おはよう、魔界
眠っているのか起きているのか分からない曖昧な意識が急に引っ張りあげられるような感覚がして私は目を覚ました。
未だハッキリとしない意識の中、棺の中から体を起こして辺りを見回すと私の目の前で明らかに人間じゃない下半身が蜘蛛だったり、背中から蝙蝠の羽や頭から角を生やした方々が跪いている。
え?どゆこと……?
「お目覚めになりましたか? 魔王様」
いや、私は魔王様とかでは無く、日本に住む普通の一般市民の京山恵梨香24歳、絶賛彼氏募集中のはずなんだけど……
昨日、会社の飲み会で散々飲んで帰ってきたから変な夢でもみてるのかな。
「あの魔王様……?」
なんか目の前で蝙蝠の羽を生やした美形のお兄さんが話しかけてくるけどこれは夢なんだ。
いや、でも夢なら折角この世のモノとは思えないのほどの美形さんが居るのだからお話してみたい。
「あなたはだれ?」
「私は、エリカ様の臣下で魔王軍六魔将序列一位、ユリウスです」
六魔将とかいうワードが出てきたがそれ以上に気になる事があった。
私、声すごい高くない……?
それに視線もすごい低いし、手も凄く小さい……
明らかに人間じゃないユリウスさんの事を凄いデカいなぁとか思ってたけど。
これ、私が縮んでるんじゃない……?
「あの……ゆりうすさん、私ってなんさいにみえます?」
うん、呂律もなんか怪しいわ。
いや、でもこれは夢だし……焦るにはまだ早い……
「20歳くらいですね」
「20さい?」
「はい」
20歳に見えるなら良かった……
実際の年齢は24歳だし若く見えるのはいい事だよ。
「良かったら鏡で確認してみます? エリカ様」
下半身が蜘蛛の女性が差し出してくれた手鏡を覗き込むとそこには銀色の髪を肩のあたりまで伸ばした6歳程度の幼女が映っていた。
「これのどこが20さいなの!!?」
思わず手鏡を放り投げ、このぷにぷにボディを20歳とか言ったユリウスさんを睨む。
困惑するユリウスさんに更に言い募ろうとしたところで放り投げた手鏡が上から降ってきて私の脳天に直撃する。
「ふぎゃっ」
「大丈夫ですか!? エリカ様!!」
ユリウスさんが慌てて私に駆け寄ると頭を撫でてくる。
「いたい……」
脳天から伝わってくる鈍痛に先程から目を背け続けてきた現実とやらに向き合う時がきてしまったようだ。
夢じゃないね、コレ。