百花繚乱(ひゃっかりょうらん)二
「私の能力である百花繚乱によって蓮の花を咲かせました。蓮の花は精神の安定と痛み止め、疲労に効く為、咲かせました。蓮の花を抜いたり、花を枯れさせなければ、効果は持続します」
朝香の能力である百花繚乱は自身が触れた箇所、あるいは自身が手にしているものの、接触箇所に花を咲かせる能力であり、花の種類によって、様々な効果を与える能力である。
「出血もしていないようだが」
「⋯⋯私の能力向上については誰にも話すつもりはありません」
黒白院はそれ以上は追及はしなかった。
一枚岩では無い防衛局では己の力の申告等行わない者は朝香だけでは無い。特に能力を極めた者が能力を進化させる能力向上は能力者にとって、切り札や奥の手とも言える代物でもあるため、朝香はペラペラと語らないのも黒白院は納得していた。
「分かった。詳しく聞かないでおこう」
「助かります(黒白院さん。明らかに力が衰えている。四十代とは言え、日本トップクラスの力を持つ人も⋯⋯病気に敵わないみたい)」
日本トップに君臨していた絶対王者の黒白院が防衛局局長の座を奪われ、病気の進行も進み、そして現在は両手を失ったこの状況では朝香も異常な聖剣の持ち主の元へ行こうとは思えなかった。黒白院を庇う事になる場合を視野に入れた場合にあまりのリスクの高さに朝香は尻込みしていた。
朝香一人なら間違い無く、逃走と言う選択肢は無いが、黒白院が居るこの状況では、黒白院を守りながら情報収集が朝香の最善策と言えるだろう。
しかし、黒白院の考えは違った。
「異常な聖剣の元へ行け!」
黒白院から告げられた意外なその言葉に朝香は呆然としていた。その考えだけは無いと考えていた朝香にとっては、それはもう捨てた選択肢だった。何よりもこのタイミングで言われた事が自身の考えを見透かされている様にも朝香は感じていた。
「神の如き強者を脳に使っているんですか?心臓に回して下さい。死にますよ」
「見くびるな。神の如き強者は心臓に使用している。今がどんな状況で山田がどうしたいのか位己で考えれる。私では満足に戦う事が出来ないだからこそ、若い者に全てを託す。山田朝香、デュラーク・クラーク、木山廉⋯⋯お前達に賭ける!」
「分かりました」
託された朝香は剣を鞘へと納める。
「分かっているだろうが、肉片に直接触れるな。靴の接触では肉体の吸収は無い所を見ると、条件に直接肉体同士の繋がりが必要なんだろう」
「分かってます。ゆっくり休んで下さい」




