ユニコーンの住まう地2
ベッドでぐっすり眠るソフィアの藍色の髪をそっと撫でる。
帰宅したときは、少し顔色が悪かったけれど、入浴後、食事を済ませれば、元の顔色に戻り、ほっとした。
けれど、慣れない戦闘…、というより、魔獣退治はおそらく魔術学院6年生の戦闘魔術の試験で倒したくらいしか、経験がないはずのソフィアには、いきなり、10頭以上の相手はきつかっただろう。疲れ切って、ぐっすり眠っているのも、当たり前だ。
それにしても。と、フィロスは思い返す。
今日の魔獣退治はとても楽だった。と。
魔獣に周囲を囲まれるのは珍しいことではない。魔獣は群れを作って暮らす生き物だからだ。
囲まれても、彼には問題ないけれど、どうしても背後や横からいきなり来られれば、怪我はする。
全部倒すまで時間もかかる。周囲の環境を変えてしまうほどの大きな魔力を放つわけには、いかないからだ。
だけれど、今日は背後をがっちりとソフィアが守ってくれた。
初めは、ソフィアを守って戦うつもりだったけれど、途中から、逆に自分の背後の守りを完全にソフィアに任せ、前方の攻撃に集中するように意識を変えられたのは、自分でも驚きだ。おかげで倒すまでの時間も最短記録を塗り替えていると思う。
それに、怪我も大したことなかった。というか、すぐに、ソフィアが神経質に治す必要が無いかすり傷でさえ治してくれたので、疲労も全くと言ってよいほど感じていない。
後方や奇襲を気にせず、戦えることの安心感。
もちろん、彼とてチームを組み、他の魔術師と一緒に戦ったことはある。
しかし、彼は自分以外を誰も信用していなかったから、護られることなど、考えたこともない。
それが、今日は。
ソフィアを信用して疑いもせず。お互いに動いてほしいと思うその望みのままに動き。
ソフィアを絶対に傷つけない。と決めている彼はソフィアに向かってくる魔獣を優先的に倒した。
その優先度をソフィアは理解していたのだろうか、彼が戦っている動きを決して邪魔せず、むしろ、彼が自分で考えている以上に彼の行動を予測してぴったりと背中にはりついて動いていたのには、驚きを通り越して、一種、感動した。
「君を戦いには巻き込まず、君は、ただ護られていてほしいのだけれどね…。」
ソフィアの藍色の髪を撫でる手を止め、彼女の額に唇を落とす。
「それでも、君は私のそばから離れない、と言うのだろうね…。」
ユニコーンの住む場所は用意した。
あとは、ユニコーンが来てから要望を聞いてから必要なものを用意すれば良い。
「さて。ユニコーンは無事にこちらに来られるのかな?誰にも見とがめられずに。」
ユニコーンの目撃情報が出たら厄介だな、と彼は思う。
その場合、口封じに動かなければならないだろう。
ユニコーンが自領に住んだとしても、そのことを誰にも話すつもりはない。
ユニコーンを住まわせるのは、ソフィアのためだ。
彼女のためにだけ、ユニコーンは、居ればよい。




