大佐からの質問
★現在地:思考再起動/外界観測と内省
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……ははははっ…………」
こんな事態にゲームなんかして、とか、大佐は一言も書いてなかった。
俺が大佐の立場なら、俺の体を蹴っ飛ばして海に捨てる。
まぁ、しれっと「PCハックした」って言ってたけど、ベルストホテルのサーバーを借りてたし、そのホテルは大佐が作ったものだし、コンピュータも大佐の管理下だろうから、当然のことだな。
そもそもが、手当たり次第、俺のことを救おうと頑張ってくれたから、そこまですることになったんだろう。
感謝します。ありがとうございます。合掌。
「あ、そうだ、返信しとこう……ナニ書こうかな」
大佐は『王国』を俺が作ったと知ってるのに、「生き残りが大変」と書いてた。『KIWAMI』だろうって。つまりは、俺の部屋のコンピュータで、このゲーム内容がモニタに映ってるってことか。サーバーから推測したからわかることでもあるけど……「今、王国にいない」ことがわかってるんだ。あのトンボのあと、部屋の配線は無事なんだな。それとも地球サーバーの何かで見られるのだろうか。
★現在地:通信再開/技術的仮説の提示
また、大佐からメールが来た。
『質問1。USアレキサンダーでステイタスボードを見ただろう。あれがゲーム内でも表示されているのではないか。だから、メールが読めるのだろう。君のワークステーションをスキルで取得したから、USアレキサンダーの中でこのゲームにログインできたのだよな。君のモードはスマホでは起動しないはずだ。
質問2。ゲーム内でワークステーションをスキルで出せないか。ならば、VRではなく、コンピュータからゲームを操作してログアウトができるのでは。
質問3。普通のマイピと今のマイピで、画面など、違うものがあれば教えてほしい。
質問4。クランのアイテムボックスにアクセスできるか。
質問5。それらの飲食物を食べることができるか。アイテムボックスの服を着ることが出来るか。
質問6。ゲームのアイテムをリアルに持ち出せるか。私の部下の第35クランの倉庫に君がアイテムを入れると、私と君しか見えないように隠蔽を施した。麦やパン、みかん、丸石などを入れてみてくれ。
以上、質問六種。君の命が安全な時に、よければ確認してほしい。発信、アレキサンダー・シュトラウス海軍少将』
「……コンピュータモードでマイピを見る? それは考えたことなかったわー。すげーこと考えるな。頭いい人ってやっぱすげー……」
いつもなら、真っ先に俺も思いついていそうなことなのに、そんな発想がまったく出てこなかった。
地球の騒ぎで疲れすぎて、頭がボケてるんだろうか。
それはまずい。気を引き締めよう。
★現在地:疲労評価/時間感覚の乖離
さすがに、三ヶ月連勤明けでろくに寝てない状態でゲームして、レモンのバカに圧迫かけられたあとに、トンボでパルクールして、空母で同室者八十八%即死案件を生き残った時点で、もう脳みそ九割ダウンしてるよな。
これ、いつ回復するんだ。
三日爆睡でどうにかなるか。
普通なら一生トラウマになって生活保護案件だろ。
だがしかーし! この世界に生活保護はない!
地球のリアル三日って、こっちじゃ百八十日だぞ。俺なら太古から現代まで技術アップできる時間だ。それをのんびり寝て過ごすことはできない。死んでいいならできるけど、いやだろ。
★現在地:覚悟形成/生存条件の再定義
つまり、生き延びるためには、こっちの世界でも少なくとも三日ぐらいは徹夜必須。NPC国家の誰よりもトップに立たないと、攻め滅ぼされる。
そんな状況で、メールが来るとか、ステイタスボードが見られるとか、精査する余裕なんてあるわけがない。さっきまで、そんな暇はなかった。
今、このメールはステイタスボードを使ったメールだよな。つまり、このゲーム内でもステイタスボードは使える。
……それを、ようやく考え始められる段階に来た。
◆──AI副官ログ(AI LOG)──
【AI副官デリミタ子】
「《デリミタ子》王よ。
右目のカメラで地球にログが送信されていると少将がおっしゃっているのを忘れてらっしゃいます。
面白いので放置しましょう」




