神の如き強者(アザゼル)一
そこにあるのはどこにでもある机と椅子、そして椅子に腰掛ける二人の男だけの空間、何故かその空間には壁、床、天井が存在していない空間である。
「何故、ここに呼ばれたのか⋯⋯分かるかな?」
白髪、黒髪が入り混じる特徴的なヘアースタイルをしたその男性は冷静に語り始めた。その男性はこの空間に何の疑問も抱かずに淡々としている。動揺しているのはここに呼ばれた何の特徴も無い黒髪の少年だった。
「呼ばれた理由ねぇ。最近魔力が全くなくなった事と関係しているのか?」
「半分正解!呼んだのは、君の身体に宿った神器についてだ」
「確かに魔力の変わりに炎剣が出し入れ可能な身体になったけど⋯⋯それが、こんな場所に呼ばる理由になるのか?」
「こんな場所ねぇ⋯⋯」
白髪、黒髪が入り混じるその男性はゆっくりと首を上下左右へ動かす。
「確かに、君への信頼が無いこの状況だが、やり過ぎだね」
「やり過ぎって事はこの空間を用意したのは、あんたじゃないって事だな」
「⋯⋯そうだ。ここは元々は普通の部屋なんだが、チーム[雷帝軍]の新入りが空間を拡張させている。君が暴れても良いようにね⋯⋯木山廉」
「空間を拡張する意味がわからねぇ。日本の御三家の黒白院家を敵に回すなんて、馬鹿げた事を俺がすると?」
「自己紹介が省けるね」
「⋯⋯今も御三家なの?」
「⋯⋯どう言う意味だろ?」
「そのままの意味だ。あんたが今は当主なんだろ?ゴタゴタはもう終わったのか?」
「⋯⋯あぁ、終わったよ。黒白院家はもう御三家ではない。代わりに橘家が入れ替わる形となった」
「悪い事を聞いたか?」
「嫌、学生の君の僅かな、青春を奪っているこの状況では、ある程度は許容しよう。上からの指示でチーム[アブノーマル]の結成を言い渡された。君にリーダーを頼みたいのだが」
「意味が分からねぇよ。俺の身体は⋯⋯どうなってるんだ?」
「魔力は完全に消滅している。もう魔法は使えないだろう⋯⋯その代わりに君にはそれがある」
黒白院は廉の胸を指差す。
「⋯⋯神器って何だ?」
「この世界は皆、誰もが魔法を使う。一年前まではね⋯⋯近年、魔法は異なる進化を遂げた。能力、異能、超能力、人によっては呼び方は変わるだろう⋯⋯神器もその一つだ。神器は持ち主を見定め、身体の中へと宿るとされている。曖昧で、確証も無い話で悪いが、我々もそれ以上の事は分からない⋯⋯つまり、君と何ら変わらないと、言えるだろう」
「俺は⋯⋯チーム[アブノーマル]なんて率いるつもりはない」