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神はケモノに×される  作者: あおうま
第一章 ながすぎるアバン
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第七十三話 申はもの言う

 

◇◇◇

 

 まだ五月のはじめの方だし、気温も暑くも寒くもなくて、ちょうど良い感じの空気のなかで。

 今日はじめて話したクラスメイトの神さんと一緒に、わたしは補習終わりの放課後にアイスを食べていた。

 気温のせいでアイスが溶けるなんて心配もないし、寒すぎてアイスを食べるのが辛いってこともないから。

 パクパクとアイスを食べすすめて、木の棒が見えはじめたそんなとき。

「あの……あ、明日は、私が奢りますから……」

 となりでお行儀よくガリガリ君をカリカリと齧っていた神さんが、そんなことを言った。

「えっ、マジ!? やったー!」

 明日の補習はテストするって聞いていて嫌だったんだけど、頑張ったあとのご褒美ができたじゃん!

 再テストでは七十点以上取らないと課題が出されるらしいし、マジかーってゲンナリしてた。

 だけどタダでアイス食べれるんなら、ちょっと気分上がってきた!

「神さん明日の再テストどう? 自信あるー?」

「多分……だ、大丈夫です! 今日いっぱい勉強します!」

「そかー。んじゃわたしも頑張ろうかなー」

 寮の部屋に戻ってまで勉強すんの嫌だったけど。

 おバカ仲間の神さんが頑張るなら、わたしも頑張っとくかー。

「あ、そだ! んじゃ勝負するー? 負けたら勝った方の言うこと聞くってのは!?」

「……いいですよ。望むとこです!」

 そう言い返してきた目の前の神さんは、何やら燃えているように見えた。

 何となくだけど、神さんの感情とか様子にも気づくことができるようになってきたのかも知れない。

 わたしが勝ったら神さんに何してもらおうかなー、なんて考えはじめたそんな時。

 アイスをひと齧りして現れた文字に持ってかれて、勝負のこととか全部一気に忘れてしまった。

「あっ! 当たったー! ほら見て神さん、当たったんだけど!」

「ええっ!? ほ、ホントだ。しゅごい……いいなぁ」

 たかがアイスのあたりって感じだし、わたし結構こういう当たり引く方ではあるんだけど。

 それでもやっぱ、めっちゃテンション上がった。

 神さんだってキラキラした目ですごい見てるし。

 そっか、ガリガリ君とか当たりのあるアイスを食べたことないんだ!

 お嬢様だから珍しいんだ!

 もうー、しょうがないなぁ!

「欲しい? あげよっかー?」

「……ぅええっ! い、いいんですかっ?」

「いいよー。だって神さん自分で当てたことある? ないでしょ?」

 わたしは神さんよりも大人で落ち着いてるし、こんくらいは珍しくもなんともないからね。大人の余裕ってやつだよ!

 そう思って、親切で譲ってあげるって言ったんだけども。

「むっ……い、いいです! いりませんし……」

 神さんは急にヘソを曲げちゃったみたいで、意地を張って断っちゃった。

 え―、なんでー?

 あんな物欲しそうに見てたのに……。

「いいよいいよ遠慮しなくて。わたしこういうのよく当たるから。神さんそういう経験なさそうだし!」

 だって友だちと買い食いとかしたことないみたいだし。

 それにお嬢様だから、いつも当たりのないダッツとかしか食べてないでしょ?

 そんなわたしの気遣いもつゆ知らず、神さんはさっきよりも幾分か早いペースで、一生懸命アイスを食べだした。

「私だって当たりくらい、ひ、引けますし! 今までもいっぱい当ててきましたし!」

「え―? ほんとにー?」

「本当です!」

 そのあと自分が当たっているかを確認するために、アイスを頑張って食べつつ。

 ときどき頭がキーンとしたのか、痛そうな顔をしつつと大忙しな神さんと一緒に。

 ほのぼのとしたはじめての寄り道は、のんびりと過ぎていったのだった。

 ちなみに神さんのアイスは当たりじゃなかった。

 

◇◇◇

 

 そんで次の日。

 あっという間に一日が過ぎていって、またも数学の補習の時間。

「神さん、あのあと勉強したー?」

「はい。自信満々です」

 今日も後ろに座っている神さんと、再テスト前の小休憩にちょっと話してた。

「えー、マジかー! わたしあんま自信ないなー」

「ふふんっ。それじゃ私が勝ったら、ちゃんと言うこと聞いて貰いますからね?」

「んん? なにそれ? なんの話?」

「……え? あ、あれ?」

 あっ、先生が戻ってきた。

 はぁ……テストかぁ。やだなー。

「んじゃ神さん! お互い頑張ろうね!」

「あ、はい……あれ? もしかして、忘れてる……?」

 神さんがなんかボソボソ言っていて、なんの話かはまったくわかんなかったけど。

 今はそんなことよりテストが優先なため、わたしは先生から配られたテスト用紙に意識を集中させたのだった。

 

◇◇◇


「んんー! 終わったー!」 

 今日も昨日と同じように、神さんよりも先に校舎の外に出て、下駄箱で靴を履き替えてる神さんを待っていた。

 テストが終わった開放感から自然と伸びをして身体の凝りを解すと、心もカラダもめっちゃ軽くなった気がする。

 まぁ厄介なテストが終わったんだし、受けなきゃいけない補習も全部終わったし、それも当然かもね!

 明日の朝早くに職員室に行って、先生からテストの結果を貰ってこないといけないのは、ちょっと面倒だけどなー。

「お、お待たせしました……」

「きたなー神さん! んじゃ今日も寄り道するかー」

「はい」

 今日は神さんの手を引っ張って走り出したりせず、神さんに合わせて歩いていくことにしよ!

 だって神さん、昨日めっちゃバテてたしなー!

「テストどうだったー?」

「えと、たぶん七十点以上は取れたと思います……」

「おーマジかー! わたしもわたしも!」

「おぉ……」

 昨日はちょっと頑張って勉強したから、テストはけっこう手ごたえあった。

 でも神さんも大丈夫そうでよかった!

 それなら二人で思いっきり喜べるし!

 『テストのあの問題がー』とか色々と話しながら、今日はゆっくりコンビニに向かうその途中で。

「でも、これで終わりじゃないんですよね……」

 さっきまではスッキリした表情をしていたはずの神さんが、そんなことを言いながら顔を曇らせた。

「んん? なにが?」

「えっ、だって明日も補習あるじゃないですか? しかも英語だし……」

「あー、んん?」

 神さんの言ったことに最初ピンと来なかったんだけど、ちょっと考えたらわかった!

 そういうことかー。神さん可哀想に……。

「わたし、今日で終わりだけど」

「……えっ? ま、マジですか?」

 補習は国語、数学、英語の順番で二日ずつやるはずだから。

 明日からはまた英語の補習が始まるのかー。

 神さんは『信じられねー』みたいな、びっくり仰天って顔してるし。

 わたしは当然明日の補習も参加するって思ってたんだろうか。失礼な!

「わたしは数学だけだったからなー。国語と英語はとりっぴーに教えてもらったし!」

「そ、そんな……裏切り者……」

「裏切り者ってー。あはは」

 変なこと言ってるのとかが面白くて、思わず笑っちゃったけど。

 そんなわたしとは反対に、神さんはガックリと項垂れていたのだった。

 

◇◇◇

 

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