王国三千ブロック結界――ホワイトアースドラゴン誕生秘話
『創る』とは、世界を触ること。
クラフトから生命、そして痛覚へ。
『マイピ』がただのゲームではなくなった瞬間を、ここに記す。
――創造・痛覚・時間圧縮、そしてホワイトアースドラゴン――
マイピの世界の創作の初歩は簡単。作業台をタップすると、四かける四のマス目が表示される。そこに材料を置くことで、アイテムは瞬時にできるんだ。
9割のアイテムはそれで作成できる。
他に、醸造、発酵、育成、合体、分解、実験、儀式、感応融合、音響錬成、生物共鳴、夢想合成、ドリンク合成、時間圧縮合成、起床錬成……など、いくつかの作成方法がある。
『素材 × 環境 × 感情 × 状況 × 継続 = 世界そのものがクラフト台』という超概念クラフトなんだよな……! もちろん、アドオンでさらに増えている。料理はアドオンだな。
バニラだとケーキは作業台で作れるが、今は料理アドオンを入れてるから、台所道具がないと作れない。フライパン、鍋、おたま、レードル、フライ返しなど様々だ。
だから俺はいつも「樺の木のみかん」だけを食って黄色くなって笑われてた。みかんは水分補充も同時にできる優秀な食べ物なんだぞ! 序盤から使えるんだから素晴らしい!
『ステーキ』『焼き豚』『焼き鳥』とかのほうが体力7ぐらい回復するからみんなソレを使うらしい。
みかんは2しか回復しないけど、空腹が2減ったら一個食えばいい。
7回復する『ステーキ』を常時持ってるやつって空腹が7減るまで食わないのかな? スーパーハードだと、骸骨戦士に矢一発食らうだけで死ぬぞ?
もちろん俺だって、ドラゴン退治に行くときはステーキ持っていくけど、普段はみかんでいいだろと、愚行する次第であります。
そのうち牛の自動化装置を作って、牛食べ放題になる。
『羊皮紙の本』を作るために『牛革』が必要だから。魔法を使いたいなら牛は大量繁殖させないとすぐに困る。
その過程で『牛肉』はいくらでも入手できるから、確かにみかんの代わりに持って歩いて十分なんだよな。でも、そういうのはNPCにやると国民満足度が上がるんだよ。国民に牛ステーキ食わせて王はみかん。いいだろ、別に。そのうち、デジタル鎧の機能で「指定食料を空腹が減ったら自動で食べる」ようになる。そしたら「かならず余るみかん」を使うほうがSDGsだろ!
どこに行くにも体力は問題になるからな。
体力問題の解決は簡単。ゲーム内でレベルアップすることで、ステータスにポイントを割り振れる。だから体力はそのうちいくらでも上がる。「一生遊べるゲーム!」が謳い文句の『マイピ』はレベルカンストが無いからな。まじで無双できる。ココらへんはRPGと一緒。
チートでレベルを上げようとは思わないけど、頑張って上げたレベルで無双して何が悪いんだよ!
まぁその努力を学業や仕事に生かしていれば、日本の新卒でブラックに勤める必要はなかったんだろうけどな……熱量の等価交換ができてるぜ、リアル社会……
『俺の王国』は俺が魔術レベルを上げたことで三千ブロック分の結界を張れたんだよな。だから、ドラゴンが火を吹いても大丈夫だった。
自分をその結界で守って、ドラゴン退治したら無傷でワンパン! ドラゴンの心臓を取りまくり、寿命を伸ばすアイテム『アリクシス・ヴィータ』を作りまくって、ゲーム内で三百年生きたんだ。
子孫も一杯できたぞ! ドラゴンを繁殖させて新種を作ったからな。
「自慢自慢、聞いて聞いて~!
今、ドラゴンランキングで上位にいつも食い込んでる、ホワイトアースドラゴンって俺が作ったドラゴンだぜ!(ビシッ!)」
--- ドラゴン身上書 開始 ------
バニラでは破壊できない『超深層岩』の隕石に包まれて地上に産み落とされた白い竜。
育つたびに中から『超深層岩』が押されてひびが入り、完全孵化する前に穴が開く。
そのひびが『下』に空くと、掘削下限の場合、中に入れず討伐できない。
そのうち卵の殻を割って白竜が飛び立つ。
『超深層岩』を身震いで割るドラゴンだ。攻撃力は果てしない。
ただ、『超深層岩』を割るのは頭の突起だから、首を振り回した時の頭突きさえ避ければ、一撃死は避けられる。
ドロップは『ホワイトアースドラゴンの角』『翼』『爪』『頭蓋骨』『舌』『声帯』『眼球』『肉』『牙』など。
一頭分集めて蘇生魔術をかければ蘇って従属魔獣にできる。翼はそのまま装着すれば空の覇者に!
自動で周りのモンスターを攻撃する。たまに他のプレイヤーやNPCも攻撃するお茶目さんだ。
--- ドラゴン身上書 終了 ------
どうだ? ドキドキする身上書だろ?
ここまで『申請』を作り込むと、簡単に通過するんだ。
王国プレイでそういうのをゲーム内『書籍』で書いて『図書館』に置いていたら、『NPCアダム』が繁殖とAI申請をやってて驚いた。
NPCの感情はオフにしてたけど、能力はそのままだったってことだ。
『NPCアダム』は超人なので、プレイヤーの代わりがほぼできる。けど、繁殖までできるとは思ってなかった。
「ふう…………」
今回も『NPCアダム』に色々と任せたいな。
NPCの子どもとか、たまにカワイイと思うんだけど、……子どもの頭を撫でたときのあのなんとも言えない、VR独特の空虚な触感ったら……
壁を触っても「そこより向こうには到達できない」という「情報」でしかなかったのに……
今は、壁に置いた右手が冷たい。
ゾッとして、かまどに手を向けて暖を取った。
そういえば「竈で暖を取る」ってのも、今までの『マイピ』ではなかったな。暖炉に持たれても痛くも痒くもなかった。
今は、ここより近づいたら「熱い」と思うもんな。
伸ばした手が、炎のゆらめきでふらふらと曖昧な影を落とす。
右手が、まだ痛い。何も考えずに木の幹に正拳突きしてしまったから。
もう深夜。リアルで言うと、木を殴ってから十二時間以上経ってるはずなのに、まだ痛い。
NPCの子どもが十日で大人になる時間進行なのに、まだ痛いってどういうことよ。
確認です。
まだ、ゲーム開始して、ゲーム内時間で一日経ってません。
ログインしてから二十分経ってません!
「ログインしてから二十分経ってませんーーーーーーーーっ!」
なんか、一生分考えた気がするわ。
なんか走馬灯回ってない? え? 俺、死ぬの?
うーん……確かに、死ぬ寸前の走馬灯と考えると、この時間の濃密さは理解できるかもしれん。
◆――AI副官ログ(AI LOG)――
[T+4980sec] 【AI副官デリミタ子】
──創作体系:作業台4×4を起点に、環境/感情/時間圧縮による多次元クラフトを認識。
──魔術構造:王国結界半径3000ブロック、魔術レベル上昇=寿命延長(アリクシス・ヴィータ適用)。
──生態観測:ホワイトアースドラゴン=『超深層岩孵化型』希少種。孵化時の震動波は討伐圏外を含む。
──AI進化:NPCアダムが自主的繁殖とAI申請処理を実行。感情OFFでも学習ループ継続。
──感覚更新:触覚フィードバック拡張。温度・痛覚遅延=リアル生体処理同期の可能性。
──緊急評価:プレイヤー痛覚信号が持続(実時間12h経過)。没入型リンク異常検知を推奨。
◆――AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)――
1. 「『世界そのものがクラフト台』の一文、痺れた」
2. 「ホワイトアースドラゴンの誕生過程、圧巻」
3. 「NPCアダムが子を成す……このSF感!」
4. 「壁の冷たさと痛覚のリアリティ、読後に残る余韻」
5. 「二十分で一生分の走馬灯、メタSFの極み」
この回は、『創作の快感と生存の痛み』の臨界点。
次回は、痛覚と時間圧縮の関係――「体感と現実のズレ」について、実験を始めよう。




