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サバイバルゲームで一括破壊したら惑星がひれ伏しました。  作者: 設楽七央


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先駆者利益と『座れるゴミ箱』――創作者経済の裏側

風化と堆積だけで世界は変わる。

そこへユーザー生成コンテンツとAI承認が重なると、地形と文化が同時に更新される。

『有限だから捨てない』思想は、長期プレイの基礎体力だ。


 ――風化・堆積・創作が世界を造り替える――






 ゲームだけど、経年劣化も『マイピ』はあった。山はそのうち削れて平らになり、川は細くなり海も埋まる。地面は堆積物が溜まって様子が変わっていく。そこまで進行すると普通は岩石の上に3ブロックしか土がないが、4ブロック、5ブロックと増えていくこともある。植物が堆積して土が増えたという扱いになるんだな。斜面とかは「土がずり落ちていく」から3ブロックのままのことが多い。『マイニングラフ』の時は、森を刈ったらプレイヤーが苗を植えない限り樹木は復活しなかったけど、『マイピ』では復活する。復活すると言っても数ヶ月単位なので、樹木が必要ならプレイヤーは植林場を作るな。苗木に肥料をやり続けると、数秒で成木にもできるから。

 まぁ、300年ぐらいでは、山は1ブロックも下がらないけど、平原が森林になったり、砂漠になったり、緑の山の森林限界が下がってきたりは、する。バイオームが一年に一ブロックずつ動く感じ。一年以内にプレイを終えるなら関係ない話だからあんまり知られてないな。俺には重大問題なんだよ。だって温帯に拠点構えてるのに、80年後に砂漠や氷原になるんだぞ! 死活問題だっつーの!

 森林限界がなんで下がるんだよと思ってたけど、土が頂上から雨で流れ落ちていくから、土壌がなくなって植物が減る、という理屈を聞いて納得した。温度ではなく、土壌問題ですね。

 マイピ世界の地面は「土が3ブロック」しかないから。100年に一個の土が消えたら、300年で岩山になる。逆に森林が多いところでは樹木が倒れて、腐って、土ブロックが増えていく。だから、一つのマップを長年使っていると、土ブロックが3つ以上あったり無かったりする場所も出てくる。それでも基本的には「プレイヤーが存在する周囲」しか時間は進まないから、拠点の植林場を数十年放置していたら、勝手に倒れて腐る、というのをたまに見られるだけだ。

 リアルだと、およそ60年で、岩の島が森林になるらしいからな。マイピも、そんな時間軸で大地は変わっていくのだろう。


 これはゲームなので、設定次第で簡単に年月を早めることができる。リアル24時間動かしていれば、数千年進ませることは可能だ。そうなると、リアル地球シミュレーションになるのかもしれない。実際、そうやって「新種」を作った俺が殿堂入りしてるからな。


 『マイピ』は、「基礎アイテム」という『メーカーが最初に作ったアイテム』でも数千ある。だが、さらにアイテムをユーザーが作る。だから、無限にアイテムができるんだ。クリエイティブモードでは実際にブロックやアイテムを新規に作成することができる。これは『ザ・パーソンズ』が参入してからだな。

『ザ・パーソンズ』では、3Dモデリング自体はできないが、色合わせとか、アバターの成形とかが出来るんだ。そのアバターを3Dの「町」の中で自律行動させて楽しむゲームだから。『マイピ』のNPC自律行動と相性がいい。あれをアイテム作成で『マイピ』もできるようになったんだ。

 ブロックを積みあげて好きなカタチを作ると、その色でそのカタチの「1つのブロック」ができる。それを登録すれば、ブロックアイテムが作れるのだ。1万ブロック×1万ブロック使ってアイテムを作れば細かい模様も思いのママ! それを何分の1に縮尺するかで、マルチブロックなのか単一ブロックなのかが決められる。

 マルチブロックっていうのは、複数のブロックで作られるアイテムのこと。ポットとか蝋燭とかは大体1ブロック。剣は2ブロック。槍は3ブロック。さっきの点滴も、3ブロック。コークス炉とかは10×10×高さ20。そういうのが「マルチブロック」になる。

 ド素人はアイテムの柄である「テクスチャ」を作る人が少ない。けど、色の違う積み木を積み上げて柄を作ることは出来る。それも、ゲーム内でできるんだから、作るよな。だから、『オリジナルアイテム』がバカほど多くなったんだ。『色替え』の場合は、1ピクセルでも柄が違えば登録可能だから。似たようなのが山ほどある。新アイテムの申請受付と受理はAIがしているので、通過が速い速い。そして『自分が作ったアイテム』を『他のプレイヤーが使った』数でゲーム内ポイントが溜まっていくからみんな必死。

 俺も昔『座れるゴミ箱』という機能ブロックを作った。ただの立方体にゴミ箱と椅子の機能をつけただけだ。アイテム設定をするときに「ゴミ箱」「椅子」のチェックを入れるだけ! 簡単! 色展開も12色! シンプルでいい、と、案外使われていて、ポイントザクザク左うちわ! シンプルは早い者勝ちだからな!

 先駆者利益だよ君、はっはっはっ! 『マイニングラフ』の時代からやってる俺に勝てるやつはそういない!

「すごーい! バチバチバチバチバチ!」


 アイテム登録の問題は命名。完全早い者勝ち。

 ……とか、『今できないこと』を考えても仕方ないな。ただ、「新種」をAIが判定すれば即座にゲームに反映される。それはアイテムブロックだけじゃない。

 『繁殖』できるものもたくさんある。馬とか豚とか、花とか野菜とか果物とか木とか。そこらへんはゲームの中で掛け合わせて、ランダムに新種が生まれるようになってる。ただ「リアル」ではないので、『プレイヤーが関わっていないアイテム』は進化しない。プレイヤーが訪れたことのない山の中の自然交配で新種が生まれることはないのだ。だから、プラントハンターとかは無意味。

 俺はその「新種」を2つ発見したので殿堂入りになった。早送りの時間でやったからできたことだ。これも先駆者利益だな。

 そのあとはノーマル時間でないと、新種が発生しないアルゴリズムに変えられたと聞いたな。公式発表はされてないから、知らないやつが早送りでトライし続けてるらしい。


 ともかく、「土はそのうちなくなる」可能性がある。




 ◆――AI副官ログ(AI LOG)――


[T+4125sec] 【AI副官デリミタ子】

 ──長期環境変動:土層3→0の消失リスクを検出。拠点移転/土壌保全の中長期計画が必須。

 ──時空加速運用:『早送り』は新種出現率↑だが、現仕様ではノーマル時間制限の可能性。検証には実時間観測が必要。

 ──創作経済:ユーザー生成アイテムの承認即時化により、装備/家具/機構の更新速度が上昇。命名権は完全先着。

 ──推奨対策:①斜面の段畑化(テラス化)②堆積捕捉堰/沈砂池③腐植物質の回収→堆肥化→『土ブロック生成』④種子バンク(苗/挿し木)⑤拠点のバイオーム縁辺部へのサテライト化。




 ◆――AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)――


 1. 「『土は資源』が今日いちばん刺さった」

 2. 「The Parsons接続、創作勢の天国だな」

 3. 「座れるゴミ箱、12色展開は草」

 4. 「新種2つで殿堂入り、やっぱ先駆者つよい」

 5. 「拠点、砂漠化ラインより風上に置こうぜ」



長期戦の鍵はインフラと命名。

次回は〈土壌保全ギミック〉を実装して、拠点の100年計画を引く。

創る、守る、残す――その全部が『生き延びる』のうち。

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