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ミルマップ無効化:視えざる文明炉の死線演算

文明の可視化、それは神に与えられた目。

だがその神眼が封じられた時、支配者はただの“迷えるプレイヤー”と化す。


霧中。座標なし。アドオン無効。

情報ゼロの“原始モード”で、俺は立ち上がる。


これは、最強の管理者が「脳だけで世界を制御する」戦いの記録だ。


錯覚じゃない。この霧の中に、俺の王国はある。

■副題:全可視アドオン封印中。文明の神、視界1マスで立つ。



 今が、サバイバルモードの『KIWAMI』レベルなら?


 10分以内に木材と岩石を集めて洞窟拠点を作らないと死ぬ!


 もちろん、アドオンテストとか言ってる場合じゃない!

 ゲーム開始30秒後にゾンビが発生する。もう発生してる! 何分考えてた? 時計がないからわからない!

 霧の向こうの太陽を透かし見る。

 光の感じは青みがかってるから、まだ早朝というか夜明け直後! あまり時間は経って無いはず!

 

 考えてると凄い時間経ったようにいつも思うけど、時計見たら数秒だったりするもんな。

 モンスターの声や音はまだ聞こえない。「次の瞬間に飛びかかられる位置」には居ないはず。霧の端っこを歩いているから、霧の中からモンスターに殴られる確率はかなり高いが、音がしないからまだ大丈夫の筈。

 無音で近づいてくるモンスターは、いない、筈。


「ミルマップ! スタート!」

 俺がマイピ用に作ったリアルタイムマップ!

 出ない!

 嘘だろ! ミルマップ無しで『マイピ』やんの?


 ……というか、そもそも、ログインしてるこの環境が『実験モード』じゃないって時点で、何が動いて何が動かないかも怪しいんだった。


 ……それにしても、ミルマップが使えないのは痛すぎる。他のマップアドオン入れてねーぞ……?


 『ミルマップ』——通称『MilleMap』。

 俺が『ミルフィーユ農村』に特化して組んだ、自前の可視化モジュールだ。

 普通のOynmapみたいに地図を俯瞰で表示するんじゃない。こっちは「文明の内臓」を透かし見るツールなんだよ。エリアの電力自給率、NPCの稼働率、ドロップアイテムの出現率、食糧余剰帯のヒートマップなどなど、ぜんぶ一発で出る。しかも上下階層の構造は「層眼ビュー」でY座標ごとにスライス可能。地下64階の水耕栽培レイヤーから、空中浮島の風力チャンクまで視覚で追える。これがないと、俺の農村運営は脳内シミュレーションだけでやる羽目になる。いや、できるけど! できるけど!


 たとえば「緑率域りょくりついき」。

 これは耕作エリアと消費エリアの比率で、農村の『実用自給圏』を算出する表示モード。NPCの職能バランス、食料供給ラインの流動経路、全体の余剰率を、空中チャートで視覚化する。エリア単位での「飢餓予兆」がわかるから、前日に見ておけば、農民の死者ゼロに抑えられるんだよ。逆に、ミルマがなきゃ「たぶん大丈夫」しか言えない。そんなプレイ、マイピじゃねぇ!


 他にも、地形・建材・資源の連結構造から割り出す『維域圏いゐきけん』。これで、塀やエネルギー配線をどこまで延ばしていいか一目瞭然。やみくもに拡張しても、維持NPCが足りなきゃ意味ないし、過剰設置は処理負荷になる。

 見た目じゃなくて、「文明を呼吸させる配置」ってのは、そうやって構造から導き出すもんなんだよ。


 俺の『ミルフィーユ農村』は、ただの積層型農村じゃない。

 『農地』じゃなくて、『文明の反応炉』なんだ。

 人間というプロセッサに食料というエネルギーを入力し、専門家というアルゴリズムで拡張する。

 その挙動を監視・最適化するのが、『ミルマップ』。


 ……それが、今、使えない。


 これは詰んでるぞ、マジで。

 いや、いやいやいや! 「ミルマップが使えないからできない」って言ったら負けだ! 俺はあれを作る前から自分の手で『農業国運営』してた! 目で見て、耳で聞いて、座標と数字で判断してた! ミルマップは便利だけど、必要不可欠じゃない。俺は、この目で「数字の並んだ風景」を見てきた男だ!

 リニアがある時代に生まれたのに、過去転生して最速移動物体が馬、みたいな世界に行ったようなものだ。

 

 いいだろう、『KIWAMI』モード。

 マップも視界も殺してきやがったな? それで死ぬ程度のプレイヤーかどうか、見せてやるよ!


「ダクト直視でプログラム組んできたエンジニアなめんなよ!!!」


 俺はミルマがなくても、戦える!

 そして、生き残る!!


 考えろ考えろ、今何が必要だ?


ミルマップが起動しないとわかった瞬間、心の8割が死にました。

でも、残った2割が「なら見ろ、感じろ、構築しろ」って叫んでる。


数字なき空間に、脳内アルゴリズムで立ち向かう。

文明は、手の中にある。いや、脳の中にある。


次回、

『土を穿ち、穴を拓け。“拠点ゼロ号”構築開始』

俺の城は、まず“避難壕”から始まる。

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