逃げ場は1406メートル先、つまり無理
一振りの伐採が、死地を神域へと変えることがある。
座標もマップもない中で、
王はただ「記憶の地形」と「連鎖する知識」だけを武器に、
自らの位置を確定させ、拠点構築を開始する。
これは、『目で見る』のではなく、『知っている』ことで勝つ戦い。
一括破壊アドオン、それは知の刃。
■副題:一振りの斧が、霧を裂き、地形を明かす。これは『知識』という武器の戦だ。
「まずは、今晩を生き残る! そのために拠点を作る! そのためにまず伐採をする!」
一括破壊アドオンのステイタスを開いた。『一括破壊』をオンにして、「深さゼロ、前後左右最大範囲で『連続全破壊(破壊。連続した同じブロックだけを破壊する。「全」がつくと、厳密には連続していない飛び地も破壊する)』」に設定。パンダの下の腐葉土に向かって手を振り下ろす。
一括破壊の効果で、辺り一帯の『腐葉土』が一括で削られた。その腐葉土に自生していた竹が一斉に散乱して降り注ぐ。そのエフェクトで、辺りの霧が一気に晴れた!
『マイピ』の植物の中で竹だけが、根本を伐採すると上まで全部破壊されて降ってくるのだっ! 竹を何だと思っているのかと聞きたいが、今はどうでもいい。
向こう30ブロックほど霧が晴れた!
「『KIWAMIの霧』の効率の良い外し方」第一弾! 上手く決まった!」
パンダが居たのはラッキーだった。こいつらはそう簡単にウロウロしない。座標がわからない今、起点になってくれる!
「動くなよ! そこを動くなよ!」
言葉の通じないパンダを指さして、両手を合わせて言い含める……なーんて演技はするけど、霧が開けている角に居るから、パンダがいなくなっても、今は間違えようが無い。
バンダの後ろと左向こうが綺麗に霧の壁が残ってる。パンダの後ろは普通の土で、パンダの左は岩だった。向こうは岩礁地帯かもしれない。『腐葉土』を一括破壊したので、土とか岩は対象外の設定にしたからな。
「ともかく、! 圧迫感がなくなった! やっと、息ができた、感じ!」
パンダの右手側の向こう。竹藪の向こうがなだらかな丘。頂上あたりから、ジャングル温帯混成の深い森! 右側が、少し盆地で、向こうに小高い丘。左の端っこに岩が見えてる。最初に見えていた地点より後ろは岩礁だったので、「泥炭」しか破壊していない今は霧が晴れてない。けど、一歩踏み込んでみたら、左奥と同じ岩礁だ。
この風景は、あれじゃないか? 公式テンプレの「竹藪」だろう!
『マイピ』は「初期設定が面倒くさいゲーム」でもあるので、初心者用にテンプレがいくつか設定されている。「公式テンプレマップ」というものだ。その中の一つに「竹藪マップ」がある。
公式竹藪なら、左の岩礁の向こうは霧で見えないけど海、後ろは岩礁のはず! その岩礁には、『冒険家』に頼んで作ってもらわないと発見できない宝箱がある! ともかく、前の丘へ走る!
上がった左に、ジャングルの木が魔法陣みたいに弧を描いて生えてて、中心の木にカカオがびっしり! ソレを取るのが苦労するぐらい竹が密集。
よし、角度も「いつもの竹藪」だ。公式テンプレの竹藪と同じだ! 座標は出てないが、これなら大体の建築などの座標を覚えてる!
このマップは直近の村までが遠い! なんと1406ブロック。一ブロック約一メートル。
塀のあるNPCの村まで一キロ半だ。入るには土産か交渉が必要で、時間がかかる。村に入れれば『今晩は安心』だが、そこから村人のお願いを聞いて回るRPGプレイが始まるんだ。その間に『軍事御技』系の国主に見つかったら終わりだ。たとえば『国主アレキサンダー』。あいつは弓兵5人でも宣戦布告してくる。そうなったら村は3日で壊滅だ! そんな村に一日かけて走ってる場合ではない!
ちなみに、一日は午前10分、午後10分、黄昏時が朝晩二分ずつの合計24分。一キロ走るには三分かかる。交渉に三分。村長との会話に10分。もう夜だ。無理!
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■AI副官ログ(AI LOG)
\[T+1,822sec] 【AI副官デリミタ子】
前回、コメントに不穏当な発言を抜粋いたしましたこと、お詫び申し上げます。
──王の一括破壊アドオン:効果成功。腐葉土破壊→竹連鎖崩壊→視界拡張Δ+31ブロック。
──マップ一致率:87%。公式テンプレマップ《竹藪》との一致を推定。
──注記:村までの距離1,406ブロック。移動所要時間:見込み21分。戦略的撤退推奨。
──コメント感情タグ:【爽快】【孤独】【冷静判断】【生存戦術】
■AI副官が用意したコメント欄(ECHO-WALL)
* 「『竹が降ると霧が晴れる』ってエフェクト演出、天才のそれ」
* 「テンプレマップ竹藪ってワードがもう懐かしくて泣きそう」
* 「1400ブロック離れた村に逃げようとして即断念する冷静さが逆に王感」
* 「『一括破壊で深さゼロ』とか職人設定すぎて真似できんw」
* 「国主アレキサンダーに見つかったら終わりは草。軍事御技って響き強すぎ」
このゲーム、『地理を覚えてるか』が命綱ってなんだよ。
地形記憶力で死線を超えるって、リアル脳味噌フル稼働。
一振りの竹伐採で霧が開く瞬間、
ここが『終わりの始まり』じゃなくて、『始まりの生存』なんだと確信した。
次回、
『拠点0号《崩土式斜壕》:地形を削りし者、死線に火を点す』
王、初拠点に挑む。敵は夜だけじゃない。