神の如き強者(アザゼル)五
戦闘経験が乏しく、人の強弱等見極める事等してこなかった廉だったが、本能で感じ取ってしまった。この鎧の男の強さを、鎧の男の凄みに当てられた廉は気付けば
「⋯⋯頼もしいねぇ」
そう発していた。
「さて、そろそろ移動してもらおう。転移魔法はここでは使えないから、外までは歩いて貰う」
黒白院のその言葉によって皆は部屋を後にする。
部屋を後にして、直ぐにスーツ姿のギャルが廉に接近する。
「一応、自己紹介。私は山田朝香⋯⋯元々は魔法をメインに使っていたけど、一瞬前に魔力が消失し、能力者となったわ。ちなみに、百花繚乱それが私の能力」
「あぁ、覚えておく」
廉のその返答に朝香は眉を歪ませ
「一応、私は君よりも三つ年上よ」
「って事は成人してるのか?」
「⋯⋯しているわ。もう、タメ口で構わないわ」
呆れた様にため息を溢すと、朝香は先頭を歩く黒白院の元へと駆け寄る。一人となった廉の隣には、鎧が擦れ合う音が鳴り響いていた。
「⋯⋯確か、頭が無くても聴覚は問題ないんだよな?」
「ええ、問題ありません」
廉は少し戸惑った。
鎧の男は自身の頭部を自身の空間内に所持しているのは先程の部屋で理解しているおり、周囲の音を問題ない無く把握していたが、自身の声を頭部を出せずと発しているこの状況は廉も予想していなかった。
「頭部は出さなくても、会話できるのか?」
「はい。向こうでの僕の肉声をこちらへと送っていますので」
「ややこしい身体だなぁ。一応、自己紹介を頼めるか?」
「はい。今後の事を考えてもそちらのほうが円滑に物事を進められるでしょう。僕は名はデュラーク・クラーク、イギリス人です。君たち二人と違って魔法は残しながらも、体内に神器を宿し、神器と魔法を両刀使い。俗に言う、魔法剣士でもあります」
「魔法剣士ねぇ⋯⋯俺の自己紹介は必要か?」
廉は自己紹介する有無をデュラークへ訊ねる。
あの部屋で朝香と共に居たデュラークは黒白院によって、ある程度の廉の情報は聞かされている筈と廉は推測しており、自己紹介の必要性を感じていないものの、話の都合上訊ねていた。
「いや、必要無いよ。黒白院さんから聴いているからね」
(⋯⋯やはりそうか)
廉は自身の推測通りの結果に自己紹介する必要が無く、朝香にもその必要が無い事を悟った。
「この建物は面白いね」
デュラークのその言葉に廉は答えるよりも早く周囲を見渡していた。だが、デュラークの言う面白さは感じ取れずに、廉は聞き返す。