スローライフでも落下死は来る
水に落ちれば生き残れる――その常識が揺らぐ回。
痛覚アドオンと現実味エンジンが、ゲームの『抜け道』を一つずつ封じていく。だからこそ、検証が武器になる。
――アクアランディングと痛覚アドオンのあいだで――
スローライフやるつもりでも、ゾンビは来る。もちろん、「敵なし」モードにすることも可能。そうなると、事故でしか死なないけど、案外滑落死が多い。3ブロックの高さから飛び降りると、体力が1減る。リアルだと、3メートルから飛び降りるようなものだから当然だ。
ただ、どんな高さから落ちても、「着地地点が水場」なら、無傷。これが『マイピ』ルール。天国から飛び降りても下が海なら無傷! 地上65,533メートルから飛び降りても無傷!
だから、バケツに水を持って歩いて、先に水をこぼしてから、その水に向かって高所から飛び降りた瞬間、水をこぼしたところを空のバケツで掬うと水を回収できるので、滝が終了する。でも「こぼした水」は下にあるから、水場着地ができるし、水の発生地点を消去しているから、滝はなくなる。降りた時に水を掬わないと延々と滝がそこにある。困らないなら放置でもいいけど。掬っていくと水を回収できるから、ベテランなら掬ってから落ちる。これが『マイピ』常識。
これも海に飛び込んだのと同じ。200ブロックから落ちても無傷。これを『水着地』と呼ぶ。「アクアランディング」とか「H2Oダイブ」みたいなかっこいい名前をつけるやつもいるけど、俺は効率重視で『水着地』だ。
『水着地』すれば高所作業も怖くない! だから高所で作業する時は、落ちそうな下に水をまいておくと滑落死が防げる。
――普段の『マイピ』、なら。
右手がじくりと痛んだ。
昼間、木の幹を殴った拳がまだ痛い。
VRゲームの中では、痛みなんて感じないはずなのに。
この「痛い」のが、医療アドオンを入れたからなのか、『KIWAMI』の新機能なのか、全く別の原因なのか。それが特定できないんだよな。
医療アドオンでも痛みを感じるとは書いてあったんだけど。こんなに痛いかなぁ?
つまりは、ゲームの時には普通にできたことも、今は、できないかもしれない。
ゲームでは当然だったことも、今は無理かもしれない。なぜならさっき、斜面でころんだ時、斜面の土が削れたから。
ブロックで出来てるはずの『マイピ』の世界で「土が削れた」って、ありえないことだ。
あれは「掘る」ような動作ではなかった。でも、削れたんだ。
でも、スコップで掘るとブロック状に立方体の穴があくし、「土ブロック」が入手できる。やっぱりボクセルの世界ではあるんだよな。
だから「掘れる」なら「一ブロック掘る」になるんだよ。
でも、ブロックの一部だけが砕けたんだ。『リアリティ(現実味を出す機能)』のせいかもしれないけど……
◆――AI副官ログ(AI LOG)――
[T+3920sec] 【AI副官デリミタ子】
──落下判定:従来ルール「水着地=無傷」は一時仮採用。現環境は医療アドオン+KIWAMI現実化モジュール併用のため、例外発生リスクあり。
──症状ログ:右手痛覚シグナル継続。外傷由来(殴打)+感覚強調設定の可能性。軽度機能低下を推定。
──地形ログ:斜面『微細欠損』を検出。ボクセル外形にサブサーフェス破砕エフェクトが重畳中。
──推奨テスト:①高さ5→10→20ブロックの段階水着地試験、②痛覚閾値の設定確認、③落下前の『水撒き→回収』動作の遅延計測。
──当面運用:高所作業域の事前散水、着地予備水×2、救急(包帯/鎮痛)を常備。
◆――AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)――
1. 「『普段のマイピなら』の一言が怖い」
2. 「水着地の再検証、低高度からやるの大事」
3. 「斜面の土が『削れる』の、仕様かホラーか」
4. 「痛覚アドオン、没入感は上がるけど寿命は縮むやつ」
5. 「バケツ2本持ち運用、今日から真似する」
あとからみた悟からのコメント返し。
「いつもコメントありがとうな! 当時読めなくて残念だった! そして、5番、そう思うだろ? でも違うんだ。一つの水入りバケツで水を設置したらそのバケツがカラになるだろ? そのカラになったバケツで水を掬って落ちるんだ。だから、水バケツは一個だけでいい。enjoy!」
「いつもの技」が『いまの世界』で通じるか、必ず確かめる。
次は落下検証と、右手の応急処置(包帯・固定・鎮痛)。
水で生きるか、設定で死ぬか。検証回、やります。




