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神はケモノに×される  作者: あおうま
第一章 ながすぎるアバン
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第十一話 神は殺意を抱く


◆◆◆

 

 私には今、殺したいほど憎んでいる奴がいる。

 そう。昨夜の自分である。

 朝起きて、いの一番に目に入ったのは、聞き手と逆の手で書いたせいでクソみたいな汚さで書かれた『自覚せよ』とかいう謎の文字列である。

 ヤバいクスリでもキメて飛んでたんか?

 何で油性の極太マッキー使ったの?

 後悔に頭を抱えていても時間は戻らないばかりか、登校時間までの短い猶予は減っていくばかりである。

 何とかせねばとひたすらに手を洗おうとも、手持ちの洗剤じゃ全くもって消え去ることはなかった。もう皮ごと剥ぎたい。

 しょうがないから寮母さんの部屋まで行って包帯をもらってきた。

 『怪我したの? 私が巻いてあげようか?』なんてお優しいお言葉も、マジで心が痛むが今だけは余計なお世話である。

 ここに巻いてくださいなんて右手差し出せるわけないでしょ! こちとらバカみたいな大怪我してんだよ!

 目に入るたんびに『イタタタタタタ』と死にたくなるほどの威力。

 若さゆえの過ちとは、認めたくないものですね……なんて言うてる場合か!

 なにやってんだ昨夜の自分! このおバカが!


◇◇◇


 今日も一日ボッチが始まった。さらに今日は手に包帯とかいう厨二病オプションまでメガ盛りである。

 何やってんだ私は。

 今まで以上にクラスメイトに避けられそうな要素を追加してどうすんだ! 欲張りさんか!

 最近少しずつ培われつつある、さりげなくクラスメイトを観察するという、どう控えめに言ってもクソキモいスキルを駆使して教室内の様子を探ってみた。

 特に気になるのは、最近ともだちになった例の二人である。

 いや、正確には、ともだちになりかけている二人。でももう少し真実味のある言い方をするなら、ともだちになれそうなきっかけを得たかもしれない二人。

 ……泣く泣く正直言うならば、まだ赤の他人の二人である。

 何故か知らんが運良く話すことが出来た子とは、その後のご縁がバッタリ途絶えるという不可思議な現象が発生しているようですが、なんででしょうか。私気になります。

 避けられてる? 嫌われた?

 だとしたらもうアウトだな。マジでアウト。これ以上打席に立つ前に学校生活ゲームセット。泣きながらお家に帰るしかない。

 席がお隣だなんて偶然もないため、さりげなく話しかけるだなんてこともできず、遠くに座る子日(ねのひ)ちゃんと今丑(いまうし)さんに視線だけを向ける。

 子日ちゃんは何やら自席で真面目に勉強しているようだったし、今丑さんは相変わらず机に突っ伏して眠っているようだった。

 どっちも話しかけにくい雰囲気だし、そもそもわざわざ近寄って行って話しかける勇気だ度胸だなんて持ち合わせていないんだから、あまりにも無駄な妄想だった。

 心の中で涙を流しつつ、今日もボッチを予感させる一日の始まりを迎えたのだった。


◇◇◇


 残念ながらも予感が外れることもなく、マジで今日これまでクラスメイトとの会話はゼロ。

 しかもしかもで、クソ恥ずかしいことに包帯を巻いている右手への視線だけはバリバリに感じた。

 皆そんなに気になるのなら遠慮せずに話しかけてくれていいのに。いややっぱダメじゃん。包帯巻いてる理由なんて人様に話せたもんじゃなかった。

 そんな葛藤を抱えつつ、今日もしょうもなく何かしらの出会いに期待して、お弁当片手に性懲りも無く例のベンチに向かっている道すがら。

 今日も今日とて飽きずにほうじ茶でも買っていこうと、ふらり立ち寄った校内片隅の自販機前にて、私はクラスメイトのヤンキーこと虎前(とらまえ)さんとエンカウントしたのだった。


◆◆◆

 

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