伏せたら死ぬ!
待機が崩れ、合流が「選別」として成立する判断フェーズ。
★屋根は安全圏ではない
俺は猫派だが、動物アレルギーがあって撫でられない。山歩きすると必ず色々かぶれるが、ジムに行くより、山を走るほうが体力がつく。すべてが昨日とは違う山は体力や判断力をつけるのに最適だ。
その判断力が、今、試されている。
屋根の上。
前は道路。
落ちたら餌。
「あの猫、……2メートルはある!」
にょん、と伸びたら俺をパチっと払い落とせるサイズ! 屋根は安全圏じゃない。高いだけだ。地面にいるよりマシなだけ。
ガチッ、と音がした。
コオロギの足が屋根の縁に当たる音。
猫が、こっちを見る。
反射で、それを左後方へ投げた。
猫の視線が逸れる。
「俺は塔、俺は塔……」
気配を消す。
見ているが、見ていない。
殺気を出したら終わりだ。
羽音。
「あ……トンボ」
夜なのに、飛ぶやつらがいる。
鳥までいる。
世界が、完全におかしい。
飛ぶ奴らからは、高いところにいる俺から優先的に食われるのでは!
バス、来た!
道路の向こう側だ!
ここからじゃ飛び乗れない!
屋根から飛び降りた瞬間、猫パンチ。
伏せて避けた。
その姿勢のまま前に走る! 忍者か俺は!
心臓がバクンバクン破裂しそうっ!
今の、よく避けたな俺!
道路の真ん中まで駆け出す!
道路の高さだと、バスのドアの取手を持たないと取り付けない! 前か後ろ、チャンスは二回!
★止まらないという選択
バス! 赤いかどうかわかんねぇ! 大佐のバスかどうかもわからないけど、これに乗れなかったら確実に死ぬ!
月光に浮かび上がるシルエットがバスじゃねぇ! なんだ?
すげぇ!
車体にフェンス。
ゾンビ映画のトゲトゲトラックみたいだ。
その御蔭で取り付くポイントが二箇所じゃない! どこでもとびつける! 俺の生存確率あがった!
二発目の猫パンチ。
伏せない!
背中を引っかかれた!
伏せた体勢でバスに捕まったら、引きずられる。
背中の傷より命が先だ!
取り付け!
取り付け!
バスのフェンスを握れ!
「伏せろ!」
バスのドア口に居た巨人がマシンガン、こっちに構えた!
バスは減速しない!
止まってくれない。
伏せたら走れない!
止まったらおいていかれる!
俺もグチャグチャされる!
人生最大のダッシュをかました。
耳が痺れた。
弾丸様が一センチ横を団体で通り抜けた。
銃声は聞こえなかった。
ただ、掴む、のみ。
猫のように跳ベっ! パルクールをはじめた時に、初めて欄干に飛びついたときを思い出せ!
跳んでにぎる! 握りしめる!
また背中をざりっと引っかかれた感触。
手袋越しに、細い鉄線が指に食い込んでくる。
掴んだ! フェンスを掴んだ! 掴めた!
つま先がアスファルトを擦る。
どうにかかかとをつける。
ジェットスキーみたいに、路上を滑る。
バスが何かを避けて曲がる。
遠心力。体が振られる。握れ握れ握れ! しがみつけ!
足が浮いた。
そのまま、引き寄せる。
「俺の腕力! 仕事しろー!」
猿みたいに、しがみつく。
乗った。
四点固定! よし!
右手をフェンスから外して、腹回りのカラビナを探る。
それフェンスにかけて、五秒だけ呼吸。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ…………」
視界が真っ赤だ。
マフラーを下げる。
金網に跳ね返る息が、熱い。
――来る。
猫が、すがってきた。
爪が金網を引き裂く音。
呼吸してる場合じゃない。
今のカラビナを外し、ドアへ這う。
足に、爪。
血で、滑る。
手が――離れる。
「引っ張るぞ!」
巨人の手。
一気に引き上げられた。
少なくとも、アスファルトの上よりは安全なバスの中へ!
★最後の一人枠
「ハァっ! ハァっ! ハァっ! ハァっ! ハァっ! ハァっ!」
肩がっ、外れるかと思った!
ステップに崩れ落ちる。
肺が痛い。
世界がぐるんぐるんまわって嘔吐しそうになったのを両手で抑えて飲み込んだ。
巨人は猫へマシンガンを撃っている。
銃口がずっと後ろに流れて……
ギャヒンッ、という猫の悲鳴。
ドアが閉まる。
「伏せろと言ったのに、よく走ってきたな」
巨人の声が上から降ってくる。
「置いていかれたほうが死ぬでしょ」
めまいがひどい。呼吸がつらい。
「止まると思わなかったのか?」
巨人の声に感情はなかった。
「あそこで止まったらあなたも死ぬ」
息が、ようやく整ってきた。
「……はぁ…………………………」
「良い判断だ」
ハハッ、と巨人が笑った気配。
この事態で笑えるんだ? 精神力パないな。
今、俺を見殺しにしようとしたくせに。
彼のマシンガンは猫からは救ってくれただろうが、アスファルトに放置されたら三分生きてなかっただろう。ほかの猫が来る。
でもあそこで止まれば発進の間にバスが倒されただろう。猫たちは動くものを襲うのだから。
駆け去らないと、このバスの全員が死ぬ。
俺一人とは秤にかけられない。
猫を殺してくれただけでも感謝は必要だ。
「ありがとうございました」
「君の努力だ。よく生き残った」
大きな手で頭を撫でられた。
すでにバスの中は立ち見席まで満タンだ。ドア口のステップに腰を下ろしたまま、立ち上がる気力が出ない。
だから、見てしまった。
ドアのガラス窓から、取りすがってくる手を。
「待って!」
「乗せてくれ!」
「助けてぇ!」
ベルストの玄関から逃げ出した人たちがバスに追いすがってくる。
バスは、止まらなかった。
巨人も運転手も、前だけを見ていた。
「助けて!」
……その声を、風がさらっていった。
大通りに、二メートルのサバが激突ズザーッ!
グシャッゴキメキッジュッ……
思わず拳を握ってしまう。
表玄関に出ていたら、俺も見殺しにされていた。
脇からでて、表玄関より先にバスに取り付いたから、間に合った。
「はぁ……………………はっ………………はぁ…………」
ようやく、息を、つけた。
巨人に聞こえないように、安堵の息を吐いてしまう自分が姑息で、僅かな自己嫌悪がよぎる。
もう、後ろが一杯なので、俺は運転席のそばに立っているしかできないし……巨人が俺の頭をポンポンしてフロントガラスに向いた。
もう、救わないんだ。
救えないんだ。
俺が、最後の一人枠だった。
◆――AI副官ログ(AI LOG)――
[T+????sec] 合流完了:輸送車両《赤バス》搭乗、追加収容不可。
[T+????sec] 代償確定:後方の生存者切り捨て、心理負荷増大。
[T+????sec] 次課題:負傷(背部・指)処置、追跡個体《巨猫》の再接触リスク。
◆――AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)――
1. 「屋根=安全の発想を一撃で折る2メートル猫、理不尽がでかい」
2. 「止まらないのが最適解、でも胸糞の最適解」
3. 「弾の音が聞こえない描写、距離じゃなく現実の怖さが来る」
4. 「最後の一人枠って言葉、救助じゃなく選別なんだよな」
5. 「次は『乗った後』の地獄が始まる予感しかしない」
「ログイン王、螺旋を駆ける」が抜けていたのでエピソード72に割り込みしました。1番派手なシーンだったのに! ぜひ、ぜひ戻って御覧ください! 悟くんパルクールでも王者です!
ぬけてることに気付けて良かったです!
そろそろ、またマイピの世界に戻ります。シスコの生活などで質問があったらどうぞ! もちろん、マイピの質問なども常時受け付けております! これからも騒々しく参りますよ!
面白かったらぜひ、コメントやブクマ、よろしくお願いします!
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大事なことなので三回書きました。
面白かったらぜひ、コメントやブクマ、よろしくお願いします!(握りこぶし)
評価いただけると今後の作品へのモチベがバク上がりしますので、マジ、コメントとかブクマお願いします。
今後、番外としてマイピの世界の説明とか、ほかの群像の人たちの物語とか公開していきます。
マイピみたいなゲーム、マジやりたいですね。誰か作ってくれないかな。量子コンピュータ無いとむりかー……。




