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ランチタイム

 誰が私の保護者役になるのか。

 この話は中身が24歳なのに保護者なんて冗談じゃないと思った私が回答を先延ばしにしようと目論んだ結果、議論は延々と平行線をたどり、最終的には決闘騒ぎにまで至ってしまった。

 私の保護者役は六魔将で1週間ごとに交代していく事を提案する事でなんとか場を収集する事ができたけど結局、私に保護者役が付く流れは避けられなかったよ。

 

 この保護者を決める会議が終わった時にはお昼になっていたので私は最初の1週間、私のお世話役として側にいるらしいユリウスさんに連れられてダイニングルームまでやってきていた。


「今、シェフに頼んで急ぎエリカ様の昼食を作ってもらっているので少々お待ち下さい」

「わかりました」


 私はお子様用の椅子に座りながら足をブラブラとさせ、始めて食べる異世界料理に心を躍らせていた。

 どんな料理が出てくるのかな〜

 魔王城で出される料理だし、さぞ豪華に違いない……!


 ユリウスさんに前掛けをして貰いながら10分ほど待っていると扉がノックされ、魔王城の使用人さんがカートを押しながら入ってくる。


「お待たせしました、エリカ様」


 丁寧な手つきで並べられていく料理達はお肉のソテーにトマトスープかな? 

 どれもお上品なお皿に丁寧に盛り付けがされていてとても美味しそうだよ!


「ゾンビ肉のソテーに人間の血のスープです。デザートは後ほどお持ちしますね」


 ソンビ肉のソテー……

 人間の血のスープ……


 そりゃ、魔王城だもんね、まともな物が出てくるはずがないよね。

 

「でも、これはいくらなんでもひどすぎる!」

「どうかしましたか? 嫌いな物でも入っていましたか?」


 いや、嫌いな物とかの次元じゃないよこれ!

 腐った肉のソテーに人間の血がベースのスープなんて最早食べ物と呼んでいいかも怪しいでしょ!


「これ、たべれるの?」

「シェフがエリカ様の為に腕によりをかけて作った自信作だそうですよ」

「じしんさく……」


 そんな事を言われると、全く手を付けずに返品するのは申し訳なくなってしまうじゃない……

 かと言ってこれを口に入れるには相当勇気がいるよ……

 

 目の前の異物達を口の中に入れるかどうかの葛藤をしていると、要らぬ気を回してくれたユリウスさんが腐肉の一切れをフォークで刺して私の口元へ運んでくる。


「はい、あーんですよ、エリカ様」


 できれば、自分の手で食べたかったけど、多分、こうして貰わないとずっと腐肉を眺め続けてただろうし、こうなれば女は度胸よ!

 私は、意を決して腐肉を口の中に入れて貰い、口を何度か上下に動かす。


 お肉自体は結構柔らかいけど、A5ランクとかの高級なお肉様に比べると、溶けるようなというよりはボロボロと、と表現するのが適切かな。

 変な臭みもあるし、正直言ってあんまりな味で胃が受け付けないのか、目がうるうるしてくるし吐き戻さないようにするのが精一杯だよ……


「大丈夫ですか……? やはり嫌いな物でも……?」

「うぅ……」


 折角作って貰った料理だけどこれは辛い。

 まさかドーバー海峡の向こう側の島国よりメシマズな所があるなんて思わなかったよ……

 

 問いかけに答える余裕も無くゾンビ肉に悶絶する私にユリウスさんは焦った表情を浮かべると慌ててお水を持って来てくれた。

 私はそのお水でゾンビ肉を無理矢理胃の中に流し込むとようやく一息つく事ができた。


「申し訳ありません、ゾンビ肉が苦手な事を先にしっかりと確認すべきでしたね」

「わたしのほうこそ、ちゃんと言えばよかったよ」

「エリカ様はシェフが腕によりをかけて作ったと私が言ったから言い出せ無かったのではありませんか?」

「それは……」


 こんな見た目でも一応魔王っていう立場みたいだし、料理を下げて欲しいと言ったらシェフの人が咎められるのでは? と危惧したのもあったけど誰かが頑張って作ってくれたものを味もみずに返すのは忍びなかった。


 ただ、ゾンビ肉で酷い目に遭ったので人間の血のスープに口を付けるのはもう無理だと思うけど……


「エリカ様は優しいのですね」

「そ、そんなこと……なぃ」


 正面に座るユリウスさんにとても破壊力のある穏やかな笑顔に私がたじろいでいると扉が開き、コック帽を被ったミノタウロスが入ってきた。

 ミノタウロスがシェフなのかな……?

 この巨体でどうやって料理してるんだろう?


「エリカ様、デザート、持ってきた」


 ドシンッドシンッと大きな足音を立てながら近づいてきたミノタウロスのコックさんは、私のテーブルの上の一切れしか減ってないソテーとたっぷりと残っているスープを覗きこんで固まってしまった。


「エリカ様、俺の、料理、気に食わなかったか?」


 ミノタウロスのコックさんは明らかにショックを受けたような顔をしている。

 その表情を見て折角丹精込めて作った料理が一口しか食べられなかった事に申し訳なさが込み上げてきて、私はある決意を固めた。


「ううん、そんなことない!!」


 私は意を決して、ソンビ肉と人間の血のスープを口の中に勢いよく放りこんでいく。

 そして、全ての器を空にするとユリウスさんが急いで取りに行ってくれた二杯目のお水で全てを流し込む。


「ごちちょうさまでした!」

「エリカ様、俺……」

「みのたうろすさん、おりょうり作ってくれてありがとう」

「礼、言うの、俺の方、食べてくれて、ありがとう、次はお口に合う物作る」


 その後、六魔将序列五位だったミノタウロスさんのマックさんとユリウスさんと私が食べれそうな料理が魔界にあるのか色々話し合いをしました。

 その結果、私が美味しく頂けそうな料理を作るには人間の世界から材料を調達しなければいけない事が判明しました!


 あと、デザートの蜘蛛チップスは私が食べると言ったけどユリウスさんが絶対にダメだと言って食べてくれました。

 ありがとうユリウスさん。

 


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