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神はケモノに×される  作者: あおうま
第三章 ゆれるココロ
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第二六八話 神とブルーデイジー

 

◆◆◆

 

 二人三脚が終わったあと、二百メートル走や障害物競争といった個人種目が続いて行われたのだけど、私たちの組はだいぶ健闘していたみたいで。

 それぞれの競技が終わった時には着順が上位の列に、私と同じ組色のハチマキをつけた子たちがけっこう並んでいたような気もするし。

 これなら午前の結果からはだいぶ挽回することが出来たんじゃないかって、そう思って得点ボードをしきりに確認したんだけれど、そこに張り出された点数には全く変化がなかった。

 不安になって卯月(うづき)さんに聞いてみたところ、勝敗が最後までわからなくなるよう、午後の競技の点数は得点ボードには反映されないらしく。

 みんなが最後まで諦めずに競技に参加するよう、意図的にそういう取り決めになっているって教えてくれた。

 なるほどなるほど。たしかに一位だったら気を抜いて油断しちゃったり、ビリだったら諦めたりしちゃう子がいるかもしれないもんね!

 もちろん私は油断なんかしないし、全力で最後までやり切りますがね! もちろんね!

 そんなこんなで気づいたら、あっという間に個人種目は終わっちゃって、あとは団体競技を残すのみとなってしまった。

 天気は変わらず快晴で、誰かが大きな怪我をしたり何か問題が起こって体育祭が中断されることもなく、楽しい時間がここまでずっと続いてきたのはとても幸いですな。うむうむ。

 一年生の学年種目に参加するため、クラスメイトのみんなに混じって入場門の近くに立ちながら……。

 なるべく前向きなことばかりを考えるように努めることで、心の隅っこに滲みはじめた苦い感情から、私は必死で目を逸らしたのだった。

 

◇◇◇


 ふぅ……私の出番は一回だけだったけれど、それもなんとか無事に終えることができたや。

 一年生の学年別競技に参加し終えて、このあとの二年生や三年生の競技を観客として楽しむために、グラウンドから退場したあとはササっとクラス席まで戻ってきた。

 こんな私にだって、入学してから今日までに仲良くなることのできた先輩がいらっしゃるわけで。

 大好きな先輩たちの勇姿はちゃんと見守らせていただきたいし、これも後輩の務めというもんでしょうが。

 まぁ、そんな仲良くなれた先輩も、数えようとしたら余裕で片手で足りてしまうくらいの人数しかおらんのだけども。

 それもこれも私の運がめちゃくちゃ悪いのと……あとはほんのちょっとだけ、頑張りってもんが足りていなかった可能性はあるかもしんない。

 いやでもね、そんな過去の自分のコミュニケーション不足なんぞは、もうどうあっても取り返しがつかんわけだし。

 だから反省だとか後悔だとかは、今はいったん忘れといてもいいかいね。せいぜい明日からの私が頑張ってくれってな感じですな。

 うんうん。バブバブ甘えさせてくれる先輩ともっとたくさん仲良くなるため、これからの私には是非とも必死に汗とかヨダレとか垂らすくらい頑張ってほしいもんだよ。仲良しの先輩が四人しかおらんなんて寂しすぎるもん。

 とかなんとか未来の自分のお尻をペンペンしていると、二年生のお姉さまたちがグラウンドに入場してきなすった。

 私とはたった一年分しか年齢が違わないというのに、先輩たちの立ち居振る舞いはやっぱりどこか大人びて見えるのはなんとも不思議ですな。

 スタートの合図で始まった競技も、『鬼ごっこ玉入れ』とかいう逃げ回る女の子たちを寄ってたかって追いかけ回して、背中のカゴを目掛けてお手玉みたいなやつをぶん投げるとかいう単純な競技なのに。

 参加している皆さんには、どこかお姉様然とした気品みたいなのが……いや、あんま無いな。

 スゴイや。二年生のお姉たま方ったら全力だわ。まるでサバンナで鹿を追っかけてるチーターみたいに全力じゃねぇか……恐れ入りました。

 ただ、逃げてる方も玉入れしてる人たちも、はたから見てもワーワーと楽しそうなのは大変に良きですな。これでこそ体育祭っちゅうもんだよ。

 たとえ自分とは違うチームであったとしても、それでもやっぱり尊敬すべき先輩であることには変わらないっちゅうことで。

 同じ組の先輩たちに送るエールと同じくらいの熱量で、梅ちゃん先輩や松鵜(まつう)部長も応援なんかしちゃったりしつつ。

 競技に励む青春真っ只中な先輩たちの勇姿を、私はクラス席から見届けたのだった。

 

◇◇◇

 

 そして続いて始まった三年生の学年競技を目の当たりにして、あちしはてぇへん驚愕しちまったわよ。

 なんなのよ『大縄くす玉割り』って……誰が提案して、どなたが決定してこの競技になったわけ?

 各組の三年生の先輩たちが一列に並んで大縄を飛んでいる間だけ、さっきの二年生の競技でも使われていた組色のお手玉みたいなのを投げても良いっちゅうルールらしいんだけど。

 どうみてもクソほどハードじゃん……アマゾネスが大人になるための通過儀礼みたいだよ。

 実際にピョンピョンと大縄を飛びながら玉を投げてる三年生の人たちも、みんな揃ってスゴイしんどそうな顔しちゃってるし……。

 ヘトヘトになりながらもド根性で頑張ってる三年生のお姉様たちと比べたら、『風船リレー』でうちわをパタパタしながら、キャイキャイと可愛らしく風船を追っかけ回していた私たちの方がまだ乙女度が高い気がするよ。

 参加者だったため、自分たちの競技中の様子を見ることは当然できなかったんだけどさ?

 たぶん一年生の私たちは、小さな羽根でグラウンドを飛び回る妖精さんみたいに可憐で愛らしかったことでしょうな。

 とはいえ、たとえキュートさとか優雅さをかなぐり捨てていたとて、三年生のお姉様方はきっと後輩にでっけぇ背中を見せるために頑張ってくれているわけで。

 『三年間でこんなに成長したんだぜ』ってな感じに最高学年たる自分たちの勇姿を、みなさん揃って喜んで披露してくれているのだろう。

 ……まぁ、この競技が始まったら瞬く間に「もうやだー!」とか「誰かはやく割ってよ!」とか、そんな泣き言が各所から飛び交っていたし。

 挙げ句の果てには「誰だよこの競技思いついたやつ!」って不満すらも聞こえて気はしちゃったんだけども。

 うん。だからつまり……喜んでこの競技に参加してるわけではなさそうですね。悲鳴しか聞こえてこないもんね。私もぜってぇやりたくないもん。

 ……だけど、だとしてもさ?

 一回も大縄に引っかからないで飛び続けている入鹿(いるか)先輩も、見事にくす玉を割った海鹿(あしか)先輩も。松鵜部長や梅ちゃん先輩も、それに私の友だちのみんなだって。

 みんなで優勝を目指してて、そのためにここまでたくさん活躍してきた姿を私はずっと見てきたのに。

 だけど私は、私が参加した競技の結果は……。

 そんな後ろ向きな気持ちがジクジクと心の隅に滲んできて、ソワソワとした焦りみたいな感情から目を逸らすこともできなくなってきて。

 そしてとうとう私が参加することのできる最後の種目、『クラス対抗リレー』が始まろうとしていたのだった。

 

◇◇◇

 

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