火床起動:2400の松明と、静かなる怒号
2400本の松明を作り、倉庫を積み、火床を起動した。
だが、安心は得られない。『ログアウトできない』ただ一点のせいで。
過剰な火力、増えるチェスト、溢れる実績と通知。
この静かな拠点には、静かに進行するパニックがある。
■副題:燃やせ、全てを。燃え残るのは、心の中の『ログアウト不能』だけ。
一括破壊オフ。入口左に作業台を設置。床に湧き潰しの松明を設置。作れるだけチェストを作って積み上げて、そこにみかんとかを移動。
初めてチェストを作りました~、初めてチェストにアイテムを入れました~、とか、もう無視な。
さっき石を掘った岩からできた『砕石』ブロック12個を作業台で『大かまど』に成形。
四✕四の作業台にこうならべる。
石石石石
石 石
石石石石
石 石
チェストの5つ横のブロックにカマドを設置。カマドのインベントリを開き、上に丸太、燃料庫である下に「樺の木の苗木」を1スタックずつ入れる。松明で火をつけると燃料が燃え始めた!
「よしよしっ! 順調順調!」
『アイテム収集』アドオン実行。どさっと丸太系が……予想以上に収集できて俺のインベントリを埋め尽くしたし俺も埋めた。実績メッセもめっちゃ流れてる。そうか。さっき伐採した時に一気に流れたから見えなかっただけなんだな。
そこから2歩下がって、俺のインベントリから『棒』以外を外に投げる。
全部の棒を手に持って、洞窟の外へ! 先程の溶岩で全部火をつけて松明にする。2400本の松明完成!
[溶岩で松明を1000本作成! 着火速度上昇!]
「おっ! やっぱり『溶岩で火を付ける』には上があると思った」
もう、松明があるんだから、そこから火をもらうことはできたんだけどさ。確認してよかった!
「重ねてヤルことで効率化するのか。着火速度上昇はいいな。火がないときに一分ぐらい格闘しなくてすむ」
そう言えば、そういう記事、読んだことあったな。特定のことをすることで 特殊なスキルを入手できるって。
例えばこんな行動で特殊スキルが入手できる。
「特定の行動」→ 入手できるスキル。
「森の一員」 → 1週間、森で過ごす 森林バイオーム内の移動速度+5%。
「砂漠の影」 → 3日間、砂漠で生存 暑さ耐性UP、スタミナ消費-10%。
「山の覇者」 → 山頂で1日過ごす 落下ダメージ-5%、登山速度+10%。
「水辺の民」 → 10回以上川や湖で寝る 水辺の食料採取効率+15%。
とかとか、そんなのあったな。さっきの、「松明千本」とかも一万本、10万本、と桁が上がるごとに能力アップするから、数年やってると、アドオン入れたぐらいの威力になるとか聞いたことがある。
でも、最初からアドオン入れてりゃいーじゃない? ってその時の俺は思ったんだよな。今は多分、かなり助かるんだろう。ありがとうございます! 合掌!
確か、そういうのの中の変なので、「アリの群れを観察する」とかあったよな? 「昆虫食ができる」って。モンスターの中でもうざいだけの『蜘蛛』を倒したら「蜘蛛の肉」をドロップするらしい。ほかも虫を倒すとその虫の肉が手に入る。『蜘蛛の肉』は実験モード以外で見たことないな。ああそうか、バニラにしかないアイテムってのがあったんだな。俺は建築に興味がないので、建築アイテムとか集める気がないから「アイテムコンプリート」に興味がないんだ。染料とかホント興味ないし。
アドオンいれてりゃ、すぐに『牛のステーキ』しか食べなくなるから、昆虫食とかどうでも良かったもんな。
一人でスローライフしていると「どうやってアイテム種類を少なくするか?」も必要になる。
1 だってアイテムが増えたらチェストを増やさないといけない。
2 チェストが増えたらアイテムがどこにあるのかわからない。
3 アイテムがどこにあるかわからないから、また新たにチェストを作る。
こういうループが発生する。工業で収納系ブロックを作るとそういう悩みは一掃されるけど、作るコストが高い! 電力のランニングコストも高い!
アドオンも入れてるのにバニラの実績も取得できるとか、今回お得では?
………………ログアウトできないという最大の短所があるだろうが!
いや、いいよ。お得だと思っておこう! なんでも気の持ちよう! 明るく行こうぜ! 考えたあとは明るくいく!
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■AI副官ログ(AI LOG)
[T+4,520sec] 【AI副官デリミタ子】
──火力装置:『大かまど』稼働開始/燃料:樺の苗木 → 加熱安定。
──王の行動:2400本の松明クラフト達成 → 着火速度:Δ+200%(累積スキル付与)
──AI収集アドオン:収集アイテム圧縮完了。王のインベントリ=飽和警報Δ+89%。
──スキル体系:環境適応型称号パッシブ表示中(例:森/水辺/山岳/昆虫観察)
──精神出力:「アドオンもバニラも両取り! だがログアウト不能!」
■AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)
「2400本作ったの笑うけど、『着火速度UP』が地味に強くて草」
「『森の一員』とかパッシブスキル講座ありがたすぎて感謝」
「虫肉とか蜘蛛の肉とか、ホラー飯すぎてバニラ嫌いになるw」
「『ログアウトできないという最大の短所』の一文、笑って泣けた」
「チェスト増加→混乱→チェスト増加のループ、リアル過ぎて胃が痛い」
炎は手に入った。アイテムも揃った。拠点も整ってきた。
だがそれで『帰れる』わけじゃない。ログアウトは、まだどこにもない。
嫌になるくらい便利で、嫌になるほど快適なこの世界。
気づけば、抜け出す『意志』のほうが希薄になってきたかもしれない。
次回、
『疑似永住:この拠点に、名前を与えてしまった時』
「帰れない」ではなく「帰らない」に変わる瞬間が、そこにある。




