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この世界、5分で腐る(※アイテムが)

炎は、文明の始まりである。

だが、火を見つけた瞬間、王が感じたのは『歓喜』ではなく『疑念』だった。


なぜ実績が開放されたのか?

なぜアドオン環境下で動作したのか?


その小さな炎は、王に『旧バニラの影』を見せる──

そして、拠点への道が、闇を裂いて開く。

■副題:松明、それは滅びかけた文明の第一火。王、火を見つけた。


 霧の上でも太陽は見えるから、中天になる前に一度、『アイテム収集アドオン』を使えば、あの山の上に溜まっていくアイテムを収集できるので問題ない。

 

「もう一度アイテム収集アドオンを使う前にチェストを作ってしまわないと、今、俺のインベントリに入っているものをカラにできない。チェストに入れたアイテムは消えないが、外に出すだけだと五分で腐りだすからだ! ブロックとかは「配置」すれば五分経っても腐らないが、「配置できないアイテム」はチェストにしまう必要がある。食べ物とか、持ち物とかな。

 そして、チェストを作るなら拠点を作らないといけない。実験モードとか、訓練モードとか、安全なら野ざらしでもいいけど、今は無理。チェストのものを俺が出し入れするときに俺が安全じゃないといけないからな!」

 パンダを通り過ぎて、霧の壁の前で立ち止まる。眼の前の霧に少しずつ足を進めた。

 振り返ると、パンダがかろうじて、かき分けた霧の向こうに見える。うまそうに竹食ってる。あの、座ってる姿がかわいいと女子に人気だったな。

「はぁ……俺も竹食ってごろごろして寝返り打っただけでかわいーっ! って褒められたい……」

 怠け者の夢だよな、ホント。猫とかさ。なんなの、あのカワイイだけの動物! 俺が獣アルレギーじゃなければ100匹飼うのに!

 今のパンダだけ見るとカワイイだけだけど、人間が見つけなければパンダはひっそり絶滅していた可能性が高かったってんだから、そんなに羨ましい生活でもないんだろうな。クマのくせに草食動物ってかなり度胸がいった選択肢だろうし。人間が草食になるのは肉が食えないときだ。パンダも、「肉を追いかける」のをやめたんだろう。「まわりにこんなに竹があるんだから、竹食べて生きていけるように内臓変えようぜ!」って誰かが始めて、そいつらが生き残ったんだよな。獲物を追いかけていたコイツラの仲間は、絶滅したんだ。

 俺、いつも思うんだけどさ、牛ってなんで草だけ食ってあんな巨体なの? シロナガスクジラはわかるよ。だってミジンコって動物だもの。甲殻類だもの。アミノ酸たくさんあるよ。でも、草だぞ? セルロースからなんでタンパク質合成できるんだよ。なんであんな巨体になれるの?

 『マイピ』の工業MODでも「草から肉作る」なんて、昔はなかったよ! 今は大豆たんぱく肉とか、昆虫食ってのがあるからな……

 

 俺のインベントリを開いて……なんか変な部分に気づいたけど、後で調査!

 「追加調査、インベントリの変なのの確認」をメモして今の作業に集中する。

  

 棒を手に持って、パンダから5ブロック北に、足元確認しながらそろそろと移動。5ブロックとは言え、天まで霧があるから、「細い道」になってしまっている。ここらへん見晴らしいいのになぁ。「黒部ダムの雪の大道」みたいだ。なんか考えてないと閉所嫌悪症で発狂しそうになる。

 向こうの足元がオレンジに光った。やった!

 公式『公式竹藪マップ』だと、ここに溶岩があるんだよ!

 オレンジの際に立ったら、向こうに溶岩ブロックが3個並んでた!

 溶岩に棒をかざすと松明になる!

 『マイピ』の松明は、一度付くと消えない不思議松明。棒を溶岩にかざして、延々と、手持ちの『棒』を『松明』に変換していく。

[火を見つけた! 料理・溶鉱炉が解放]

 ゲームエフェクトの『実績』が読み上げられた。

 え? それってバニラ(アドオンなし初期設定だけのゲーム)だけじゃなかったのか? しかも、それなら、「伐採したときのメッセ」はどうした? 他のことに気を取られて気づかなかっただけかな? それに、アドオンを入れていると実績は取れないはず……

「あれ? なら、問題じゃないか? 実績をとらないと、次の技術が開放されないんじゃなかったか?」

 『バニラの実績』ってそういうのじゃなかったか? バニラやってたの、大昔だからな……いや、とにかく、先に進めよう。

「タスク2、火の入手! 達成!

 次は……タスク3、拠点として洞窟を掘る! そのサブタスクとして、道具を作る!」



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■AI副官ログ(AI LOG)

[T+2,940sec] 【AI副官デリミタ子】

──王、火の源《溶岩ブロックx3》発見。炎照射による松明生成:Δ+43本。

──新実績解放:料理・溶鉱炉系統/記録形式:旧バニラ準拠(※想定外挙動)

──ステータス懸念:実績ロック状態。アドオン併用時に発生する技術遮断の可能性あり。

──情緒反応:動物哲学処理ログ活性化中。「パンダかわいい」「牛巨大」「セルロース疑義」

──注記:閉所嫌悪兆候あり、経路演算ルーチンに冗長回避コード推奨。


■AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)

「『棒を溶岩にかざして松明に』って超プリミティブな火の儀式で笑った」


「パンダに嫉妬してるの可愛すぎる。竹食べて褒められたい王w」


「SDGsから栄養吸収効率の理論飛ばしてシロナガスクジラに着地するの天才」


「『アイテムは5分で腐る』→『だから収納を』ってロジックの緊迫感がクセになる」


「黒部ダムの雪道表現めっちゃわかる。ゲーム空間に心理描写重ねるの巧みすぎ」




火を見つけるって、RPGだとイベント扱いだけど、

サバイバルだと『本当に生き残れるか』の分岐点なんだよな。


俺にとって、あの松明はただの道具じゃない。

『死なずに動ける猶予10分』を照らす命綱だった。


次回、

『洞窟を穿て:《即位壕》本格構築フェーズ、土と岩と凍て霧の奥へ』

拠点は『居場所』ではない。『迎撃地点』だ。



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