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神はケモノに×される  作者: あおうま
第一章 ながすぎるアバン
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第七話 丑はよく眠る


◆◆◆

 

 気配を感じて目を覚ますと、同じクラスの神さんが私のお尻を見ながらお弁当を食べていた。

 ……いや何事?

 バチと目が合うや神さんは私から視線を外し、次のおかずを吟味するようにお弁当を見ながら「おはようございます」と呟いた。

「おはよう……」

 というか、お尻を見ているとか勘違いしてしまったけれど、下半身を神さんの方に向けていたのだから私に視線を向ければ自然と目にも入ってくるだろうし、きっとお尻ではなく寝ている私を見ていたのだろう。

 この勘違いは失礼すぎた。ただでさえお尻を向けて眠っているのでさえ失礼なのに、あの神さんが私なんぞのお尻を興味津々に眺めているはずなんて絶対にありえないんだから。

 むしろ食事をしている最中に変なものを見せつけてしまって申し訳ない。タイツを履いているとはいえ、スカートの中まで見せてしまっていたのなら、さぞ食欲も失せたことだろう。

「起こしちゃいましたか?」

 次のおかずに手をつける前に、神さんが再度ちらっと私に目を向けて問いかけてきた。

 流石に寝転がったままでいるのも決まりが悪く、私はようやく体を起こした。

 寝起きのうすらボンヤリしたまま隣の神さんに目を向けると、そこにいるのは夢でも勘違いでもなく、本物の神さんだった。

 寝ることと食べること以外には大した興味も持たず、流行りの何かとか学校のアレコレといった類に特に関心のない私でも、何度もその名を耳にする女の子。彼女が動けば自然と目で追ってしまう、それほどまでに目立った目を惹くクラスメイト。

 同室の子日さん以外で、特に接点があったわけでもないのに名前を覚えてしまっているような、私にとっても、きっと他の子たちにとってもイレギュラーな人物、それが神さんだった。

「うん。でも気にしないで。あのままだときっと昼休み終わっても寝てたかもしれないし……ふわぁ」

 大きな欠伸をしながら視線だけ神さんに移すと、神さんもモグモグ咀嚼しながら私を見つめていた。

 だらしなく大口開けているのがなんだか無性に恥ずかしくなり、欠伸が終わるまで顔をさりげなく逸らしてしまった。

「ゴホン……そういえば神さんはいつからそこに?」

 気恥ずかしさをわざとらしい咳払いで誤魔化しつつ、ふとわいた疑問を投げかける。

 スマホで確認すると昼休みも半分ほどが終わりそうな時刻。私が寝入ってから大体二十分くらいか。

「……今さっき、来たばっかです」

「そっか。寝てたから当然だけど、全然気づかなかったよ」

 うーんと伸びをして大きく息を吸い込むと、多少は目も覚めてきた。

 改めて神さんを見ると、神さんは私の胸元を見ながらも弁当箱からおかずを摘んでパクパクと口に運ぼうとしていた。けど箸はおかずを掴めておらず空を切っており、さっきから何も挟んでいない箸先をパクパク咥えていた。

「おかず、掴めてないよ?」

 私がそう指摘すると、ハッとした様子で私の胸あたりに向けていた視線を逸らし、今度はしっかりとオカズを摘み上げて食べていた。何を見ていたのか、ヨダレとか汚れでもついてたのかと気になって自分の胸に目をやっても、特にそんな気になるようなものは目につかなかったから、きっと何か別の考え事でもしていたんだろう。

 そのあと少しの時間、特に会話もなく、良い陽気の差し込む中庭をボーッと眺めていた。神さんは隣でなんかとてつもなく静かに黙々とお昼ご飯を食べている。

 特に会話もなかったけれど、気まずさとかを感じることもなかったから、教室に戻らずそのまま神さんとの穏やかな時間に身を浸していた。


◇◇◇

 

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