淡路さん
プロローグ
全てを見透かしている様な透き通った目、整った鼻、動くことのない横一文字の口、肩のラインで綺麗に揃えられた髪、長く艶やかな指先、そして、そこから黒板に描かれた美しくそれでいて繊細な文字、淡路華凛
転校生の彼女のそれらに僕は釘付けになった。
一章 淡路さん
黒板に名前を書いてから無言のままこちら側を見る淡路さんと言うらしい転校生に僕たちみんな呆気にとられていた。
それは担任の先生も同じだった様だ。
慌てて担任の先生が
「今日からこの学校に転校してきた淡路華凛さんです。分からないことなど沢山あると思うので皆さん優しく教えてあげてくださーい。」
その言葉の後でペコリと淡路さんはこちらに一礼した。
目の鋭さとは裏腹に怖い人ではなさそうだ。
「淡路さんの席は、えー佐野くんの横の窓際の空いてる席でいい?」
担任の先生は淡路さんの方を向いて尋ねる
淡路さんは無言で頷く。
「じゃあ、佐野君よろしくねー」
なんて無責任な、という本音を抑えつつ、横の席に着く淡路さんに一礼し挨拶した。
「佐野拓真です。」
無言の間が少しあった。
僕もコミュニケーションは得意な方ではない。
気まずいと思った時、淡路さんはノートを取り出し何かを書き出した。
「(よろしくお願いします)」
簡素な文だが綺麗な字だと改めて思った。
そんなことよりだ、淡路さんは喋らない。
クラスに入室してから一言たりと音を発していない。
何か事情があるのだろうか。そう思うが詮索はしない。
そんなことを考えている内に授業が始まろうとしていた。
1時間目は国語だ。いつの間に国語の先生が来てたのだろうか。
慌てて授業の準備をしていると淡路さんが机を動かし、僕の机に引っ付けた。
そしてノートの端に
「(教科書見せてもらっていいですか)」
と書いて僕に見せてきた。
僕はいいよと言おうとしたが独り言を喋ってると思われたくないと思い無言で頷いた。
春先の淡い暖かな日差しが窓から差し込み、淡路さんの整った横顔を照らす。
その光景は現実味のない、まるで絵画のような美しさをしていた。
これは夢なのではないかと思う。
これまでの人生、色恋沙汰とは無縁の僕にはそう思えてならない。こんなアニメや漫画の様なかわいい転校生が隣の先に座る展開があるわけないと。
しかし同時にこうも思う。ついにきたのだと。
冴えない僕にも小さな春が来たんだと喜びを噛み締めていた時、不意に淡路さんと目があった。
見られていたことに少し戸惑った様子で首を傾げている。
「(なにか?)」
僕は首を横に振り
「(なにも)」
と書いてみせた。
淡路さんは少し微笑んで前を向く。
僕もそれを見て前を向いた。
月曜日の1時間目という憂鬱な始まりが少し氷解した様な気がした。
初めまして。椎名ゆずきです。
まずは初めての投稿の後書きまで見ていただきありがとうございます。
ずっと小説を書きたいと思っていたのですが、中々行動に移すのは難しいものですね。
小説家になろうは異世界者が多いイメージだったのでここに投稿するかどうかかなり迷いましたがあまり他のサイトも詳しくなかったので投稿することに決めました。
自分語りはこのくらいにして、第一話は全体を通していわゆるプロローグ的な側面を持っているので文字数が少なくしました。ここから増やす予定ではあるですがこのくらいの方が読みやすいという声があれば検討します。
このシリーズは日曜投稿にしていこうかなと思います。
他にも短編なども挙げていきたいと思いますのでよろしくお願いします。