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神はケモノに×される  作者: あおうま
第一章 ながすぎるアバン
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第二十九話 神は紛れる

 

◆◆◆

 

 月曜日の朝、今日からまた1週間が始まる。

 まだ寝起きの薄らぼんやりした脳みそで、窓から差し込む眩い日の光を見ながらそんなことを思った。

 二度寝の誘惑に必死に抗い、洗面所で顔を洗っている私は危機感を覚えていた。目覚まし時計とスマホのアラーム機能のおかげで何とか今日も起きることができたけど、なんかそろそろ危うい気がする。

 ていうか入寮当初と比べて、私が起きるまでになり終わっているアラームの数が明らかに増えている。

 時間にすると、大体20分くらいは起床時間が後ろに立て込んでるんだけど……このお寝坊さんめ。

 去年までは遅刻なんて概念が私の生活に存在しなかったし、決められた時間に起きなきゃいけないなんて久しぶりのことである。

 お母さんは朝早いから、起きた時にはいつも、もうすでに出勤した後だったし。

 その怠惰さの皺寄せを、いま私は一生懸命払い続けていた。

 こんな時に同室の子がいれば、朝寝坊して遅刻の危機に陥るなんて事態は防げるんだろうけど。

 もしかしたら、コレから2年間はひとりで睡魔と戦い続けなければいけないのか……無理やそんなん。いつか絶対にやらかす気ぃしかしないよぅ。

 まぁ今日のところは起きれた私えらすぎと自画自賛し、ひとまず杞憂でしかない未来への不安は先送りにした上で、軽く歯磨きや身だしなみを整えて部屋を出た。

 

◇◇◇

 

 廊下をまばらに歩いている寮生の波に紛れて、私も食堂に向かう。

 少し離れた前にも後ろにもいる子たちは、私と同じように食堂に向かっている。しかし私との大きな違いは、どの子もルームメイト同士や友だち同士で並びながら歩いているところだ。

 こういう時間が地味に辛すぎるんだけど!

 群れ、ボッチ、群れの並びになった時のボッチの気持ち考えたことある!? 寂しいし可哀想だし惨めでしょうが! うえーん。

 俯きながら影を潜めて存在感を消し、空気と同化するように無心で歩くスキルだけ異常に向上したわ。もう社会にでて生活するようになって幾分か経ったからね。慣れたもんだよ。悲しいことにね!

 入寮したての頃なんかはマジで大量のリアルJKにビビり散らかすわ、群れの中での孤独が惨めすぎて意気消沈するわ。毎秒てんやわんやだったのも懐かしい思い出である。

 今はそんな苦痛にも慣れつつあってへっちゃらよ。人間の適応能力しゅごい!

 ひとり侘しく歩きながら食堂に到着し、チラと周りを見渡すと、それほど多くない寮生が点々と座って朝食を食べている様子が見てとれた。

 これまでのリサーチの結果、このくらいの時間帯が一番人が少ない気がする。

 朝練のある部活に入っている子たちも既に朝食を済ませ、その後で最もピークとなる時間帯も過ぎ、朝食のために設けられた時間も終わりに近いギリギリの時間。さらには同じクラスの子なんかも、全然みかけないような時間帯。まさに私のゴールデンタイム。

 この時間に食べにきている子なんて、お寝坊さんかボッチかその他よくわかんない人くらいだ。

 例えば私のクラスの委員長を努める辰峯(たつみね)さんなんか、真面目さ特化の理想の委員長である。同じ時間にしっかり起きて毎日同じルーティンをこなし、決められた時間に朝ごはんを食べにきて、さらには朝活で資格勉強なんかしているに違いない。

 睡魔に負けた挙句、さらにはボッチの逃げ道として、この時間に食堂を利用している私みたいなのが実在していることすら認識してないだろう。

 怠惰で寝坊助な私とあまりにかけ離れた存在だった。見習いたい。いや無理だ。

 母いわく、欲望に弱いとまで言われちゃった私には、そんな生活送れるはずないことなんかわかりきってるし……まぁいっか。私きょうはちゃんと起きれたから偉いもん。

 トレイを手にして短い列に並んだ。ていうかこういう人の列に並ぶのが、正直一番ってくらいにメタクソに辛かった。

 ひとりぼっちの孤独に耐えつつ、ただ順番が来るまで待ってなきゃいけないんだもん……。

 さらには並んでいると、この寮では私みたいな万年孤独女はUMAみたいな希少種なのか知らんけど、前だ後ろだ周りの子たちにチラチラ見られている気もしちゃうしさぁ。コレって私の被害妄想かなぁ? 辛いよん……。

 今日も前に並んだ子たちとチラッと目があった気がしたけど、なんかすぐに目ぇ逸らされるし。そのあと何をヒソヒソ話してんのか知らないけど、私を嘲笑ってるとかあるんだろうか……ひぎぃ。

 あと私と前後の子たちで、なんかちょっと距離空いてんのもただの被害妄想で良い?

 ボッチは風邪みたいにうつったりしないからね? もしかして私臭い?

 なんで? なんでなん? 病んじゃうよ?

 やびゃい。弱音が止まんない。

 さっきの慣れただなんだという大言壮語は、全部嘘だったみたいれす……やっぱりひとりは辛いよん。

 順番がきて食堂のお姉様から朝御飯を受け取るまで、居た堪れない心地のまま身を縮こませて。

 私は孤独と被害妄想に抗い続けたのだった。

 

◇◇◇

 

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