山田浅右衛門(やまだあさえもん)二
浅右衛門の名を襲名を目指し、山田家の人間、門下生達が動く中、浅右衛門の襲名を見定める山田夜一は三人まで絞り込んでいた。
一人は誰もが納得出来る人物であり、朝香の師匠でもあり、実際浅右衛門の名を襲名する事になる山田朝陽。
実力は申し分なく、剣技のみなら山田家トップクラスの男である。
二人目は山田朝香。
先代浅右衛門の一人娘であり、剣の綺麗さならトップクラス、首の切断を生業とする山田家の全てを叩き込まれた女。
三人目は山田紫陽花。
幼き少女はあるが、成長が著しく未来ある彼女に浅右衛門を託そうと考えるも、残りの二人目が居る限り紫陽花が選ばれる事は無いだろう。
三人の中で最も浅右衛門に近いのが朝陽であるしかし、朝陽を浅右衛門にしたくない連中は皆、朝香を浅右衛門にと言う声もある。
しかし、この三人は有力視されているだけであり、他の人間が浅右衛門の名を諦めた訳でなく、いずれ来るであろうチャンスを待ちかねていた。
「朝香暫くは外出は控えなさい」
それは師である朝陽の忠告だった。
「何故です?」
「今は、罪人、山田家以外の首を斬るだけに留まるが、いずれ山田家の人間の首を斬るだろう。人数が減れば、自身が浅右衛門に選ばれる可能が浮上する。特に先代浅右衛門の娘である朝香は狙われる可能が高い」
「それは貴方も同じ、現時点で浅右衛門に最も近い貴方を殺せば、誰もがチャンスを手に入れられる」
「互いに気をつけるしか無い様だ。死ぬなよ朝香」
「そちらこそ」
ーーーーーーー
一日目に逮捕が出る騒動があり、山田家の人間、門下生達が逮捕、処断され、皆が大人しくなると思われたが、その日の夜の事だった。
一人の少女が息を切らしながら、防衛局へと逃げ込もうとしていた。
「逃げられないよ」
その言葉通りであった。
目で捕らえる事の出来ない無数の刃が少女の身体を貫く。
「どうして?」
「⋯⋯まだ、息があるんだね」
「紫陽花⋯⋯私達、友達でしょ?」
「うん!そうだよ。友達だよ⋯⋯今まではね。ごめんね!死体とは友達では居られない」
紫陽花はか細き腕で振るわれた剣によって、少女の首は綺麗に切断され、その場で絶命となった。
山田家の人間、門下生達を含めて、最年少である山田紫陽花は天才と言われる理由が存在している。この当時は能力、異能、超能力等の力が世界で広がる前では、魔法がメインなこの時代に置いて紫陽花は魔法と剣の両刀使いであり、魔剣士である。山田家の中にも多くの魔剣士が存在するが紫陽花のレベルは段違いである。




