神の如き強者(アザゼル)三
両親を失い、今まで使っていた魔法は使えず、あるのは満足に使えない神器のみである。
そして、死んだ時に炎の魔神と呼ばれる状態になり、蘇った事実は廉にとって、実感の無いものである。
「分かった。チーム[アブノーマル]を作ればいいんだろ?」
そう答えるしか無い。廉にはそう答える事しか出来ない。生きる為に金を稼ぐ手段は無く、防衛局の誘いを断れば、世界を敵に回す管理する神の入るか、あるいはどちらにも所属しない選択があるが、廉にとっての最善策は防衛局に身を置くことだ。
管理する神に所属となれば、自身の胸を貫いた仁との再会は防衛局よりも確実に早く済むだろう。しかし、不安要素があまりにも多すぎる。どんな目的があるにしろ、人を殺そうとする組織に身を置ける程、廉は残虐非道な人間ではない。
どちらにも所属しない選択もあるが、何の情報も無いこの状況で外に出るのは無謀の一言に尽きるだろう。
だからこそ廉は防衛局に身を置く事を選んだ。
防衛局に所属していれば、防衛局に入ってくる情報を得られるのはデカい。遠回りでも自身殺そうとした仁に会えるチャンスはいずれ回ってくるだろう。何よりも両親を殺した管理する神への敵討ちの機会も巡ってくるだろう。
「あっさりとしているね。戦闘も視野に入れて、この空間を用意させたんだが⋯⋯不要に終わったな」
黒白院のその言葉と共に、壁も天井も床も無かったその空間は徐々に元の部屋へと戻っていく。
(炎の魔神といい、俺への対策は万全だったって事か)
完全に戻った部屋を見渡し、廉はため息を溢す。
二人しか居なかったその部屋には現在、四人が存在している。スーツを着た金髪のギャルと言えば、誰もが理解出来るであろう身なりに隠すつもりも無い刀が携えてある。誰もが魔法を扱う事の出来る現代に武器を常に装備するのは珍しい。装備するのは、敵対するものに脅しや武力を分かりやすく見せつける位でしか目にしてこなかった廉にとっては珍しい光景である。そんな物騒な人間が一人居る事から、背後に気配を感じていた廉は振り返ること無く。正面にいる黒白院とスーツのギャルを眺めてきた。
「俺が暴れた時には、二人で止める予定だった⋯⋯って事?」
スーツを着たギャルは残念そうにため息を溢す。
「後ろに居るもう一人にも気づかないなんて⋯⋯こんな人の下につかないと行けないなんて」
スーツ姿のギャルは自身が思っているよりも廉が期待外れなこの状況に失望の眼差しを廉に向けていた。