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最終話:高橋美咲は家族です


 L(ラスト)D(男子)K(高校生)の10月20日は、特別な日になった。


 俺と、美咲さんにとって。


 平日の午後、ひと気のない川沿いの道を二人黙って歩く。


 親父が書き置きひとつ残して失踪して、7年半が過ぎた。

 捜索願を出して7年経過したのちに、俺たちは家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをした。

 ちょっと前に認められて。

 美咲さんは有休を、俺は仮病で学校を休んで(高橋が二人して「家の都合」で休むと疑われるからね)、市役所に届出してきた。


 つまり。



 公的には、今日、親父は死んだ。



 親父名義の貯金やマンションや保険や、手続きはまだいろいろあるらしい。


 でも、今日はこれだけにして、二人して家に帰る予定だった。


 7年以上も連絡なくて、俺も美咲さんも、覚悟してたことだけど。

 それでも、なんとも言えない思いはある。

 俺なんかより、きっと美咲さんの方が。


 学校ではキリッとしてる美咲さんは、なんだかぼんやりしてる。

 いつもと違って頼りなくて、どこかに行ってしまいそうで。


 手を繋ぎたくても繋げないのがもどかしい。

 俺が言われるだけならいいけど、美咲さんは先生だから。

 伸ばした手を引っ込める。


 肌寒くなってきた秋の風が吹き抜けると、川原の草がさわっと揺れた。


「これで、優斗くんと家族じゃなくなっちゃったね」


 美咲さんの声は少し震えていた。


 親父の再婚相手として美咲さんが紹介されてから8年。

 親子として一緒に暮らしたのはそれよりちょっと短い。


 俺と美咲さんは血が繋がってなくて、養子縁組もしてないから「法的な親子関係」じゃない。

 それに、「じゃあ養子縁組しましょう!」とかそういう話じゃないのは俺だってわかる。


 だから俺は。


「美咲さん」


 立ち止まって、振り返る美咲さんの目を見つめた。


「家族じゃなくなった。ショックですけど、でも俺、うれしいとも思ってるんです」


「なんで……ううん、ごめんね。優斗くんには迷惑だったよね、私に子供扱いされて」


「違います! そういうことじゃないんです!」


 泣き出しそうになった美咲さんを慌てて止める。

 思わず手を取っちゃって、こんなんだったら最初から気にしないで手を繋いでおけばよかったと後悔する。

 でもいまはそれどころじゃない。


「美咲さん」


「なに?」


 サコッシュから、用意していた小箱を出す。

 (ひざまづ)こうかと思ったけど、相談した陽菜からは「絶対やめなさい」ってアドバイスをもらった。


 だから俺は、ただ小箱を開いて、美咲さんに見せた。


「…………ゆび、わ?」


「美咲さん。もう一度、俺と()()になってください」


 高い指輪じゃない。

 そもそも親父が俺の口座に残したお金で買ったもので、そこはイマイチすっきりしない。

 でも、まだL(ラスト)D(男子)K(高校生)の俺にはこれが精一杯で。


「俺、美咲さんのことが好きです。愛してます」


 美咲さんのくちびるが震える。


 手は、伸ばしてくれない。


「卒業したら働いて、生徒や親に見られたら先生が責められるかもだから二人で引っ越して、いままでとは違う形の『家族』として一緒に暮らして、それで」


 受け取ってほしい。


 想いが伝わってほしい。


 もっとちゃんと言おうと考えてたのにそんなのぜんぶぶっ飛んで早口になる。


 必死でまくしたてると、美咲さんはふっと笑った。


「もう。…………大学は行くこと。せっかく苦手な数学を勉強してきたんだから」


「はい。美咲さん、その、答えは」


「優斗くんが大学に行って、好きな人ができたら教えてね。私、ちゃんと別れるよ」


「そんなこと! ありえません! 俺が好きなのは美咲さんだけで!」


「優斗くんが大学を卒業する時には、私もう34歳だよ?」


「美咲さんが何歳になったって、俺が何歳になったって、俺はずっと美咲さんが好きです!」


 指で目の端を拭って美咲さんが微笑む。

 それがなんだかキレイで見惚れる。いや、美咲さんはいつもキレイでかわいいけど。


 美咲さんは、ようやく手を伸ばして。


「いちおう、受け取っておきます。優斗くんが心変わりするその日まで」


 指輪を、受け取ってくれた。


「心変わりなんてしません。そうだ!」


「今度はなに?」


「先生とか義母さんとか美咲さんじゃなくて————『美咲』って呼んでもいいですか?」


「…………うん」


 ふいっと横を向いた美咲さんの——美咲の頬が赤い。

 かわいい。年上なんて気にならない。ひたすらかわいい。


 この気持ちを伝えたくて、わかってほしくて、俺は美咲を抱きしめた。


「俺は、美咲が好きだ」


「……私も、優斗くんが好きです。先生でお義母さんなはずなのに、ダメなオトナだね、でも」


「美咲が言うように大学に行って就職が決まって卒業したら——俺と、結婚してください」


「…………その時に、優斗くんの気持ちが変わってなかったら」


 俺の腕の中で、美咲は下を向いていた。

 ので、頬に手を添えて上を向いてもらう。


 誰が見てるかもわからない地元で。



 俺は、美咲とキスをした。



 L(ラスト)D(男子)K(高校生)の10月20日は、俺と美咲の、特別な日だ。


 美咲が家族じゃなくなって、未来で俺の家族になってくれることを決めてくれた、特別な日になった。



 高橋美咲は、3-2(俺のクラス)の担任で、数学教師で、義母で、恋人で、()()家族で————






————俺の、()()()です。




この物語はいったんここで完結です。


本当はね、ドロッドロの甘いヤツにするつもりが、

書き出したらなぜかこうなりました。


「読みたいのはココじゃない!」「告白とその前後を!」

「このあとどうなるの!?」「クソ親父はなんだったのか」など、

知りたい方はぜひ評価をお願いします!

設定はあるので、気が向いたら続きを書くかもしれませんw


……でも現代ラブコメ書くのエネルギー要るからどうかな…………


とりあえず、面白かったという方はぜひ

下のリンクからほかの小説を読んでやってくださいませー!


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