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華麗なる円舞曲

 彼女と出会ったのは放課後の音楽室だった。教師から音楽室の鍵を借り、ピアノを弾いていると彼女がやってきた。

 素敵な音色だね、と小柄な君はそう言って微笑んだ。急に現れた人物に驚き、その表情に可愛らしさを覚え、そして遅れてピアノを褒められた照れがやってきて私の顔はまるで百面相のように切り替わっていただろう。


 それから彼女は放課後になると時々音楽室に足を運んできてくれた。彼女が来てくれる度に私はピアノを聴いてもらったり、他愛のない世間話に花を咲かせた。

 彼女は子猫のような人だった。小柄な身体で活発に動き回り、コロコロと変わる愛らしい表情に気まぐれな性格。子猫のようだね、と彼女に言えば、照れながらそんなに可愛くはないと思うけどな、と返された。元々猫好きだったのもあるのだろうか、そんな彼女と交流を続けるうちに段々と心惹かれていった。


 ある日、教師に今度開催される学生ピアノコンクールに出てみたらどうか、と誘われた。課題曲は無く自由な曲でエントリーが出来るらしい。それを聴いて迷いなく曲を選んでエントリーした。


 そして迎えた本番の日。明るく照らされた舞台の上で、観客席に向かって一礼をする。観客の中には彼女も居た。

 椅子に腰掛けると緊張をほぐすように静かに息を吐く。鍵盤に指を置くともう一度息を吐き、一拍置いて動き出した指先は軽やかな音を奏で始めた。


 ──ショパン ワルツ4番 ヘ長調 Op.34-3


 あぁ、君には気付かれているだろうか。この曲を、誰に向けて弾いているのかを。


 ──お題:子猫──

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