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火の薬1


「フィロスっ!?」


 私は悲鳴をあげた。

魔術による攻撃はすべて相手に返す魔術具をつけている彼に、魔術師からの攻撃は効かない。そして、魔力を持たない人間が相手なら、フィロスは何百人居ようと叩き潰せる力を持っている。

だから、フォルティス国が何かおかしいと国境付近を調査に行った彼をあまり心配していなかった。

魔力を持たない相手だから、と安心していたのに、今、目の前で、王国騎士団の騎士に担ぎ込まれた彼は、洋服がボロボロに裂け、全身、血まみれで、瀕死の重傷だ。意識も無い。


「彼を、こちらへ!」


玄関ホールから最も近い客室のベッドへ、彼を寝かせてもらう。


最高の完全なる癒しをペルフェクティオ・サーナーティウス!!」


真っ白な光が、フィロスの全身を包む。

傷がふさがれば、注ぐ魔力が押し返される。それがなかなか来なくて、泣きそうだ。

魔力がもう少しで尽きそうというところで、押し返される感触。

ほっとして、注いでいた魔力を少しずつ収めていけば、光もやわらぎ、フィロスの全身が見えるようになる。


「うっ…。」


フィロスの口元が、動く。


「フィロス!」


そばにいたグレイスに調薬室の棚から救急用の箱を持ってくるように命じる。

何があってもすぐ対応できるよう、救急用の薬を一式収めた箱が、我が家には常備されている。

グレイスからその箱を受け取り、フィロスに口移しで治癒用のポーション、造血剤、などを、飲ませていく。


「…ソフィア。」

「フィロス!ああ、意識が戻った!良かった。…どこか、痛いところはない?」


 フィロスが起き上がろうとする。背中を支えた。


「…大丈夫そうだ。また、助けてくれたのだな?ありがとう。」

「そんなことより、いったいなぜこんな怪我を!守りの魔術具が発動しなかったの?」

「相手は、魔術師ではない。」

「は?」

「フォルティス人だ。」

「はああ?」


混乱する。

魔術師が相手ではないのなら、あの怪我は?

どう考えても、、インフェルノ(業火)か、エールプティス(爆発)といった、爆発系の火属性の魔術攻撃を受けた、傷だ。

魔力を持たない兵士からの傷なら、剣や槍、弓などの傷で、火属性の魔術攻撃と同様の怪我をするとは考えにくい。


「フォルティスの、新しい、兵器だ。」

「新しい、兵器?」

「黒い塊…。両方の手のひらにのるくらいか?それに火がついた、と思ったら、爆発した。…それを、食らった。威力は、マジェントレーが最後に使った、|フレイム・フランギトゥル《爆散》に、近い。」


 真っ青になった。


「そんな威力の攻撃を受けて、よく、ご無事で…。」

「運が良かった。嫌な予感がして、とっさに、転移しようとして、その転移の途中だったから。直撃は免れた、というところか。」


 その時、あわただしく、アークレー王国騎士団長が入ってくる。


「断りもなく入ってきて、すまない。ああ。スナイドレー、無事か。」

「アークレー。なんとか。妻が助けてくれた。」

「それは、良かった。…まだ、本調子ではないと思うが、頼みがある。あの現場から、フォルティスの教会兵が持っていた、黒い塊を1個、押収した。調査を頼めるか?」

「手に入ったのか!?」

「ああ。こっそり逃げていく集団を捕まえたら持っていた。奴らは、火の薬、と言っていた。」

「それは、助かる。すぐに、分析しよう。」

「よくわからんが、火には、気をつけろ。こいつが爆発するとき、必ず、火を使っていた。」

「確かに、そうだな。…ハッカレー学院長に連絡して、学院の研究室を使わせてもらう。あそこなら、爆発しても、安心だからな。」

「頼む。フォルティスがこいつを使って我が国に攻め込んできたら、我が国の兵士達は為すすべもない。魔術師師団とて、厳しいだろう。」

「わかっている。急ぎ、分析する。…ソフィア、悪いが、手伝ってくれるか?」



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