表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サバイバルゲームで一括破壊したら惑星がひれ伏しました。  作者: 設楽七央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/59

《資料》『戦場で死ぬ前に瞑想しろ』抜粋

『戦場で死ぬ前に瞑想しろ』



目次


第0章 はじめに

 あなたはまだ死んでいない。ただ、その確率は高い。

 瞑想とは何か

 息を整える前に必要なのは、状況を認める勇気

 感情を処理することが、生存率を上げる鍵になる


第1章 呼吸とは、命令の始まりである

 戦場において、吸うことと吐くことは戦術である

 呼吸は意思の操作プロトコルと定義せよ

 四秒吸って、七秒止めて、八秒で殺す──四七八式

 心拍の制御と照準安定の連動メカニズム


第2章 敵より先に自分を静めろ

 怒りは、殺す理由になっても、生き残る理由にはならない

 戦闘直前に必要なパニック遮断技術

 感情は後、まずは手順

 三秒間の判断バッファ──瞑想秒の導入


第3章 ノイズの中で沈黙せよ

 爆発音よりも心音が響くようになるまで、黙れ

 外音の遮断と、視界・聴覚の切り分け

 肩を下げて脇を締める──瞑想遮音のポーズ

 呼吸による遮蔽強化の訓練


第4章 死ぬときに後悔しないために

 言葉より、整えた呼吸が多くを残す

 呼吸が遺言になるというケース

 最期の十秒で、何を思わずに死ねるか

 無念を残すな。酸素と共に吐き出せ


第5章 瞑想は武装である

 無意識に殺されるな。意識を持って生き残れ

 瞑想を戦術スキルとして再定義する

 味方に冷静を伝える──呼吸連動による指示

 集団での瞑想バフと、部隊強化演習


第6章 訓練せよ。何もない時にこそ

 平和な時の呼吸が、戦場の勝敗を決める

 日常に潜む戦場の予兆

 呼吸訓練チェックリスト(朝、交渉中、撃たれる前)

 瞑想を生活に組み込む、アレキ式週間ルーチン


終章 無呼吸の死を恐れるな

 最後の一息で、指を引け

 死の直前、意志だけを残す瞑想

 死を選ぶ瞬間のための精神戦略

 自分で終わらせろ。それが兵士だ


特別付録 知識と技術の整理

 瞑想式戦術リスト──行動の前に呼吸命令を出す

 心拍から感情を読む、部下の管理法

 AIとの連携──AI補正による呼吸波プログラムの概要



第2章 敵より先に自分を静めろ

――米陸軍証左 アレキサンダー・シュトラウス


 「怒りは、殺す理由になっても、生き残る理由にはならない」。

 これは私が新兵に最初に叩き込む一句だ。荒野であれ都市崩壊後の瓦礫であれ、敵は外よりも内にいる。鼓動が速まった瞬間、視界は狭まり、聴覚は歪む。思考は叫び声に呑まれ、判断の刃は錆びる。だから私は、まず自分を止める技術を教える。


 方法は単純だ。右手でも左手でもいい、利き手の親指と人差し指で脈を取りながら、ゆっくり数える。

 一、一秒で吸う。

 二、もう一秒で止める。

 三、さらに一秒で吐く。

 たった三秒、私はこれを『瞑想秒』と呼ぶ。脈拍が指先で一度打つたびに、一呼吸を完了させる。それだけで交感神経は沈静化し、視野が再び開く。


 誤解してはならない。感情を捨てろと言っているのではない。怒りも恐怖も、正しい場所に収納すれば武器になる。ただし収納の前に、まずは封をする必要がある。封をする時間こそが三秒だ。人は三秒で銃も抜けないし、刃も振り下ろせない。だが三秒で自分の心は握り潰せる。


 私がイラクで墜落ヘリから這い出した夜、周囲は焼夷弾の光で昼間のようだった。負傷兵の悲鳴が渦を巻き、脳は逃走を命じた。しかし胸骨の下で跳ねる鼓動を指で掴み、三秒を数えた瞬間、私は足を止めた。視界の端に火点が五つ、味方と敵の動線が重なる地点が二つ、風向と煙の流れが一息で読めた。結果として、私は七名を抱え、十五分後に全員で脱出路を確保した。


 戦場だけではない。飢えと乾きで極限に追い込まれたサバイバルでも同じだ。川の轟音に飲まれて渡河の判断を誤るな。野盗の足音に怯えて洞窟へ逃げ込み、出口を見失うな。怒りや恐怖に捕まる前に、自分を捕まえろ。


 手順は繰り返す。

 一 脈を指で挟め。

 二 三秒、呼吸を刻め。

 三 視界が戻ったら、次にやるべき手順を口に出せ。声は小さくていい、聴覚に自分の命令を届けるためだ。


 感情は後。まずは手順。

 この原則を守れる者だけが、ヒトではなく『兵士』として最後まで立っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ