百花繚乱(ひゃっかりょうらん)四
優雅にコーヒーを嗜むデュラークは自身の頭を魔法陣の中に入れ込む。その瞬間だった。二人の少女がデュラークの背へと勢い良くぶつかる。
しかし、鎧に身を包むデュラークにダメージは無く、二人の少女達だけが地面に倒れていた。
「大丈夫ですか?」
ぶつかって来たのは少女達だが、デュラークは倒れる二人に寄り添う。
「大丈夫な訳無いでしょ!普通、鎧なんて着る?」
強気なその言葉で赤髪の少女は怒号を上げる。そんな少女とは違い隣に居る青髪の少女は申し訳なさそうにしていた。
「お姉ちゃんがすみません」
青髪の少女は慣れた様に謝罪をする。
「左紀子!少し黙ってて⋯⋯こいつ頭が」
赤髪の少女は右手に赤く燃えるオーラを纏わせる。
「そんなに慌てないで下さい」
怯える二人にデュラークは冷静に語りかける。
「慌てるだろ。初対面では無理だろ」
廉は冷静なツッコミを入れたその直後だった。
赤髪の少女は右手に纏わせていた赤いオーラをデュラークへと放つ。真っ直ぐと放たれたその一撃はデュラークに直撃するその手前でデュラークが展開させた魔法陣によって止められていた。
「馬鹿!避けろよ」
敵の攻撃を見事に止めたデュラークに廉は罵倒を浴びせた。魔法陣を展開させた防御は魔力を使用したものであり、沖縄への転移魔法の使用に取って置かなければならない大切な魔力をここで使ってしまえば、沖縄への移動が遠のく事になる。
「すみません。咄嗟の事で」
デュラークは廉の罵倒により、自身の魔力の使用した事の間違いに気がついた。
「おしゃべり中、ごめんなさい。火傷するわよ」
赤髪の少女のその言葉にデュラークは理解が追いついていなかった。破壊されなければ、少女の放つ赤いオーラがデュラークに届く事は無く、魔法陣によって防御は完璧である。何よりも熱を感じる事も無い。少女の言う火傷を負う事など現在の状況では不可能としか言えないのである。
「ありえません」
デュラークは思わず呟く。頭は自身が所有するデュラークだが、自身の周囲を少量の魔力を放ち周囲を状況を確認するデュラークの目には写らないが、魔力感知により、魔法陣の中心が焼かれているその事実にデュラークは困惑していた。
「デュラーク!一旦引け」
廉のその言葉にデュラークは躊躇いも無く魔法陣をそのままにして、廉の元まで逃走する。
「すみません。無駄に魔力を使い⋯⋯少女の一撃すら防げないとは」
「あれは⋯⋯どう言う原理なんだ?」
「ええ、あり得ない事です」




