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神はケモノに×される  作者: あおうま
第二章 ようやくはじまったナニカ
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第一五九話 神とカンフル剤

 

◇◇◇

 

 なんとか辰峯(たつみね)さんから逃げおおせた私たち三人組は、自分たちの教室には戻らず空き教室に隠れていた。

 どっちみち午後の授業が始まったら、避けようもなく教室で辰峯さんやドッキリ被害者の二人とも顔を合わせることになっちゃうし。

 怒られるのを先送りしているだけに過ぎないことは、百も承知なんだけどね……。

 お昼休みの残り時間的にも私たちのドッキリ遊びはもう終わりかなと、そう勝手に思いこんでた私の予想に反するように。

 申輪(さるわ)さんはポッケから折り畳まれたアミダくじを取り出した。

 えぇ……まだやるの?

 さっき散々みんなに好き勝手したのにまだ満足していないのか、視線を交じらせた申輪さんの目は燦々と輝いていて。

 今が時間に限りがある昼休みということを忘れている可能性すらあるかもしんない。

「つぎ! つぎ決めよ! 神さんほら!」

「あの、でも、もうすぐお昼休み終わっちゃいますし……」

 視線で壁にかけられた時計を見るよう促すと。

 申輪さんもチラッと時計を一瞥してはくれたものの、私が望んだような反応が返ってくることはなく。

「もうちょっと時間残ってるし、まだいけんね! 最後にもう一人いっとこう!」

「そ、そですね……」

 まるで中休みの短い時間でも校庭に飛び出して遊ぶ小学生男子のように、とんでもなくバイタリティが溢れる申輪さんの元気さに押されてしまい、私も思わず頷いてしまった。

 さっきはドッキリの内容もあって、少しはやる気が上を向いたけどさ?

 亥埜(いの)さんにスカートをめくり返されそうになったの、すんごい恥ずかしかったし。

 それに廊下に倒れてる亥埜さんのかわいそうな姿にも心が痛んだしで。

 もう今は私、正直いってかなりやる気がなくなっちゃってんだけどな……。

 渋々といった感じで残っている選択肢の中から一本の線を指差すと。

 もう見慣れた光景になってしまったけど、申輪さんと戌丸(いぬまる)さんがノートに書かれたアミダをカクカクと指で追いながら確かめ始めちゃったよ。

 割り込んで止める勇気も私にはないし、こうなっちゃったらもう、ドッキリが開始されるのを諦めて待ってるしかないと思ったんだけども。

 あれ? でも待ってよ?

 ドッキリの内容はどうやって決めるんだろう。

 さっきまで引いてたお題箱みたいな道具は申輪さんのポッケに入れておけるものでもないよね?

 そんな疑問に頭を悩ませているうちに、三人目となる最後のドッキリ被害者は決まったらしく。

「神さん決まりましたよ! つぎも頑張りましょう!」

 なんて応援をしてくれながら、戌丸さんが指差した紙面には。

 『今丑(いまうし)さん』との名前が示されていたのだった。

 

◇◇◇

 

 うわぁ……今丑さんかぁ。

 今丑さんいつも優しいし、のんびりしてて穏やかな人だけど。

 だからこそこんなイタズラまがいのドッキリに巻き込んじゃうのは気が引けちゃうんだよね……。

 たぶん最後のターゲットが誰であっても、私のやる気が回復することはなかっただろうけど。

 それでも今丑さんを巻き込むことになるなんて、罪悪感からより一層、気が重くなってしまうよぅ。

 アミダを作った申輪さんの人選やら、自分の選択やらを少し恨みがましく思って私がコッソリしょげていると。

「そういえば申輪さん、どんなドッキリにするかはどう決めるんですか?」

 さっき私が抱いた疑問に戌丸さんも思い至ったようで、私の代わりに気になってたことを質問してくれた。

 出来ればそれを理由にドッキリは終わりにしてくれることを少し願ってしまったんだけど。

 そんな私の淡い期待も叶うことなく、申輪さんはうーむと少しのあいだ悩んだあと。

「まぁ、今丑さんならやっぱ……おっぱいでしょ!」

 なんかすごい気軽にとんでもないことを言い始めた。

 確かに今丑さんと言えばおっぱい、それは同意せざるを得ないのだけども。

 今丑さんのおっぱいとドッキリがどう結びつくのかわからないし、私が頭にはてなマークを浮かべていると。

「お、おっぱいって! いきなり変なこと言わないでくださいっ!」

「いたっ! なんでたたくんだよー!」

 意外にも実はシャイガールな戌丸さんが抗議の声を上げながら、申輪さんパシパシ叩きはじめた。

 普段の教室とか寮とかだったらさ?

 そんな二人のイチャイチャを眺めつづけるのも楽しそうではあるんだろうけど。

「あ、あの……今丑さんのおっぱいでドッキリって?」

 ワイワイと言い争いが始まりそうな二人に割り込むように、私は口を挟んだ。

 イチャつく女の子の間に割り込む最低なヤツになんか、本当はなりたくなかったんだけどもね?

 でもちょっとゴメンだけど、そういうのは後にしてもらえる?

 二人で仲良くケンカするのは置いといてもろて、このあと私がしかけることになるドッキリの内容を確認するほうが今は大切だからね?

 あと別にドッキリに前向きになったわけじゃなくて、中途半端にしとくのは良くないから聞いただけだけどね?

 二人にオッパイに釣られたみたいに思われるのもイヤだし。

 別にそういう不純なのじゃなくて、ここまで頑張ってドッキリ仕掛けてきたんだしさ。

 ちゃんとキッチリ終わらせた方が良いかもって思い直しただけだもんね。うん。

 そんな私の品行方正で真面目な意欲が伝わったのか、申輪さんは睨み合ってた戌丸さんから視線を私に移してくれたあと。

「そりゃもちろん! ガッといってギュッだな! 揉む!」

「ええっ!?」

 それしかないっしょってな具合で、とんでもなく素晴らしい提案を口から生み出した。

 いや、素晴らしいっていうか、あの……あれね?

 画期的っていうか、学術的に興味深い感じの提案って意味でね?

「そ、そんなのダメですよ! ただのセクハラじゃないですか!」

 うん。隣のシャイガールは一旦静かにしとこうか?

 ハワハワと可愛らしくほっぺを赤く染めながら、至極真っ当な意見を口にした戌丸さんの非難が通らないことを願っていると。

 今度こそは私の切なる願いも叶ってくれるようで、申輪さんは『んじゃやめよっか!』とかいけずなことを言い出すこともなく。

「んー……でも今丑さんはお願いすればいつも普通に触らせてくれるし、大丈夫でしょ!」

 私の期待している方向に舵を取り始めてくれた。

 てか、え? ホント?

 お願いすれば普通に触らせてくれるの?

 なんでそんな大切なこと、もっと早く教えてくれなかったの?

 ズルじゃん! 私ずっと損してたってことだし、そんなの申輪さんズル過ぎるじゃん!

 いや落ち着こう。落ち着け私。

 これまで損してた分はこれから取り返していけば良いんだもん。

 そんで今日、これからね?

 その第一歩を踏み出していくことができるわけなんだから、他人を妬んだり過去を悔やむ必要なんてないのよ。

 そうと決まれば!

「よし……やりましょう。優勝の美ってやつを飾りましょう!」

「おぉ! 神さんが今日イチやる気に! そうだ優勝だー!」

 活気ムンムンで立ち上がり、一緒に立ち上がってくれた最高の軍師たる申輪さんと頷きあった。

 そんな私たちのテンションに乗り遅れちゃってる戌丸さんも。

「優勝じゃなくて有終なんですけど……はぁ」

 そんな言葉と溜め息をこぼしながらも渋々と立ち上がってくれたので。

 私たちは優勝の美を手に入れるため、隠れ潜んでいた空き教室から廊下に身を踊らせたのだった。

 

◇◇◇

 

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