神の如き強者(アザゼル)七
廉達はエレベーターで三階から一階まで移動の最中、廉だけは落ち着きが無かった。廉以外の三人は何度も、エレベーターを利用しているが、廉は違った。
移動手段が魔法のこの世界では転移魔法が移動の基本であり、エレベーターは旧時代の産物と言えるものである。
「結構揺れるな」
不安でな廉を見た朝香は初めて自身がエレベーターの乗った事を思い出す。
「最初は皆んなそんなものよ。⋯⋯慣れるわ」
「そんなものか」
「ええ、慣れるわ」
実際に慣れたからこそ言える言葉だろう。
エレベーターに乗っていた四人は一階に付くとその足で外へと出る。
「チーム[アブノーマル]はまだこの国に認められていない。だからこそ、まず私を除いて、十人は集めて貰う」
黒白院のこの話自体は廉も予想していたものである。
防衛局であらゆるチームが存在しているが、その全てが十人を超えるものだからこそ黒白院のその話はいずれされるものだと廉も感じていた。ただ、唯一予想していなかったのは、そこに黒白院は含まれないと言う事だった。
「あんたは入ってくれないのか?」
「あぁ、お荷物である私が皆に迷惑をかけるわけにはいかないからね」
理解し難いその言葉に廉は戸惑っていた。
黒白院家の人間は代々、日本の防衛局のトップに君臨する一族である。その力は日本の人間のみならず、世界中で知れ渡った事実である。だからこそ、黒白院が語った[お荷物]と言う言葉が廉には気がかりだった。
「お荷物?」
「あぁ、医者には余命一年と言われている。何よりも、全盛期の二十代の頃と比べても力の衰えを感じている。だからこそ、付いて行くのは今から行く沖縄までだ」
「沖縄?」
「予知がなされた。それも正確な予知だ。沖縄で管理する神が現れるそうだ。いつどこで何が起きるのかは全て予知はされているそうだが、我々に伝わる情報は沖縄に管理する神が現れると言うことのみ」
「何で情報が制限されている?」
「橘吉凶と私が対立している事が関係しているだろう」
廉は防衛局のトップが絡んでいる事から、廉は言葉を詰まらせる。日本の御三家の黒白院家から橘家へと入れ替わる日本を巻き込んだ抗争は管理する神が世界中を攻め込む前日から行われており、廉のみならず、日本中の人間なら誰もが知る事柄だったが、日本の御三家は黒白院家から橘家へと入れ替わった事実を廉が知ったのは、さっきまで居た部屋で知った事であり、どんな抗争が行われ、どんな内容だったのかまでは廉は知らない。