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また会いたいが言えなくて

「ねぇ、この漫画借りてもいい?」


 幼い頃から幼馴染の君に何度も言っていた言葉。私の親は厳しい人で漫画やゲームを買い与えてくれることはなかった。だけど、君はそんな私に色んな世界を見せてくれた。剣を持って勇気を奮い冒険をする物語、甘酸っぱく切ない恋をする物語、連続殺人事件の犯人を追う手に汗握る物語。


 色々な世界に触れて、私は成長してきた。そしてその傍にはいつも君が居た。だから、私は君のことが好きになった。

 だけど、幼馴染という安定した関係を崩すのが嫌で、一線を越えることはしなかった。


 ある日、君には彼女が出来た。私から見ても凄くお似合いのカップルだった。

 君の隣にいるのはずっと私だけだと思っていた。幼馴染という関係性に満足して、それより先に進もうとしなかった私が悪いのだけれど、どうして私じゃないのと醜い気持ちを吐露しそうになった。


 君は彼女が出来てからも、流石に頻度は減ったとは言え私と遊ぶことはやめなかった。彼女も私たちの関係はよく知っているようで文句を言うことはなかった。

 それが彼女に嫉妬の感情を向ける私には辛かった。むしろ彼と会わないでと言われた方が幾分か良かったと思える程の自己嫌悪に陥ったこともあった。


 そんな思いも露知らず、君は今日も私を家に招く。心の中はどうあれ、君と一緒に居られる時間は楽しいもので今日も私は君の家に上がる。いつまで家に誘ってくれるのか、いつか誘ってくれなくなるのなら、私から次の約束を取り付けようか。


 でも、直接また会いたいなんて絶対に言えなくて。だから借りた本を返すと言う口実を作って会えるようにしているだけ。借りた本の内容なんてほとんど頭に入ってなかった。


 あぁ、どうか、この気持ちが君にバレませんように。


 ──お題:また会いましょう──

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