじめの被害にあいやすい。黒タグは全員が銃を向けてから喋るが気にするな」

 彼女がまたため息。まだ笑ってるけど。ホント……すみませんでした。

「十分、心に刺さりました」

 やり過ぎた。

「お前はポテチを食い終わったら、一度『精神安定度(SAN値)』をスキャンしに来い。お前、目が据わりすぎている。それと拳の手当をしろ。今、擦り傷とか作るな」

 握っていた手袋をつまんで見せた。

「抗生物質がないから破傷風で死ぬってのは聞きました。大丈夫です。手袋を噛ませて殴りましたから。そいつもそんな重症じゃないですよ。今、怪我するようなことはしません。俺が最後の抗生物質投与者だと医師に言われました」

「ああ、……大佐の……それと、クレイジードクのお気に入りってお前か! そういうのは顔認証に表示してほしいな」

 横の連絡早いな! さすが軍隊! あの人やっぱりクレイジーなんだ!

 彼女もなんか、ピピッ、と『ステイタスボード』を操作してる。

「よし! これで、お前、クレイジードクと大佐のお気に入りだと顔認証で表示される」

 それっていいのか悪いのか……

 彼女は今、ゴーグルもバイザーも付けていない。それでも見えている。ということは、『ステイタスボード』のスキルでHUDを展開している?

 視界に直接、情報が重なるやつだ。しかも物理デバイスなしで、本人にしか見えない。

 ……最高じゃないか。『ステイタスボード』の研究対象が決まった。今すぐ欲しい。

「それと、知的犯罪者予備軍と窃盗未遂犯もな」

 はう…………

「……サンキューサー…………」

 女性軍人が俺をじろりと上から下まで見て、指で「部屋を出てこい」とサインして外に出た。ポテチ食ってからで良かったのでは? と思ったけど、ポテチはアイテムボックスにしまってからついて出る。

 女性軍人は廊下の壁に持たれて足でこの部屋のドアを突っ張って開かないようにしながら俺を見上げた。

「ここは入隊を拒んだグズだけの部屋だ。なぜお前みたいなのがここにいる?」

「入隊を拒んだからです」

「今の軍は強いやつがほしい。この基地だけでもあいつらに半数以上殺されたんだ。シルベン基地は壊滅した。今すぐ 補充が欲しいんだよ。入隊しろ」

 半数 殺されたって……軍人 でもそんなに殺されるものなのか!

 というか、シルベンってこの海軍工廠のために新設された陸軍駐屯地だろ? 壊滅? それ、部外秘では? ……え? 陸軍基地なんて戦闘マシンしかいないのに、この事態で壊滅! そりゃ、民間人は生き残らないよな……

「冷静で強い奴がほしい。一人でも仲間を増やしたい。お前はそこまで狂犬なのか? 今、私が勧誘しても入隊を断るか? 入隊すればもっと安全な部屋に回してやれるぞ?」

「イエッサー。俺に団体行動は無理です。俺、頭おかしいエンジニアなので」

「……なんのエンジニアだ? 昨日の職は?」

 昨日の職……アメリカらしい聞き方だな。

 聞かれてる間に兵士が来て、あのバカを連れて行った。

「AI専門です。シルファ候補の上級選挙スタッフです」

「……はっ……ぁ? シルファ候補って大統領候補の? お前っ、ベルスト住人か?」

 彼女が、ドアから足をおろして一歩下がった。そんな怖がらなくても……

「イエッサー」

 彼女が二回瞬きをして何度か唇を噛んだ。

 『ベルスと住人か!』は、『雲の上の奴らか!』という……日本で言うと『上級国民か!』ってことだ。

「………………とんだスマート・アスが紛れ込んだもんだな…………」

 彼女がごくりと喉を鳴らした。

「そりゃ軍隊は無理か……お前ら命令する側だもんな」

 そっち? レベチに雲の上じゃなく、上司か部下かって話か。

「お前、持ち物がないならこのままついてこい。マシな部屋に入れてやる」

 お! それはありがたい! やっぱり最初に暴れておくもんだ!

「今の暴力、全部計算だろ?」

「……イエッサー」

「さっきのやつの仲間があと2人、あの部屋にいるようだ。このままお前をここで寝かせたら、明日の朝絶対死んでる。

 最後の抗生物質だし、ドクにも言われてるし。お前には生き延びてもらわないと困る」

 仲間がいたことまでは気づかなかった。咄嗟にかばいにでてこないだけ賢いやつなら余計にタチ悪いな。俺を羽交い締めにしたのが一人目だとして、もう一人は、まじわからなかった!

 女性軍人の背中を追いながら、俺は内心でガッツポーズをした。これだ。この「特別扱い」を勝ち取るために、俺はあいつの指を折り、インテリの皮を脱ぎ捨てたんだ。……いや、素で殴ったけどな。腹が立ったから。

「戦えるやつはもちろんほしいが、現状では、考えられるやつのほうがさらに貴重だ。全部大佐一人でするには大変だろうからな……研究所の面々が全員残ってるからまだマシだろうが……」

 というか、この人、そんな内情をべらべら喋っていいの? そもそもが、すでに引き抜かれる前提だから、先に情報開示しないと俺が判断しないってこと? というか、流石に、研究所に入るために一応入隊しろって言われたら、それは断る理由がないんだよな。あの時の大佐の入隊条件には「研究所勤務でもいい」ってのはなかったからな。ただ、……空母の研究なんてしてる研究員って、それこそ、俺からすると雲の上の人なんだけど……そこに入るの嫌だなぁ……


★ 仮説提示フェーズ/世界構造


「一つ聞くが」

  前を歩く彼女が、振り返らずに言った。

 「シルファ候補のAI担当なら、この『ステイタスボード』の正体にも見当がついてるのか?」


 Mk.Ⅷをはめ直し、廊下の天井で明滅する非常灯を見上げた。

「いいえ。でも、こいつの『UIユーザーインターフェース』を作った奴の性格はわかります。よっぽどの合理主義者か、あるいは、人類を巨大な実験場で飼育しようとしている神様気取りのサイコパスです。それと……地球人類全員に表示されているなら、宇宙規模のサーバーでしょう。地球人類に同行できるものじゃないと思いますよ。

 ……そうですね。地球サーバー……かな。。地球のマントルを電源として動く惑星規模のサーバー」

 うん。『地球サーバー』か、言いえて妙だな。

 彼女が短く鼻で笑った。

「……スマート・アスめ。お前、を、『艦内ネットワーク』の端末がある部屋に推薦してやる」



◆――AI副官ログ(AI LOG)――


【AI副官デリミタ子】

──行動解析:威嚇による社会的立場確定、成功。

──治安リスク低減:当該区画での再被害確率、大幅低下。

──能力再評価:戦闘力+判断力+即時仮説構築。

──配置変更提案:艦内ネットワーク端末区画、適合率高。

──思想フェーズ更新:「力を見せた後に、思考を通す」。

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