神の如き強者(アザゼル)十
「神の如き強者を使う」
黒白院のその言葉に朝香は全てを理解し、頷く。
黒白院は強さは日本のみならず、世界中に知れ渡ったものである。魔法が主流だった一年前も強かったが、一年前から突如として増えた能力、異能、超能力等の力の目覚めが世界各地で勃発し、その影響は黒白院の身体にも起こっていた。黒白院の体内から魔力は消え、魔法の使用は出来なくなったが、その代わりに得た力こそ神の如き強者である。
神の如き強者は異能に区分されており、異質な異能と言われている。悪魔属性、神属性、天使属性を持つ変わった異能である。
神の如き強者は使用すれば一時的に身体の一箇所を神に近い力を得る事が出来、黒白院は常に神の如き強者を使用し、心臓の病気の進行を食い止めている状態である。
そんな状態ではあるが、黒白院は心臓に回している神の如き強者を解き、脳へと切り替えた。
これにより、神の如き頭脳を手にした黒白院は今までの記憶の中から、足元の肉塊について分析する。
神の如き頭脳は黒白院が今まで得て来た情報を元に答えを導き出す事が出来るが、黒白院が知らない事は神の如き頭脳をもってしても不可能である。
黒白院はこの異能の性質を利用して、あらゆる資料とデータを目にしている。記憶して無くても、一度目にしたものなら、神の如き強者を使用して、一時的に脳を神に近い力を得た際に記憶が蘇る事になる。
「異常な聖剣⋯⋯厄介な神器だな」
黒白院が神の如き強者を利用して、導き出した答えがそれだった。
「資料で見た事があります。ですが、異常な聖剣にこんな事が出来るでしょうか?」
「何が言いたい?」
「異常な聖剣は斬りつけた対象の物体を吸収し、溜め、吸収、放出が出来る神器の筈です。地面一帯を肉の塊にする事など可能でしょうか?」
「確かに通常の異常な聖剣ならね」
「つまり、通常ではないと?」
「あぁ、神器の能力拡張、あるいは⋯⋯複数の能力が組み込まれている」
朝香は手にしていたを剣を肉片に埋め尽くされた地面へと振るう。振るわれた剣によって宙に肉片の一部が舞う。
「⋯⋯耳?」
黒白院は宙に舞ったそれを耳と認識した事によって、直ぐ様動く。
「山田剣を納めろ。ここから離脱する」
肉片が切断された時に出血した事から、耳の様な形をしたそれは本来の耳として機能を兼ね備えているのであれば、今まで黒白院と朝香の会話を全て聞かれている可能からして、黒白院はこの場からの撤退と、肉片を操作している者の探索の為、動き出す。




