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神はケモノに×される  作者: あおうま
第一章 ながすぎるアバン
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第三十話 神は唖然とする

 

◇◇◇

 

 朝ごはんの乗ったトレイを両手に持ち、何故かいつでも空いてるいつもの席に腰を落ち着けた。

 さてさて、今日の朝ごはんは……ハムエッグとウインナーか。なんか和食を選んだはずなのに、あんまり和食っぽくないな……。

 なんともありがたいことに、この女子寮では朝は和食か洋食か選べるし、夜もいくつか用意されたメニューをその時の気分で選ぶことができる。

 好き嫌いとか栄養バランスとかで選択肢をいくつか用意してくれるなんて、寮母さんや食堂のお姉様方の日々の努力にホント頭が上がりませんです。

 まぁでも、バリエーション豊富なメニューはもちろん嬉しいんだけど、好き嫌い自体がそもそもそんなにないんだけどね。私いい子ちゃんだから。

 食べるの苦手なものだって、強いて言うなら、ナスとピーマンとトマトとパクチーと、ゴーヤとセロリと魚卵とサンマ。あと貝類は大体全部と、レバーと肉の脂身と白子とレーズンに、グリーンピースとミント味のものと鍋物と酢豚に入ってるパイナップルとか。ほかにも芋類と辛い物と抹茶味のスイーツと、キウイと骨のある焼き魚くらいなもんだからね。それ以外のものは大体食べれるし!

 しいたけだって食べれるもんね! ふふん!

 まぁ元々少なかった苦手な食べ物も、入寮して以来だいぶ食べれるようになったなー。

 だって私きらいなもの出てきても誰かに食べてもらうとかできないし、ご飯は残しちゃいけないってお母さんから教わってるし。

 極少ない弱点なもの出てきても、なるべく小さく切って飲み込んじゃえばなんとかなるし。

 お母さん! 私ひとりでもめっちゃ頑張ってるからね!

 この間どうしても避けられずに対決することになったナスも、ちゃんと残さず食べたんだからね!

 イマジナリーママンに誉めて貰いながら食事を進めていると、少し離れた席に座る子たちが昨日の休みに何をしてたかといった話題で盛り上がってる声が聞こえてきた。

 休日の話か……羨ましい。

 私も混ぜて欲しいよ。いや、やめといた方がええ。盛り上げられるような休日なんて送ってへんもん。

 土曜日はチンタラ起きたせいで朝飯を食べ損ね、午前中は部屋の掃除と洗濯と宿題と格闘した。そんで、ひとりぼっちの昼食を経て、あとは部屋で昼寝したあとにアニメをダラダラ見ていた。日曜日は寝て食って寝てた。

 うん……青春は?

 日曜なんて『誰の休日の過ごし方でしょうか?』ってクイズにしても、女子高生の休日だって絶対に当てられねぇやんけ。

 そもそも実家にいた時となんも変わっとらんのが、ホンマ悲しみの極みよ。なんの為におうちを出てまでここにいるんだ私よ。

 ちなみにこの前まで実家で暮らしていた時には、家事は大体ぜんぶ私がやっていた。

 年がら年中引きこもってて時間はあったし、お母さんメッチャ働いてくれてたし、家事するとお母さん簡単に褒めてくれるんだもん。

 料理なんかも得意ではないが時々していたし、私のお嫁さんパワーは数多ある長所のひとつだろう。アピールできる機会が無しよりのナシなのが残念極まるけども。

 私だって友だちが出来さえすれば、きっともっと華やかで自慢できるような休日を過ごしたりなんだり出来るのに! 運が悪いばっかりに!

 ……あと母いわく、欲望にすぐ負けるし、すぐ調子に乗るおバカな気がちょっとだけあるところさえ治せれば!

 そんな事あんな事を黙々と考えながらも、朝ごはんも半分ほど食べ終えたそんな時……。

「……隣いい?」

 すぐそばでそんな声が聞こえた気がしたけど、絶対私にじゃない。わかってる。もう私は勘違いしないし。

 『えっ? 私に話しかけた?』って思ったのに勘違いでした、なんてことが入寮入学してから何億回あったことか。

 ボッチ特有の恥ず恥ず場面あるあるを何度も経験したおかげで、私はメチャクチャ賢くなっていた。

 どうせ近くの席の誰かに話しかけたんでしょ。私わかってるよ。

 だって今まで食堂で私に話しかけてくれる人なんて、1人もいなかったもん! ともだち1人もいないもん!

「えっと……神さん?」

 えっ? 私に話しかけた?

 幻聴じゃない幻聴じゃない。私の名前よんでたし。てか幻聴なんかにしたくない!

 声の主の方に恐る恐る目を向けると……。

 なんともまぁ信じられないことに、人恋しすぎてコミュニケーションに飢えていた私の夢まぼろし願望空想の類などでは決してなくって。

 はたしてそこには、この時間帯に出現するはずがないと思っていたイレギュラーもイレギュラー。

 我らがクラスの委員長こと辰峯さんが、朝ごはんを乗せたトレイを持って私に話しかけていたのだった。

 

◆◆◆

 

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