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神はケモノに×される  作者: あおうま
第二章 ようやくはじまったナニカ
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第一七九話 神と三伏

 

◆◆◆

 

 私がトイレにいっていた間に、お母さんと亥埜(いの)さんは、私の期待以上に仲良しちゃんになってるみたいだった。

 さっきお母さんに亥埜さんのことを紹介したときには、そりゃ良い感じに仲良くなって欲しいとは思ってたよ?

 だけど、こんな風にさ……。

「今度ぜったい神さんちに遊び行くわね!」

「アンタ、亥埜ちゃんに変なことされそうになったらちゃんと逃げなさいよね?」

「大丈夫ですお母さま! 何が起こったとしても愛ゆえにです!」

「ウチ出禁にすんぞマジで」

 私のこと置いてけぼりで冗談を言い合えるくらい、仲良くなっちゃってるなんてぇ……。

 うぐぐ……なんかちょっとモヤッてしまうよぅ。

 カフェでは亥埜さんが変な冗談を言うもんだから、再婚だ寝取られだとかアホみたいな勘違いしちゃって。

 だけどそれは誤解だってわかったけどさ?

 結婚するまで深い関係になってなくても、私を差し置いて仲良くなりすぎちゃうのも嫉妬しちゃうでしょうが!

 お母さんは私の大切なお母さんだし!

 亥埜さんは私の大事な友だちなんだからさ!

 そんな感じでお母さんにも亥埜さんにも、それぞれ嫉妬の炎を燃やしている私の前から。

 亥埜さんも自分の家に帰るため、バイバイまたねしながら去っていった。

 その背中を見送ったあとで……。

「んじゃ、私たちも帰ろうか」

「うん!」

 私もお母さんと手を繋ぎながら、実家のマンションに足を向けて。

 ゴールデンウィークぶりに、ずっと待ちわびていた帰省を果たすことができたのだった。

 

◇◇◇

 

 亥埜さんと一緒に地元に帰ってきて、お母さんとも感動の再会をすることができてから、実家で過ごす私の夏休みが始まったわけだけども。

 去年まではひとりぼっちで夏休みを過ごすことが常だった私にとっては、今年の夏休みは何もかもが違っていた。

 まぁ、そもそも中学生んときは引きこもりだったし、毎日が夏休みみたいなもんでしたけどさ。

 今までの夏休みとぜんぜん違う日常が送れているのも、ズバリそれは大好きな友だちのおかげでしょうね。うむ。

 なんか亥埜さんとか、毎日のように遊びにきてくれるし。

 休日はお母さんが仕事お休みで家にいるから、たぶん亥埜さんも気を遣って遊びにくることはなかったんだけど。

 平日はマジで毎日、ウチのピンポンならして『来ちゃった』てな感じでいらっしゃってくださいましたもんね。

 朝から夕方までいてくれて、宿題したりゲームしたり、映画見たりお昼寝したりと、ふたりで楽しく過ごさせていただきましたよ。ありがたやありがたや。

 でも私だって、高校生になって沢山の人と関わるようになったことで、気遣いとかも少しはできるようになったじゃん?

 亥埜さんはちゃんと中学校に通ってたわけだし。

 中学の時のお友だちと遊んだりしないで良いのかなって思ったから、そんなことを聞いてみたりしたのだけども。

「そんなんどうでもいいもん。私、神さんの家に来たいから来てるのよ?」

 なんて嬉しいことを言ってくれたもんだから、私も浮かれて『ま、いっか』なんて思ってしまったよ。てへへ。

 亥埜さんが遊びに来てくれるのが嬉しいもんで、私がお昼ごはんを作ってご馳走しようなんてね?

 お返しとしては些細なものかもしれないけれど、少しでもお礼のつもりで手料理を振る舞ったりしているんだけど。

 そのたびに私の反応を気にかけてくれてんのか、すごい大袈裟に喜んでくれるし。それに亥埜さんたらお世辞もすごい上手だからさ。

 内心で喜んでくれているのかはわかんないけれど、私も気分を良くしちゃってランランランチを作ったりしているわけですな。

 今日だって、私の作ったカルボナーラを最後まで美味しそうに食べてくれたあと……。

「すごい美味しかったわ! 今日も本当にありがとう!」

「いえいえ、こちらこそです。いつも綺麗に食べていただいて、ありがとうございます」

 てな感じに、ここ何日かでお決まりになったお褒めのお言葉をいただくことができたからね。

 ただ今日は冷蔵庫がカラカラだったし、申し訳ないけれど、ちょっと手抜きになっちゃったんだよね……。

「今日は簡単なものになっちゃってごめんなさい……」

 せっかく遊びに来てくれているお礼でランチを振る舞ってるのに、今日は体たらくなおもてなしになっちゃった自覚はあったからさ。

 申し訳なさから、ショボンとしながらそう謝ったのだけど……。

「そんなことない! 私すごい満足したもん! 神さんの作ってくれたものならなんでも嬉しいわ!」

 なんて過剰なくらいのお世辞を言ってもらえたから、少しは気分の曇りもなくなったよ。

 亥埜さんは本当に大人だなぁ……お世辞がとってもお上手で見習わないとだね!

 そんなふうに、亥埜さんのおべっかスキルに感謝していると。

「わ、私……神さんの手料理なら、毎日食べたいな……なんて」

 チラチラと私の顔を見ながら、亥埜さんはさらに私が調子づいちゃうようなこと言ってくれるんだもん。

 そんな大層なことを言ってもらえるほどの料理じゃなく、普通の、というかむしろ手抜きしたパスタだったし。

 そこまでのお世辞は流石に身に余っちゃうし、逆に申し訳なくなっちゃったからさ?

「あはは、毎日だと私の料理じゃ飽きちゃいますよ。寮のご飯の方が美味しいですし」

 亥埜さんのお世辞を真に受けることなく、ちゃんと謙遜しましたよん。

 だって実際に寮で作ってもらえてるお料理の方が味もおいしいし、栄養のこととかも考えられてるだろうし。

 今日みたいにスープすら用意してないランチと違って、いつも副菜とかもいっぱい付けてくれてるもんね。

 それに寮のごはん以外にも、世の中にはおいしいものがたくさんあるだろうし……あ、そうだ!

「あっ! あと外食! 亥埜さん外食したことありますか? ファミレスとかファーストフードとか!」

「……うん。ある……」

「えーいいなー! 私この前まで引きこもりだったから外食って全然したことないし、すごい憧れてるんです!」

「そう……外食できるといいね……」

「はい!」

 そんな感じで今日のランチタイムも一人寂しくパスタを頬張ることなく、亥埜さんと一緒に和やかに過ごすことができたのだった。

 でもなんか外食の話題になったとき、亥埜さんの元気がないように見えたけど。

 やっぱり若い女の子だし、外食とかオシャレなランチが恋しいのだろうか?

 うぅ……手抜きランチで申し訳ねぇ。次はもっと気張りやす!

 

◇◇◇

 

 私の夏休みを華やかにしてくれてるのは亥埜さんだけじゃなくて。

 一学期に仲良くなった大事なお友だちとも、たくさんの楽しくて幸せな時間を共有することができた。

 申輪さんや卯月さんはめっちゃラインくれたし、戌丸さんや巳継さんとはゲームで一緒に遊ぶこともできたもん。

 ほかにも辰峯さんや今丑さんはいっぱい写真送ってくれたりしたし。馬澄さんや酉本さん、それに虎前さんだって、何回も電話をかけてくれることだってあったからね。

 しかもしかもで、子日ちゃんや羊ちゃんとはビデオ通話でたくさんお話しすることもできちゃったりしてさ。

 みんなが夏休みの間も私なんぞにかまってくれたおかげで、もう本当に最高に幸せだったさ。

 それに亥埜さんがウチにいつも遊び来てくれてるって知ってから、みんな亥埜さんの方にもたくさん連絡しているみたいだったし。

 亥埜さんもみんなとあんな頻繁に電話したりラインするほど仲良いなんて知らなかったから、それも新鮮だったよ。

 お友だちみんな仲良しでイイね!

 仲良いのが一番大切だもん。素晴らしいよ!

 だけど、そんな楽しい時間って、あっという間に過ぎていっちゃうからさ。

 気づいたら夏休みも半分過ぎていて、気づかぬうちにお盆の時期がすぐそこまでやってきていた。

 ちなみに亥埜さんは家族でお母さんだかお父さんだかの田舎に帰るということで、昨日から家族旅行に旅立っている。

 家族旅行に出発する前、最後にうちに遊びにきた日には……。

「旅行なんて行かないで、こっちに残るわよ? でもひとりで家にいるの怖いから、誰か泊めてくれないかな……」

 なんてことも言っていたけれど、私も旅行の予定があることを伝えたらね?

 さっきの言葉は亥埜さんなりの冗談だったのか、『んじゃどうでもいい……』とかよくわかんないことを呟きつつ、結果的には亥埜家の里帰りについて行ったみたい。

 どうしたんだろ……あんまり田舎に帰るの嬉しくないのかな?

 お爺ちゃんがすごい怖いとか、苦手なものいっぱい食べさせられるとか。

 もしかしたら、虫がそこらじゅうにたくさんいるとか。

 たしかにそれはちょっと嫌かもしんないな……亥埜さんファイト!

 お盆という夏の風物詩な行事とともに、それまで過ごしていた夏休みの日々にも少しは変化が訪れて。

 その変化は、亥埜さんとのしばしのお別れも運んできたわけだけど。

 それでも去年よろしく、おウチでひとり寂しくグータラと過ごすなんて。

 そんなつまらない日々がやってくるわけではないのが、今年の夏休みのスゴいところなのである。

 ということで、かねてより予定していた通り。

 私とお母さんふたりで行く、生まれてはじめての親子旅行が、とうとう始まろうとしているのだった。

 

◇◇◇

 

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