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魔術師ソフィアと魔術師の国  作者: 華月 理風
砂漠の国サハラ
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一時帰国



 サハラを去ってから、いったん、3週間ほど、ランドールに戻り、首都ランズに滞在する。領地に戻らなかったのは、フィロスが8家との打ち合わせなどで多忙だったからだ。その間、ランズのスナイドレー公爵家の館ではなく、ホテルに滞在している。


 ランズにいる間に、エリザベスやジェニファーにも会って、お土産を渡し、おしゃべりにも花を咲かせた。


 サハラで魔術師が嫌われている話は、オブラートに包んで伝えたけれど、2人とも、私が調子抜けするほど、全く気にしていなかった。

魔力を持たない民と意見が合わないのは日常茶飯事だから、だそうだ。


 ジェニファーは、特にあっけらかんとしている。

「魔術学院から入学通知が来た時、家族みんな、泣いていたわ。貴族階級は魔力持ちが生まれるとうれしいんでしょうけれど、平民階級はほとんどが魔力を持つことを嫌がるので。

まあ、理由は、魔術師が怖いからじゃなくって、子供が自分たちの手元から居なくなるからなんだけれど。

ランドールでさえ良い顔しないのだから、他の国は、もっと気に入らないでしょう。きっと。」

「ジェニも、魔力があるってわかった時、嫌だったの?」

「ううん。それがねえ。自分は嫌じゃなかったの。むしろ、ワクワクしたけれど、家族にはわかってもらえなかったかしら。長期休みのたびに帰宅したけれど、毎年、少しずつ、家族と意見が合わなくなって、そこは寂しかったかなあ。

…もちろん、家族は私を愛してくれているし、私も彼らが好きよ?でも、考え方は確実に違っていっているのを感じることも事実。

…国が、家族を引き裂くといわれているけれど、魔術師になった者が、魔力を持たない家族と意見が合わなくなって離れて行くというのが真実ではないか、と、今、私は思っているわ。」


 2人と話をして、やっぱり、自分は何も知らなかったのだな、と思う。

本をたくさん読んでも、そういう気持ちの問題はわかっていなかったのだと。


「ねえ、ジェニ。平民は自分の子供が魔力持ちだと、嫌なのよね?仮の話だけれど、貴族からしか、生まれなければいいのに、とは思わないのかしら?」

「さあ?そこはわからない。…自分の家族から魔力持ちが生まれるのは嫌がるんだけれど、親類とか近所の人のところに生まれると、周りに自慢して回るっていうのは、あるのよね。平民出身の魔術師が身近にいれば、自分たちの意見を国に反映しやすくなるし。私も家族からずいぶん頼まれごとをされているわよ?だから、貴族だけとなったら、それはそれで、貴族と平民の溝が深まるような気がする。…でも、なんで?魔力は遺伝しないんだし?」


どきっとする。


「ランドールは魔術師の国って言われているから、平民でも、魔力を持ったら誇りに思うのかな。って考えていたのに、そうじゃないって聞いて。だったら、生まれない方が平民はうれしいのかな。って、単に疑問に思っただけ。」


「ソフィは相変わらず、まじめですわよねえ。」

エリザベスが、くすっと笑う。

「あまり、気にされない方が、よろしくてよ?…同じ魔術師同士でさえ、意見の対立は、あるのですから。」

「そうね、リズ。ありがとう。宰相夫人になってから調整することが多くて大変だと聞いているわ。…リズこそ、無理しないでね?」

「ふふふ。ありがとうございます。…でも、来年からは、ソフィも調整することが多くて、大変になりそうですけれど?」

「あら?なぜ?」

「スナイドレー公爵が、来年から、魔術庁長官に任命されるのが、内定してますもの。」

「え!?うそ。聞いてなくてよ?」

「うふふ。内定ですもの。…ぎりぎりまで、スナイドレー公爵には伏せることになってますわ。怒り狂うのが、わかってますし。」

「ええ…。本人が知らないのに、わたくしに話をしても、良いの?」

「うふふ。なだめ役として、心の準備が要りますでしょ?」

「…。そうね。確かに、なだめるのが大変そう。」

「あら。反対は、されませんのね?」

「…たぶん、彼しか、できないと、わたくしも思ってますから。」

「あら、のろけ、ですの?」

「ふふ。わたくしの旦那様はすごい人ですから。」

「あらあ!」


 魔術庁の裏の話をこの2人にはできない。

フィロスから、裏の話は国王も宰相も知らない。知っているのは8家の当主だけだと聞いている。



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