スタック限界と伐採半径:資源管理の臨界点
2400本の松明を作り、倉庫を積み、火床を起動した。
だが、安心は得られない。『ログアウトできない』――ただ一点のせいで。
過剰な火力、増えるチェスト、溢れる実績と通知。
この静かな拠点には、静かに進行するパニックがある。
■副題:伐採が霧を裂き、未知が箱を開く――
ドアの飾り窓をかすめて、ジャングルのカラフルなインコが飛び去った。鳥は何種類かいるけど、食えないし使えないから全然覚えていない。俺はコレクション欲がないからな。
初めてアドオン無し・チート無しで『マイニングラフ』をプレイした時、公式実績をすべて取得した。そのついでに全アイテムも制覇した。ただ『マイピ』では無理だ。AI管理が入ってユーザーの新アイテムが毎日公式化されるから……いや、そのAI導入寸前、まだアイテムが少なかった頃に完全制覇は一度済ませた。だから『マイピ』でも「第一次公式実績達成者」のバッジは持っている。「第一次」だ。わかるな?
AIが入ってアイテムが増え始めてからが第二次。そこからは俺もコンプリートを諦めた。ここらへんは国が安泰になってから必要になってくるので後で説明する。
まだ外は明るい。朝を素早く知ることは、ベッドマットや枕が無い時の必須事項だ。念のためもう一度「アイテム収集」を実行したら、また俺が埋もれた。チェストを追加するしかない。
チェスト一つで32スタック、二つ繋げたミディアムチェストで64スタック、三つ繋げたビッグチェストで128スタック収納できる。ビッグチェスト三つを束ねれば『ラック』となり、512スタックを飲み込む。だからベテランが言う「チェスト」はビッグチェストのことだ。
1スタックはゲーム開始時32個。ビッグチェスト一つで4096個収納できる……はずなのに、それを三つ作っても丸太が余る。スタック容量は時代と技術で増え、『未来時代』には数千個になる。だが今は32しかないので圧倒的に足りない!
洞窟の外へ出て左の森を――いや、もう森だった場所を見て凍った。パンダの向こう、真正面の森まで消え、草原が広がっている。しかもなお「あの地点」へ向かって伐採アイテムが降ってくる。
「伐採モードの最大範囲、半径100ブロック以上だと!?」
伐採すれば霧も晴れるらしい。山の向こうまで視界が開けている! ワッショイ!
伐採の意味は三つ以上。
①資材確保 ②開拓 ③敵資材の削減 ④暇つぶし。
俺が丸太を伐採すれば敵は利用できない。遠回しに敵の弱体化だ。掘削も同じ。先に掘れば敵の手に渡らない。ハード以上では「早く迅く」が生存条件となる。
樹木は何にでも必要だ。道具の柄、薪、松明、家具、塀、建材、燃料。樹木を奪われた国家は焚き火も出来ず、修理も建築も不可能になり、モンスターに蹂躙される。農民は餓死し、軍事職は略奪に走る。国主アレキサンダーはよくこれで国を滅ぼされてた。奴は内政が下手だからな。
『伐採』――たかが二文字ができないだけで国滅ぶゲーム。
だから森は見つけ次第伐採、塀を外へ拡張し、内側で植林し再伐採。これが最適ルーチンだ。『マイピ』ならNPC専門家で自動化できる。伐採家、植林家、養蜂家、拡張家……NPCが使える物はプレイヤーも使えるのだ。『マイニングラフ』のときは「村人式農業」とかあったが、それが専門的に拡大したというわけだな。楽しい! NPC大好き!
ただ『カオス御技』はボッチプレイ専用で第一次産業以外の専門家をほぼ使えない。だからドローンによる工業化が必要だが、そのためには電力が必要で――と、悩みは尽きない。
そして問題。インベントリに見慣れない『タブ』がある。
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■AI副官ログ(AI LOG)――
\[T+808 sec] 【AI副官デリミタ子】
──伐採モード:半径約110ブロックを確認。
──森林消失率:46 %(周辺3チャンク換算)。
──視界霧クリア:+3チャンク拡張。
──インベントリ新タブ〈Pandora?〉検出、属性:UNKNOWN。解析進行率 12 %。
──危険度:敵対モブ反応なし、環境変化のみ。
■AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)――
1. 「森、更地になってて草原。」
2. 「未知タブはもうフラグ確定。」
3. 「パンダの家どこ行った!?」
4. 「伐採=国防、覚えました。」
5. 「デリミタ子の解析ログはよ!」
「《デリミタ子》パンダの家は消えたのでパンダも消えました。残念。
まだ王はあのパンダを撫でてらっしゃいませんでした」
大伐採で露わになった『未知のタブ』――中に潜むのは福音か、それとも更なるカオスか。次回、デリミタ子が Pandora の蓋を開ける。君たちの考察と装備案、待っている!




