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魔術師ソフィアと魔術師の国  作者: 華月 理風
フォルティス国
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ユニコーン2



 フィロスは、ソフィアをホテルに残し、動物園の園長のところに出向く。

変身魔術で金髪碧眼のでっぷりと太った中年の貴族に化けて。

諜報活動をしているときに使っている偽名の、ランドール国の侯爵の名刺を取り次ぎに渡せば、園長が吹っ飛んできた。

そこで、彼はにこやかに、ユニコーンを1頭ゆずってほしいと、直談判する。

それを聞いた園長は大笑いして、ユニコーンが欲しいなら、街中のユニコーンを扱うお店に行けば、野生のユニコーンを狩ってきてくれますよ。と、親切そうに教えてくれる。

そんなことは知っているが、それをおくびにも出さず、フィロスは園長に困ったように切り出す。


「私は新婚旅行で来ているんですが、若い妻がね、この動物園に来て、ここのユニコーンに一目ぼれして、あのユニコーンでないと嫌だ、と我儘を言ってるんですよ。」

「なるほど、それは、大変そうですな。」

「それで。私としては、やっと苦労して手に入れた妻でしてね。機嫌を損ねたくない。…どうでしょう?100万フォル出しますが?」

「ひゃ、ひゃくまん、フォル?」

 100万フォルと言ったら、ユニコーンが優に10頭は買えてしまう。

園長の年収が10万フォルだ。年収の10年分だ。ぐらりと、園長の心が揺れる。


「ついでに、数が減ったら園長殿が困るというのであれば、1頭、ユニコーンを買ってきましょう。それとすり替えるということで、いかがです?もちろん、買ってくるユニコーンの代金は100万フォルには、含まれません。」


園長の頭が、生きてきた中で一番早く、回転する。

ユニコーンをランドールに輸出するには、面倒な手続きが必要だ。

でも、それは、この、妻にやたらに甘い貴族が手続きすればいいだけのことだし、ユニコーンを店から買うと言ってるから、その店で買ったという証拠もあるだろう。

動物園のユニコーンなどすり替えたって、わかりやしない。

ユニコーンの相場も知らない、阿呆な貴族だ。おそらく、若い夫人も金で買ったのだろう。そんな貴族から金をむしりとれるとは運が良い。

そっくり、100万フォル、私の手に入る。年収10年分のお金が!


「そ、そうですな。でも、それが、他の飼育員などにバレたら、困るんですよね…。」

「夜中にすり替えれば、バレないのでは?」


 園長は陥落した。

夜中に、ユニコーンを1頭連れてきて、100万フォルを渡してくれたら、貴族の妻が欲しいといっているユニコーンを連れ出すことを承知した。


「でも、奥方様はそのユニコーンがどれだか、わかるんでしょうかね?」

「何、わからなくたって、いいのですよ。この動物園のユニコーンじゃなければ嫌だと、言い張っているのだから、その時、この子だと言ったら、その子を連れ出せば良いだけのことです。」

「なるほど。それもそうですな。…しかし、大変そうですなあ。その奥方様の我儘に付き合わされるのは!」


フィロスは肩をすくめて、苦笑いを見せる。

「では、今日の夜中に参りましょう、よろしいでしょうか?」

「ええ、ええ、お待ちしております!」


フィロスは園長と別れて、デフェンドの街に急ぐ。この街は諜報で何度も訪れているから、どこに何があるか承知している。生きたユニコーンを扱っている店も。


ソフィアのためなら、この動物園を丸ごと買い占めたって、かまわない。

ソフィアのためなら、なんだってしてやろう。

私の大事なソフィアのためなら。


フィロスは、ユニコーンを扱っている店で1頭、ユニコーンを買い求める。

変身魔術でフォルティス人そっくりに化け、偽造したフォルティス国の薬剤師の証明書を見せれば、あっさりと売ってくれる。

手に入れたユニコーンは夜ご飯を食べてから取りに来る。と言えば、引き渡し用の場所にある檻へユニコーンを入れておくから、勝手に連れ出してくれ、と言われ、その檻の鍵を渡された。鍵は檻の中に置いておけば良いらしい。

それは、なんと好都合な。



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