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サバイバルゲームで一括破壊したら惑星がひれ伏しました。  作者: 設楽七央


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無料開放されたアイテムボックス

★ 疲労後内省フェーズ/判断停止


「俺が大佐を助けられること?」

 そう考えてぐるぐる……なんにも見つからない。


 あんな五メートル級のドーベルマンを従えて、自分自身も城壁みたいな大佐の前に立って、俺に何が防げるっていうんだ。

 ハンドガンの弾ぐらいしか俺の身体では止まらない。ライフルやマシンガンなら貫通する。

 

 というか、おそらく俺、まともに頭が働いてない。

 パルクールやると疲れるよな。

 あれだよ、猫が1日中寝てる感じ。


 トンボ殺して、32階から螺旋階段を手すりで駆け下りて、バスに飛び乗って、肩外れかけて、揺れるバスでポールにしがみついて、シュトラウス大佐にあって…………それだけで俺の感激振り切れて今燃え尽き状態なんだろう。

 こういうときは決断しないほうがいい。

 だから、思考が『ステイタスボード』の確認すらストップをかけてる。そんな気がする。


 安物のベッドに寝てるとつらいので、立ってる。ベッドの端を持って懸垂したら上の人に嫌がられた。こんだけ暇なら『マイピ』してもいい気がするけど駄目かな。


★ 環境認識フェーズ/戦況の持続


 なんか、ヘッドフォンを外すと、延々と爆撃音が聞こえるので、この空母がずっと何かを攻撃しているのはわかる。おそらくあの巨大化動物達だろう。


 この『USアレキサンダー』の艦長、シュトラウス大佐の配下のクランには入ったけど、大佐の『第一軍隊』入隊は拒否。

 

 クランってのはSNSのフォローグループみたいなもので、軍隊はガチで命令されるギルド、って感じかな。

 『第一軍隊』も、この『ステイタスボード』のシステムの中で「クラン」とは別に「軍隊」という組織ができたそうだ。第一クラン、第一軍隊とかは「早い者順」。さすがシュトラウス大佐。最初に軍隊を発起したんだ。クランも五番目だし、凄いよな。俺のクランなんて10億番台だぜ。

 

★ システム観測フェーズ/現実侵食

 

 それにしても、リアル地球でゲームシステムがインストールされたって凄いことだよな。どんなサーバーがあったらそんなことが可能なのか

 巨大動物も世界中で出てるらしいし……

 この部屋でも、入口ドアの隣に「スキルで出したモニタ」が設置されて、外の様子が見える。まるで窓みたい。

 

 サンフランシスコの街は火災旋風がうねり、巨大ムカデと巨大猫が摩天楼の上でタイマンやってた。漫画かよ。

 モニタの様子より、配線無いのにどうやって電源取ってるのかとか、フレームレートでかいな、とか先に考えてしまう。

 

 ……って、また“どうでもいい方向”に思考が行ってる。俺、死ぬのかな。


★ データ確認フェーズ/不可逆情報


 『ステイタスボード』の連絡先がリアルと連動していて、そこに名前がない人は死んだらしい。


 日本の会社の友達、マイピの先輩、たまに飲んだ大学同期、アメリカの同僚、知人、上司……全部、名前がなかった。マイピの職人たちやメーカーの人も、社長以外名前が無い。



 うん。俺の人脈全滅。


 すごいな。連絡先には何千人の名前があるけど、どんどん減ったり増えたりしてる。

 「近くにいる人」が連絡先リストに自動で表示されるらしい。それもわかりやすく「友人」「知人」「隣人」「通りすがり」で別れてる。シュトラウス大佐だけが友人扱い。恐れ多いけど、嬉しい!


 「隣人=周囲にいる人」

 「知人=挨拶した人」

 「友人=挨拶以外を喋った人」


 なにそれ、細かすぎる。

 マイピでも、そんなアドオン無いぞ。


 そもそも「喋ったのが挨拶かそうでないか」ってどこでわけてんだ? そんなの今のAIでも難しいぞ。全世界の挨拶ワード入力してればできるだろうけど……軍人に「そこを通るな!」「イエッサー!」の場合、挨拶なのか喋ってるのか?

 どんなAI使ってるの? アルゴリズムどうなってんの?



 ともかく、日本の家族も友人も全部名前……無い。


 画面に並ぶ“無”を見てると、逆に心がざわつかないのが怖かった。

 ……たぶん、まだ実感できてないんだ。


★ 私的確認フェーズ/感情の歪み


「フッ……」

 思わず笑ってしまった。

 妹と父の名前は探したけど、母の名前を探してなかった。

 今、わざわざ確認したけど、名前、なかった。そういや、苗字変わったんだっけ? と、うろ覚えの新苗字で探したけどなかった。


 俺の記憶の正しさを信じたい。


 死んでいてくれ!

 

 妹が死んでるのに母親が生きてるとか許せない。

 父親と別れてすぐ結婚できたんだから、顔と運はいいんだよな、あの女。

 鏡を見るとゾッとする。

 30を越えて、ようやく男の顔が目についてにてないけど、航行の頃は女顔でからかわれることもあったからな。

「レモンみたいなバカも出るしな!」

 天ぷら油に顔をつっこんでやったらすっとするかな、と思ったことは何度もある。

 せっかく無傷なのに身体異常を自分で作るなんて馬鹿げてる、と思いとどまった。


 あっちも俺を家族とは思ってないから、イーブンってことで。親不孝とか言わないでね。

「御冥福をお祈り申し上げます」

 合掌。

 その手で『アイテムボックス』からポテチを出した。俺、ここ数時間で何袋のポテチを食うつもりだ?

 

 第一クランが『アイテムボックス』を大開放してくれているので、みんな出したり出したり、と、近所のコンビニ扱いで飲食に不自由はない。


 『アイテムボックス』!

 異世界転生で一番欲しいスキル!

 持ち物を管理できるのって、こんなに安心するんだな。

 しかもそれを無料開放とか、神かよ!


 第一クランオーナーは、「世界中の、今日なくなるアイテムを集めて」と言っている。集めるものもなく、ただ出すだけなのが心に痛い。

「そのうち、たくさん入れるので、今は出すだけで許してください」


 手を合わせながら、ポテチを出す。


 ちなみに、そのオーナーの名前を確認したら『サラ・ファースト』……シュトラウス大佐の婚約者だよ!

 大佐という資産家のプロポーズを蹴り続けて、今、この事態に、アイテムボックスの大解放。

 人柄が忍ばれる。足を向けて寝られないな。

 明日が二人の結婚式のはずだったのに。

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